海の幸
身体に結界を纏わせ、ワンピースだけを着てエメルに掴まって海の中を進む。
呼吸補助の魔法があるから楽々だ。
(エメル!イカがいる!)
(こっちにはエビもいるわ。イカは任せたわ!)
エメルから離れて銛で突く。
これは普通サイズのイカだけど、クラーケン種はかなり巨大らしい。
絶対食べたいな。
(二匹いたわ)
(ありがとう、エメル)
エメルは私と泳げるのがすごく楽しいって言ってた。
私も楽しい。色とりどりの海藻や魚達がすごく綺麗だ。
綺麗でも、警戒は怠らない。魚も魔物だからだ。
見たことあるような魚から、この世界特有の魚もいる。
ちゃんと鑑定して、食用可の物だけ捕獲する。
他のみんなはそれぞれ自由に過ごしている。
モコはテッド達に付いていったみたいだ。それなりに気が合うみたいで、結構仲良しだ。
海はテッドも行きたがっていたけど、結界を纏うのは素肌の上しか出来ないし、その上からズボン等は履けない。つるつるの結界の上ではスルリと脱げてしまうからだ。
ワンピースを貸すと言ったけど、断固拒否された。そうして裸も嫌なので、海は諦めた。
何とかならないかと、私も散々工夫したけど、服の上に結界を張ろうとすると、通常の半円形の結界になってしまう。
まあ、沢山の海の幸をお土産にしてやろう。
シーフードピザとかもいいな。蟹も是非探さなければ。
いた!
鑑定 タバラガニ 可食部が多く美味
タバラって…まあ、いいけど。
エメルも言ってたけど、本当に硬い。まあ、魔法で無酸素状態にしちゃうから余裕だけど。
前にエメルが捕まえてきた青いカニも美味しかったな。
クリという名のウニも見つけて、アワビのようなものも見つけた。
アワビって食べた事なかったけど、テレビで見てたら美味しそうだったし、鑑定でも美味しいって出てるから、採ろう。でも、どうやって料理したらいいか全然分からないや。
壺タコというタコも何匹か仕留めた。岩場に隠れていたけど、魔力感知で私から逃れる事は出来ないのさ。
タコパしたいな。その前にたこ焼きプレートを作らないと。
ホットプレートの魔道具は作ってあるから、上だけ交換すればいい。
そうだ。ジンギスカン用のプレートも作らないと。
金色もふもふを從魔に出来なかったのは残念だけど、あまり從魔を増やしても、食事を作るのが大変になる。今だってムーンの食欲は完全に満たせていないのに。
生肉を食べているみたいだけど、ムーンは優しいから文句も言わない。
ムーンは大きくなったから、たくさん食べる。せめて少しでも、美味しいご飯を食べさせてあげたい。
(ユーリ!結構大きな魚を仕留めたわよ!食べられる物なら、今夜はご馳走ね!)
エメルは鑑定が使えないからな。自分の知ってる範囲でしか捕まえられない。
自分の収納庫からエメルの収納庫を覗いてみたら、かなり大きな魚がいた。
って、鰹じゃん!鰹いるじゃん!まぁ…鰹節は要らないから、全部美味しく頂ける。
何がいいかな…やっぱり刺身かな。たたきもいいな。
「えへへ…」
(ユーリの好きな魚だったみたいね?群れでいる魚だから、また見付けたら絶対仕留めるわね)
(ありがとう)
たまに攻撃されても結界の上からだから、痛くも痒くもない。
上にワンピースしか着られないのが難点だけど、よっぽど魔法抵抗が高い魔物が出ない限りは最強だ。
満足して亜空間に戻ると、テッド達も帰ってきた。
「見て、テッド。鰹だよ?」
「おおー!刺身がいいな!ユーリ、任せた!」
「テッドもたまには手伝ったら?生姜をすりおろすとか」
「ああ。まあそれ位なら」
玉ねぎも薄切りにして、水に晒す。なんちゃってポン酢をたっぷりかけて、出来上がり!
「うわ…刺身なんて、転生して初めて食べたよ…たっぷりのご飯も旨い!」
そっか…コーベットじゃ、刺身は無理だもんな…私は前にマグロを食べたけど、エメルが採って来ないと食べられないもんな。
「生の魚は初めて食べました。便利な魔法があっても海は危険です。ユーリさん、充分に気を付けて下さいね」
「はーい!」
魔法を同時展開するのはもっと練習が必要だと感じている。
結界魔法、重力魔法、それに攻撃魔法を使うとしたら、あまり強い魔法は使えなくなる。
今はダークショット程度でやられてくれるものばかりだけど、それ以上はまだ難しい。
「そういえばテッド、アワビって食べた事ある?」
「んー…確か仕事で行った料亭で出たかな…もしかして見つけたのか?」
「似たような物かもしれないけど。食べた事ないからどう料理したらいいか分からなくて」
「んー…蒸し焼きだったかな…煮てもいいと思うけど」
「そっか。まだ一つしか見つけてないから期待はしないでね」
「お前の飯には充分満足しているから、何でもいいよ」
居候の身で贅沢を言うつもりはないと。まあ、良かったけど。
案外白いご飯さえあればおかずは何でもいいのかもね。




