エーファさんと妖精
それぞれに、5階層、15階層で今日は野菜、甘い物を採っている。
テッドのパートナーは今日はエメルだ。飛んでくる野菜から身を守る為にである。
「エーファさん、トレントの枝、嬉しいんですか?」
「弓にしてもいいし、芯がまっすぐだから、矢にもできる。シーナ母さんの使っている杖も持ち手はトレントだよ」
「魔力を通すんですね。エーファさんは杖を使わずに魔法使ってますよね?」
「僕はこれだよ」
ミスリルの指輪には、見た事のない文字が刻まれている。
「これは精霊文字でね。妖精族にしか扱えないんだ。僕達エルフの他には、ドワーフや小人族等かな」
「この文字が付与の代わりになっているんですか?」
「そうだね。付与自体はサイズ自動調節位しか付いてないから」
「シーナさんの杖には色々付いてましたよね?」
「シーナ母さんの杖は特製だからね。付与を得意とする職人に頼むと結構高額になるから」
それにしても凄いな。キラービーは蔓の罠にかけてやっつけるのが一番いい方法だと思っていたけど、矢だけで正確に射ぬいている。
「どうして頭のいいキラービーに簡単に当たるか不思議そうだね。僕の命中スキルは必中に進化したからね」
「スキルって進化するんですね」
「じゃないと、弓だけでソロ活動はできないよ」
確かに。じゃないと説明のつかないスキルもある。ただ持ってるだけじゃだめなんだな。スキルにもレベルがある事はある程度分かっているし、私も頑張ろう。
先読みのスキルを駆使して、最低限の罠でキラービーを捉えていく。
「ユーリちゃん、この指輪を付けてみて」
先程見せて貰った指輪だ。
指輪はユーリの細い指にもぴたりと嵌まる。
「うわ…」
何だろう?この感覚。魔力をより身近に感じる。より細かく魔力を操れる気がする。
実際に魔法を使ってみてもそうだ。魔法が扱いやすい!より少ない魔力で、同じ魔法が扱えるし、魔力制御も簡単だ。
「凄いですね!これ!」
「うーん。やっぱり扱えたか。ずっと気になっていたんだけど、ユーリちゃんに憑いてる妖精がいるよね?」
げ!フレイの事ばれてる?
「この指輪を扱えるって事は、人族だと、妖精や精霊の加護がないと扱えないからね」
いや…前にフレイには祝福貰ってたけど、今は消えたし。シャンドラ様かな?妖精の親分みたいなものだし?
「ちょっと縁のある子なんです。今は契約?をしてて、私の魔力をあげる代わりに色々教えて貰ってて…まさか気がつかれてるとは思いませんでした」
「隠れているつもりかもしれないけど、あんまり上手じゃないね。多分父さんも気がついているんじゃないかな?」
あああ~。なんていうか、フレイだね。
「珍しい事だけど、悪い事じゃないよ。妖精は悪い人には憑かないから。僕の側にいる子はミミっていうんだ」
思わずフレイと顔を見合せてしまった。あ…可愛い子。ふわふわの水色の髪と服。
妖精って不思議。ほぼ魔力のような存在なのに、ちゃんと個性がある。
ミミに手を振って見せると、嬉しそうに手を振り返してくれた。
(あわわ…まさかばれていたとは…不覚でしゅ)
そんな大袈裟に悩む事かな?むしろものすごくフレイらしい。
(ユーリしゃん?私は完璧に隠れているつもりだったんでしゅよ?)
(そ、そう…あの子はどんな妖精なのかな?)
(まだまだ若い妖精でしゅね。微精霊から属性妖精に進化したばかりだと思いましゅ)
へえ。見た目はフレイと大きさとか変わらないけど、力はフレイの方がきっと上かな。
力があってもドジっ子じゃしょうがないけど。
前に見た時は微精霊しか見えなかったから、そのどれかが進化したのかもしれないな。
(微精霊が進化した時、契約してくれる人がいないと野良妖精になってしまうか、得た属性によっては私みたいに特別に修行する事もありましゅ。時空魔法を扱える妖精は少ないんでしゅよ。…あの事さえなければ私も…)
ユーリは黙ってフレイの話を聞いていた。けど、フレイはそれ以上の事を言うつもりはないようだ。
(私は今、フレイが側にいてくれて嬉しいよ。でも、シャンドラ様にちゃんと許して貰えたらいいね)
(…うにゅ)
「あら?トレントが赤い実を落としたわ」
「それ、たまにしか落とさないんですけど、そのまま食べても美味しいし、マジックポーションの材料にもなるんですよ」
「そうなの…あら。本当に美味しいわ!それに魔力も回復してる」
「ああ…またシーナはこの階層で止まるな。それでなくても蜂蜜が採れるからしばらくは下に降りられなくなると思うが」
「うふふ!いいじゃない!テッドが収納庫を覚えたんだもの!」
「シーナ母さん、あんまり父さんを一人にしても可哀想だよ」
「いいのよ!浮気なんてできる根性もない人だから!」
いやいや。あんなイケメンなら周りが放って置かないんじゃ?
「シーナが怖くて浮気もできないの間違いでしょ?」
「私、そんなに怖くないわよー?うふふ」
充分怖いな。
トレントの実は私も欲しいかな。一応倒した人の物だから、私が倒せば私の物だ。トレントの枝なんかは要らないから譲ってもいいけど実はだめ。美味しいし、薬にしても甘さが残るから嬉しいんだよね。
亜空間に戻って、その日の成果を確認する。野菜系は食費としてこちらで貰う。
「矢じりは魔鉄でいいですよね?」
「それは申し訳ないよ。鉄の方が安いんだから」
「私、魔鉄しか持ってないんです。ダンジョンで採れるから」
「そうか…うん。でもトレントで作ってもらうなら、その方がいいかな。ちゃんと代金は払うからね」
別にいいけど、そういう所を曖昧にすると違うパーティーと行動する時は揉めるのかな。
「ならエーファさん、ミスリルの指輪があれば精霊文字を刻んで貰えますか?」
「え…ミスリルを持っているの?」
「少量ですけど19階層で採れるので」
「うん。いいよ。付与は出来ないから自分でしてね。それにしても凄いね。ミスリルの錬成は熟練者じゃないと出来ないって聞いたけど」
「かなり苦労しました。今でも多量の魔力が錬成で持って行かれますね」
「無理はしないでね」
ムーンの大剣には隠蔽と認識阻害の付与をかけてある。
「ミスリルを扱うのって、ランクがどれ位あれば妥当ですかね?」
「うーん。少なくともBランク以上かな。僕の場合は子爵家の息子だから早めに持っていても絡まれたりはしなかったけど」
「ムーン殿なら持っていても大丈夫でしょう。共に戦って、Aランク位の力はあると感じましたから」
「凄いね。お父さん」
「いや…俺には実績がないし」
ぶつぶつ言ってるけど、褒められたから照れ臭いだけなのだ。ムーンは。
「あまり一緒にはいないのでエメルさんの実力は分からないですが、チャチャさんも強いし、高ランクのパーティーにもすぐになれるでしょう」
「むう…レイシア、俺は?」
「テッド様はこれからかと」
まあ、私の味噌探しに付き合いたいなら、負けず嫌いなテッドとしては、お荷物にはなりたくないんだろうな。




