チャチャ
レベルアップのコールが来たから、エメルかなと思っていたら、モコが喜んで外に走って行った。
(どうしたの?モコ!)
慌てた様子だったから付いて行ったら、熊が首吊りしていた。
な、何事?!
鑑定 ブラウンベアの死骸 肉は独特の臭みがあって固い
「くうー」
鳴き声にそちらを見ると、小熊がいた。
「にゃー!」
え?これモコの罠にかかった熊なの?…じゃああの小熊は…
そりゃ、熊がこの辺にいたら怖いけど、魔物とはいえ小熊は。
魔物に情けかけちゃだめだよね。あれも、大きくなれば私が襲われるかもしれないし。
あれ、スラ達も来たの?…スラ達には毛皮はご馳走。
ごめんなさい。熊さん。命は無駄にしない。
親熊を降ろすと、小熊が寄ってきた。
「スラりん!ホイミン!」
攻撃に転じた熊から私を守ろうと、スラ達が飛び出して、あっさりと爪の餌食になった。
「あなたの親熊を殺したのは私達だけど…でも!スラ達も私の家族だった!」
子供とはいえ、敵うだろうか?
モコが木魔法で拘束しようとしているけど、上手く行かなくて、雷魔法を当てた。
ビクンと体を震わせる小熊に、私はナイフを…振るえなかった。
いつか寝首をかかれるかもしれない。私は甘いのだろう。
「大人になるまで…面倒を見る。名前はチャチャ。だけど、これ以上私の家族を傷つけるなら、容赦はしない」
チャチャとの間に、パスがつながった。怒りと悲しみと戸惑い。
チャチャ(1)
ブラウンベアの幼体
レベル 11
スキル
闇魔法 重力魔法 咆哮 爪攻撃 突進
嗅覚強化 身体強化 気配隠蔽
スキルには出てるけど、幼体のうちは魔法は使えないみたいだ。
あれ?なら卵から産まれたモコは?魔法…使えていたよね?
まあ、種族によって違うのかも。
(チャチャ、死んだ魔物は食べられる運命。それは当たり前の事だから)
チャチャは、黙って親熊の首を落とされるのを見ていた。
悲しみは感じるけど、怒りは消えていた。
解体は今度、エメルに手伝って貰おう。
首は、埋めた。私は残ったスラミーを肩に乗せて家に帰る。
モコは上機嫌ですり寄ってくるけど、私は複雑な心境だ。
さすがに食べる気にはなれない。けど、このまま命を無駄にはしたくない。
エメルと相談してみよう。
悲しい気持ちも薄れてきた頃に、エメルが来た。
(釣りの餌にしたら?)
え…餌?
まあ、妥当な所かな。
マジックバッグから死骸を出しても、チャチャは攻撃的にはならなかった。もう死んだ事は、ちゃんと理解しているのだと思う。
まあせめて、丁寧に解体してあげよう。皮は残せるから。
エメルと、なんとチャチャも解体を手伝ってくれた。
スラミーが一匹で一生懸命なめしている。スライムの仲間は、何となくこれ以上増やしたくない。微弱なパスで気持ちは殆ど伝わってこないけど、一緒にいれば愛着が湧く。けどスライムは弱い。
自分勝手かもしれないけど、悲しい思いはしたくない。
っと、スラミーが突然プルプルと震えだした。何だろう?
あ…分裂した。確かにスキルには分裂ってあったし、スライムは分裂で増えるって知っていたけど、実際見るのは初めてだ。
海の潮溜まりとか、川を流されている姿はよく見てたけど。
(契約しないの?)
(ん…少し様子を見ようかな?さすがにスライムにはやられないし)
見てると、一緒に皮をなめしている。まあ、スライムにとっては餌だし、当然目の前に食べる物があったら食べるよね。
今日は、前に仕留めたボアのモツ煮込みだ。
賞味期限の切れた豆腐はあまり使いたくないけど、充填豆腐だからまあ、大丈夫だろう。
季節的に鍋物はきついけど、暑い時に熱い物を食べるのもそれなりに美味しい。
ご飯は食品としては少し高めなので、なるべく他の食品で代用している。
小麦粉が普段より安かったので沢山買った。それで今日はうどんを打って入れている。
私が軽いから、自分に重力魔法をかけて、大きな葉っぱの上から踏んだ。
味は結構美味しい。エメルもモコも大満足だ。チャチャは初めは料理に戸惑っていたけど、食べ始めたら誰よりも食べた。
チャチャも、徐々に慣れつつあるのかな?




