襲撃とマイクさん
テッドは明日の予習を済ませ、ベッドに入った。何だろう?胸がざわつく。
ユーリを見た時は、一目で落ち人だと分かった。ケントさんの時は、リロル市に行った時に、何となくいる気がした。まあ、穏やかに暮らしていたから俺の助けなんて全く必要なかったけど。
転生の時に言われた。何となく分かるようにしたと。
リロル市に入ってきたのか?こんなにも胸がざわつくのは、困っている奴なのか?
(ユーリ、起きてるか?)
(ん…何?テッド)
(リロルに落ち人がいるかもしれない)
(ケントさんじゃなくて?)
(彼はいて当たり前だろう?協力してくれ)
(いいよ。部屋のみんなは寝たし)
亜空間移動してテッドの部屋に出ると、レイシアさんが走り寄ってきた。
「何事ですか?」
「悪い、俺が呼んだんだ。ユーリは何か分からないか?」
ただならぬ表情から何かあったと判断し、スキルの超感覚を使う。
「亜空間から武装した人が出てくるよ…すぐに閉じたけど」
「侵略者?!場所は!」
「ん…南門の近くだね」
「レイシアは兵士に伝えてくれ!俺達も行くぞ!」
「ちょっと待って…また出て来た!…てか、何で小分け?」
テッドと共に亜空間に入って、眷属達を呼ぶ。
門近くに続々と集まってくる、不審者達。
「あの人!術者は分かるか?」
30代位の人で、オリーブ色の髪をしている。
「分かるよ。ディスペルしたら呼んでみるね」
奴隷紋の破壊に小さな衝撃を受け、辺りをキョロキョロと見る。
(マイクさん、奴隷から解放したので、今から透明になる魔法を使うので、こっちに来て下さい!)
自分の姿を見、思い切ってこちらに来た。
丁度南門に詰めていた兵士が、職務質問する。
ムーン達には、いつでも助けに入れるように頃合いを見計らう。
説明はテッドに任せ、不審者の動向を見守る。
マイクさんが消えた事に戸惑っているみたいだ。今は約30人程で、人数が揃わないからか、焦っているようだ。
「くそ!どうなってやがる…逃げられないはずだが?」
「一度撤退した方がいいんじゃないか?いや、それも出来ないのか」
「まさか死んだとか?いや…死体もないのはおかしいな。向こう側でトラブルでもあったか」
「大体、亜空間が狭すぎるのがいけない。だからある程度のレベル上げはさせるべきだったんだ!」
「今さら遅ぇよ!」
超感覚のスキルで、言葉を聞く。やばい。不法滞在がばれそうだ。あいつら、大人しくしてればいいけど。
一人の手が剣に伸びる。兵士さんは気がついていない!
「危ない!」
私が出る訳にはいかないので、ムーンに言ってもらう。
剣を受け止めるムーンを見て、状況を理解したようだ。
エメルとチャチャもムーンの所に行く。モコは子供なので私と同じ理由で除外した。
騒ぎを聞き付けた付近の兵士が駆け寄ってくる。それと、レイシアさんが呼んだ兵士達もだ。これなら後は安心だろう。
「ありがとう、みんな」
亜空間に入ると、30歳位の細身の男性が顔を上げた。
「あなた方が私の手記を見付けてくれたと聞きました。奴隷からも解放してもらい、感謝しています」
書かれていた文からある程度年齢が高い人なのかと思っていたけど。
「他のスキルや魔法は買わなかったんですか?」
「妖精に勧められるままに時空魔法を買い、落とされて呆然としていた所で声をかけられ、当時は何がなんだか分からぬままに奴隷にされてしまったので…落ちた時に5~6年若返ってしまい、それも戸惑って。もし上に戻れる事があっても妻も娘も私の事は分からないのですよね…」
そういう大切な人がいる人にとっては辛いよね。
「とりあえず、偽装のスキルは必要だと思います。亜空間は狭いんですか?」
「空間に仕切りをして、狭くみせていました。奴らの思い通りになるのは悔しいですし、この国に迷惑をかけるのも心苦しかったので」
奴隷って一切の自由がないイメージだけど、それ位の自由はあるんだね。
「しかし私はレベルも1なので、殆ど何も出来ません。どうしたらいいでしょう?」
「そっか…それは父さんに相談してみるよとにかく偽装を切らさない練習からかな?」
「分かりました。下働きでも何でもやらせて頂きます。宜しくお願いします」
「しばらく、ユーリの亜空間で預かって貰えるか?隣国の奴らは捕まったけど、服とかも目立つし」
「いいよ。ベッドもあるし、トイレもあるし。当面の食糧は収納庫に入れて下さい」
「それは持たされたので」
そっか。収納庫もいいように使われていたんだね。
「あなたは落ち人だと聞きました。こんな小さな子でも捕まらなかったのに…」
「私の場合、本当に人がいない所だったんですよ。おまけにもうすぐ30だったのに、落ちたら2歳で」
「かなりの重傷だったのですね」
「…あはは」
それに関してはフレイのミス、らしいけどね。残った細胞をシャンドラ様が全部目に使ったせいでおかしな事にもなったし。
昨日あんな事があったせいか寝不足で、授業を聞いているのが辛かった。
モコは…寝てる。まあ、授業中にモコが寝るのは珍しい事じゃないけど。
(こら、モコ!)
「にゃっ?!」
これもいつもの事だ。先生にジロリと睨まれて、モコは照れたように笑う。
魔物からすれば人の歴史なんて興味ないんだろうけど、私だってこればかりは落ちる前の知識は役に立たない。
覚えるのは苦にならないけど、実生活で役に立つのかな?




