採掘とダンジョン 1
マイクさんは、レイシアさんと一緒にコーベットに行く事になった。
流石に何日も亜空間に閉じ込めるのは忍びないと思っていたからいいんだけど。
亜空間移動を覚えるまで六年間、本当に辛い生活だったようだ。
王都にいる人も辛い思いをしているかと思ったけど、例え奴隷であっても法律で基本的人権は守られるようなので、ローナンよりは扱いがましらしい。
どころか、テッドのお兄さんの話によると、まだ自分は勇者だと信じているらしい。
その人、脳内お花畑?この世界には魔族の王はいるけど、人族と戦争をしている訳でもないのにね。
そんな話をしたら首を傾げていたらしいけど、勇者だからとおだてられて、今は騙されて訓練に励んでいるとか?
…もしかしなくても助ける必要、ない?
テッド的には自由に生きられないのは問題だって言ってたけど、幸せなその人は、解放されるのを望まないんじゃ…
大人らしいけど、心だけ幼児退行した?
私の場合は、ちょっとだけ子供っぽくなったけど、身体に精神は引っ張られるものだって。そんなに私は子供っぽくなってないよ?
テッドと意味のない言い合いをする事もあるけど、あれはテッドがお子様なだけだし。
「はあぁ…」
モコのせい?(おかげ)で、聖魔法が扱いやすくなりすぎている。
ターンアンデットもすぐに覚えそうな勢いだ。そうしたら、お化け退治。
「どうしたんだ?折角マイクさんの件は片付いたのに」
「テッドは、お化けは平気?」
「そんな非科学的な物…ここではそうも言えないか」
「そりゃ、魔物や魔法、妖精だっているんだから」
「妖精は、見た事ないけどな。父さんや兄さんには見えるみたいだけど」
「お化けは要らないのに…」
「アンデットの事か?大概のアンデットは聖魔法でやっつけられるだろ?」
「アンデットは妖精の天敵で、退治しなきゃならないんだよ。ホラー映画とか大嫌いだったのに、無理ゲーだよね」
「ふ。俺は結構好きだったな」
「ううう…テッドがターンアンデットを使えればいいのに」
「ディスペルも使えないんだぞ?」
「まあ…フレイの為だし」
「フレイ?誰だそれ」
「あ、…うーん。テッドには見えないからな」
「?まあ、知り合いの為なら頑張れば?」
グールとかリッチって、身体が腐ってるんだよね…そんな状態で生きてる?なんて信じられないんだけど。
範囲指定の聖魔法で倒せないって事はゴーストの可能性は低い。
ゴーストなら光魔法でも消滅するみたいだけど。
フレイにはちゃんと仕事をこなして帰って来て欲しい。
出来るなら許されて時空妖精に戻れればいいのに。
この仕事をやり遂げられれば、自信も付くよね。
泣きそうな顔をしているユーリの力になりたいけど、魔法が使えないなら意味はない。
俺の使命も、米の事でも世話になっているんだよな…。同じ歳なのにライバルにもなれないのはすごく悔しい。
お化けが妖精の天敵とか、良く分からないけど、ユーリは妖精が見えるのかな?ちょっと羨ましい。
マイクさんは、筆頭執事のキースさんに付いて色々学んでいるらしい。
コーベット周辺の魔物を相手にレベルも上げ、剣の扱いも学んで今まで出来なかった異世界を楽しむという事を 満喫しているようだ。
ローナンの国境もより厳しくなり、今では僅かに交易する程度。
事の次第を訊いた王様が怒って封鎖までは行かなくても今までに取引のあった商人や、犯罪歴のない冒険者が更に真偽官の面接を受けてようやく通れる位だ。
絶対の保証はないけど、青龍様を狙うような輩は入ってこられないだろう。
最も、山にはオーガやミノタウロスがいるから、並の冒険者では越えられないのだけど。
それでも山を越えてダンジョンに挑む冒険者は徐々に増えつつあるようだ。
彼らの目的はダンジョンであって青龍様ではない。
拝む人や聖水を持っていく人はいるけど、聖域まで来ようとする人はいないと言ってた。
お裾分けを持ってテッドと行って、アオさんはバイクの玩具に興味を持ったみたいで、テッドにも加護を与えたみたい。
「ありがとうございます!絶対に人が乗れるバイクを作りますね!」
うーん。免許は関係ないにしても、大型のバイクを作ってテッドの身長で乗れるのかな?
そもそも同じバイクは今も上の世界を走っているのかな?
テッドが転生するまでにおよそ10年位のズレがある事に、本人が物凄くショックを受けていた。
本人はすぐに転生したと思っていたみたいだけど、何か理由があったのかな。
色々と訊かれたけど、興味の範囲が違うから、私に答えられる事は少ない。
魔道具を作り始めたから、銀が必要になったテッドの為に、シャベルを渡してあげた。
「…採掘ってつるはしでやるものじゃないのか?」
「素人には却って危険だよ?強度もあるし、付与もしてあるから、比較的簡単に採掘出来るはずだよ?」
私も銀が多く含まれる場所を把握しながらつるはしを振るう。
「テッド、魔道具作りは面白い?」
「…まあ、目標あるし?それに家電もどきを魔道具で代用出来るなら、便利だしな」
「炊飯器とかミキサーとか、私も本当に色々作ったな」
「というか、テレビ欲しいな」
「あっても何も見られないよ?ああ…でも特定の場所に送信機を付ければ受信した映像を見る事はできそうかな?」
「防犯にはなるな」
映像再生の魔法は教えない方がいいかな。3Dホログラム位は教えてもいいけど。
魔法はイメージだから、言えばテッドなら理解できると思う。
スキルも同様だ。取れるかどうかは本人次第だけど。
銀の採掘の後、ダンジョンに寄った。あの暗器の扱いが上手くなってて驚いた。剣の扱いは上達しないのにね。
ていうか、いつ練習してたんだろう?学校では剣を扱っていたのに。
「聖域から出たから、みんなを呼んでもいいのか」
5階層で蜜の確保をしていたから特に必要はないけど、ムーン辺りはちょっと戦闘狂気味な所があるから。
「そうだな。俺ももっと下まで行きたいし」
「テッドは無理しない方がいいよ」
「それは馬鹿にしてるのか?」
「違うってば。私達だって階層を下るのは充分注意して降りるんだよ?絶対に無理はしない。約束できる?」
「勿論」
仕方ない。みんなを呼ぶか。エメルがいてくれればテッドの守りも完璧になるし。
テッドは、亜空間から出てきたみんなに驚いていた。まあ、さっき亜空間移動した時もいなかったからね。




