グラタンと金属バット
ポテトグラタンを作って、テッドの家に遊びに行った。
「うわ…グラタンも久しぶりだな」
「ユーリちゃん、このうどんの皮?みたいな物は何?」
「マカロニって言うんですけど、金型の関係で開いちゃうんですよね。本来なら、穴の開いた筒状になるんですけど」
「そうなの?これも美味しいわ!是非料理人に教えてね」
「ええと…小麦粉を粗挽きにする所から本来なら教えなきゃだめなんですけど」
「パスタの小麦粉は、何か違うのか?」
「テッド、知らなかったの?」
「何か、小麦の種類が違うのかと思ってた」
「そっか…マカロニがなかったのは、今までも色々誤解があったからなんだね」
「良く分からないけど、粉の挽き方から違うのね?勿論教えてあげて」
「そうですね。うどんだけじゃなくてパスタも作れますし、その方がいいと思います」
これでパスタが広まってくれれば、乾麺やマカロニが買えるようになるかもしれない。
商業ギルドに登録するより、さっさと広まって、気軽に買えるようになる方がずっと嬉しいから、これでいい。
冒険者やっていればそれなりに暮らせるから、お金はもうそんなに要らない。
それでなくてもダンジョンを見つけたご褒美でたくさん貰ってしまったし、ダンジョンへの案内料と、魔道具関係のお金だけでももう働かなくてもいい位、貰ってしまった。
旅に出たいとは思っているから、その時にかかる資金て考えればいいけど。
小市民だから貧乏性が身についているんだよね。
学校の入学に必要な物は、身分証と個人の武器。身分証はギルドカードでいいらしい。
ステータスボードは更新にお金がかかるので、庶民はなかなか更新しないので、データが古いからギルドカードの方がいい場合もある。
犯罪者はギルドカード没収だから、いいのかな?
さすがにミスリルの双剣を学校に持って行きたくないので、魔鉄で剣はそっくりに作り直した。
重さとか違うから、これにも慣れておかないとならない。切れ味だってかなり違うし。
 
私は、イリーナを誘ってゴブリン狩りに来た。イリーナの武器は冒険者のお古だという片手剣だ。教会の子供達も共同で使っているというので、ユーリは魔鉄で片手剣を作ってあげた。
「貰えないよ。しかも魔鉄なんて」
「ダンジョンの話はしたよね?そこで採掘した物だから元手はかかってないんだよ。それに、お古の剣を持って行ったら他の子が使えないし」
「ありがとう。ユーリ、大切に使わせてもらうわね」
「私も学校で使う用に剣を作り変えたから、そのついでに作ったんだよ」
自動修復の付与は黙っておこう。シェービングをかけるだけでも普通はお金を取られるし、打ち直しなんてもっとだ。
鉄よりも魔鉄の方が重い。それにイリーナも慣れてもらわないと。
私はもっとだ。
「イリーナ、片手剣のスキルは持っているの?」
あまりにも危なっかしいから聞いてみた。
「一応…ゴブリン退治の依頼も受けた事あるし」
うーん。ならレベルの差かな?
私は重さが違っても問題なく扱えている。力の値もそれなりだから、私は大丈夫そうだ。
「イリーナ、鑑定で見ていい?」
「ええっ?!鑑定も持っているの?商人じゃないのに」
「小さい頃は私も結構苦労してたから」
「そうなの?…いいわよ。別に見られて困る物もないし」
鑑定 イリーナ(8)レベル 4
火魔法 水魔法 光魔法 家事 片手剣 棍
状態異常耐性
レベル4か…学校に来る子供達がどれ位なのか知らないけど、ちょっと低いよね。
「イリーナ、棍て?」
「ええ?…うどんを作るのに使っていたから取れたのかな?」
「それ位で取れるなら、そっちの方が適性あるのかもね?…生憎と棍棒は持ってないけど、これで叩いて倒してみて」
収納庫から出したのは、スコップ。
テッドは嫌な顔したけど、イリーナは珍しそうにスコップを見ている。
「分からないけど、やってみるね」
パコン、といい音を立ててゴブリンを殴り倒した。
金属バットの方が合ってるかも。全部金属じゃ重いから、中抜けにして…
「ウォーターボール!」
イリーナの水魔法はホーンラビットの頭を包み込み、暫く留まった。
「いい方法だね!皮も傷つかないし」
「少しでも皮を高く売りたくて、考えたの…あ、レベルが上がった」
「良かったね!」
「うん…だけどユーリは何してるの?」
金属バット製作中。付与はやっぱり自動修復かな?軽くした分、強度に自信がない。一応魔鉄の片手剣と同じ位の重さにはできたけど。
「使ってみて?さっきみたいに殴ればいいよ」
「?うん…」
おお。ゴブリンが一撃で逝った。
「凄い!変わった武器だけど、私に向いているかも?」
「なら、イリーナにあげるよ。そっちの片手剣は教会に寄付する」
「で、でも…」
「言ったでしょ?元々魔鉄も買った物じゃないんだから、いいの。教会にはお祈りに行かせてもらってるし」
テッドは暗器が武器だし、モコは星の杖。それに比べたらバットで殴り倒すなんてましな方だよね?
「うん…ありがとう。魔物を傷つけずに倒せるから、皮もいい状態で売れるね!いつか恩返しさせてね?ユーリ」
「水魔法の面白い使い方を教わったから、おあいこだよ。でも、牙が素材の魔物には気をつけてね?」
「そうだね…上から殴ればいいよね?」
テッドにその話をしたら、ため息をつかれた。何で?




