バイクの玩具
モコとイリーナ、ミアと一緒に勉強会をする事になった。
コレットは剣の訓練をするので、いない。
春になったら対魔物の訓練も行われるので、勉強が出来るのは今のうちなのだ。
「飽きたー!」
早々に音を上げたのはモコとミア。
「数字は足すのは多くなって嬉しいけど、減るのは嫌だな」
「ボクは眠くなる。これはきっと呪いだよ。スリープの魔法がかかっているんだよ」
「かけてないからね?」
気持ちは分からなくもない。テーブルの下に燃焼石入りの火鉢を置いてテーブルの上には毛布を挟んで簡易炬燵を作ったから、みんな、そして私も少し眠い。
炬燵の呪い。年末年始には私もかかっていた呪いだ。
「イリーナ?」
「!あ…ごめんね。一瞬寝てた」
真面目なイリーナまでかかってしまうんだから、恐ろしい呪いだ。
ユーリはみんなにミントティーを淹れてやる。
「そういえばユーリ、レンガを暖める魔道具は今年は無理そうなの?」
「うーん…何か話が大きくなっちゃったから、勝手に設置する訳には行かなくて」
「領主様の許可が下りなかったの?」
「じゃなくて…試験的に公共施設の前にだけは設置したんだけど、肝心な宿屋までの道には来年以降になりそう」
「良く分からないけど、残念ね?」
実験は大切。一つおきに設置しても問題なさそうだし、貴族向けの高級な模様入りのレンガにも許可が欲しいと言われたから、これから実際に作って行くのは職人さんなんだから、そこは任せるって事にした。
「私ばかりいい思いするのはだめだと思うし」
殆どの子が親と離れて学校に来ているんだし、イリーナには親はいない。
その気になれば私は亜空間移動でいつでも会えるし、モコもいる。
フレイは今、シャンドラ様に頼まれて私の側を離れている。
かといって時空妖精に復帰できた訳じゃないみたいだけど。
学校に妖精族の人はいないみたいだけど、私だって人族なのに精霊視は持っているからね。魔眼に統一されてたら、鑑定でも確認できない。
「さ、切りのいい所まで終わらせよう?」
私自身も、魔法スキルを上げる為に時間が欲しい。
今日はテッドだ。目をキラキラさせて得意気に私とモコを呼んだ。
「凄いの出来たから、特別に見せてやる」
良く分からないけど、亜空間に入れてくれと頼まれた。
別にいいけど…見せてきたのは、バイクの玩具だ。
「魔力で走るんだぜ?」
どうやら広い亜空間の中を走らせて見たかったらしい。
軽く魔力を流して置くと、勢い良く走って行ってしまった。
ロングハンドという名の触手で把握された空間からバイクの玩具を拾う。
じっと見て、漢字が書いてあるのに気がついた。
「えっと…雀?」
「それは隼って詠むんだよ!」
「新幹線?」
「は?…新幹線に隼なんて名前あったか?」
うーん。微妙に前の時代の人だったんだね。多分。
「新しい新幹線の名前だよ」
「…ふうん。鉄道には興味なかったし、きっと俺が死んだ後だな」
どうでも良さそうに言って、玩具を走らせる。
「人が乗れるのも作れるの?」
「いや。出力が足りないと思う。ちょっと見てくれ」
設計図を見せられたけど、魔道具の基盤以外は分からない。
「バランスを取る図式はないけど、ちゃんと走るんだね」
「そりゃお前、自転車と一緒だろ?車の免許持ってたなら、原付とか乗った事ないのか?」
う…嫌な事思い出した。
「教習所で一時間だけ。…でもバイクに置いて行かれたんだよ」
「は?何で」
「知らないよ!急に走るんだもん!それ以来バイクは怖くて、後ろにも乗れない」
ううう…いっぱい笑われた!私は悪くないもん!置いていくバイクが悪い!
「そんなに笑わなくてもいいじゃん!」
「いや、普通笑うだろ。自転車に乗れれば普通乗れるし」
「自転車は乗れるよ?普段の買い物はその方が便利だし」
「こっちでも作って乗れば?魔法要らないし」
「無理。構造覚えてないし、目立つでしょ?ムーンに乗せてもらう方がいいし」
「そっちのが目立つだろ?」
「言った事なかったっけ?補助魔法の不可視光線で、見えなくできるんだよ」
「へー。便利だな、それ」
テッドの目の前で使ってやる。
「消えた…けど、触れるんだな」
「そりゃ、いなくなった訳じゃないから。この状態で気配も消してショートワープしたらもう誰にも分からなくなるよ?」
「落ち人を助けるのに使えそうだな」
「話し合いで決着つかない場合の最終手段になると思う」
「違法奴隷を持つような奴と話し合いなんて無駄な気がするけど」
それもそうかも?
目の前を通る玩具にモコの手が伸びる。
「あ!こら、壊れるだろ!」
「モコには獲物に見えるんじゃない?」
「獲物っていうか…動く物にはつい手が伸びちゃうんだよ」
猫の習性だね。
「モコはバイクに興味あるか?」
「分かんない。これが大きくなって乗れるって事でしょ?」
「まあ…まだ問題は山積みだけどな」
「またこの広い空間で走らせてくれよ?」
「自分でも亜空間覚える努力したら?」
「一応できる限りはやってるけど、やっぱり実戦じゃないと身に付かないのかな?レイシアとも忙しくない時は訓練してるけど」
「いいな。私もまた教えてもらいたい。…なら、ムーン達と亜空間の中で戦ってみる?」
「いいな!それ!こっちもレイシアに頼んでおくから、絶対な?」
実戦を重ねたいなら、亜空間移動でダンジョンに行けるのに、それに気がつかないなんて、テッドもお馬鹿だな。




