久しぶりのアオさん
時間も空いたし、折角だから、畑の様子を見たい。簡単に手入れして、短期間で収穫出来る野菜の種も蒔いたから、手入れしたい。
蕪にアオナ、いんげんがいい感じだ。
「テッド、暇なの?」
「だって、一人でダンジョンに入るなって言うし、しょうがねーだろ」
結界石を置いて、雑草はモチに任せる。
「なら、ムーンもついてきたし、トトローみたいな人に会ってみない?」
(いいのか?ユーリ)
(うん。アオさんも淋しかったと思うから)
(いや…俺の事。進化したからな)
(まあ、大丈夫でしょ)
「は?トトローって……うわっ?!」
スコルになったムーンを見て、テッドが腰を抜かしている。
「雪狼から進化したんだよな?聞いてなかったけど、何に…?」
「スコルだって。凄いよね。いきなり神話級だもん」
「何か…今更だけど、俺もテイムのスキル、あったら良かったな」
「テイムの基本は餌付けだよ。多分。やってみる?ただし、自分で料理しないとだめかもだけど」
「いや…いい」
「まあ、私の魔力は美味しいみたいだからかもしれないけど…テッドの魔力は美味しいのかな?」
(別に不味くはないが、ユーリの魔力の方がいい。それより、あの方の所に行くのだろう?)
「そうだった。テッド、乗って?」
「い、いいのか?」
テッド、大きくなったムーンに無茶苦茶ビビってる。
(俺には変わりない。遠慮するな)
山の麓で下ろしてもらうけど、ムーンは前みたいに苦しそうじゃない。
(ふむ…聖なる物に耐性でも付いたか?…とりあえず、この辺にいる)
「大丈夫?テッド」
心なしか震えて見える。
「だ…大丈夫だ。それよりここは、聖域じゃないのか?」
「聖域は山の上の方だよ。ここでは銀が採掘出来るから、たまに来てたんだ」
「銀て…何に使うんだ?アクセサリーとか?」
「魔道具作るのに必要なの。魔鉄はダンジョンで手に入るし、私が落ちた所はいい所だよね」
折角だから、銀も採掘する。
「テッドも手伝って」
ユーリはシャベルを渡す。
「おい!シャベルなんかで採掘出来るのか?」
「素人につるはしは難しいから。それと、空間を把握して、銀を感じるようにしてみて」
「え?ええと…」
テッドは言われた通りにしてみるが、そもそも銀が良く分からない。
「テッド、これとこれ。明らかに違うの分かる?」
二つの鉱石を把握してみると、なんとなく違う気がする。
「鍛冶とか、そういうスキルもないのに…」
「これも訓練だよ。私もフレイに言われるまでは…あ」
「フレイ?まだ従魔がいたのか?しかも何かまともな名前…」
(ユーリしゃん!)
「あ、違うの。えっと、上の世界で…」
「?…まあ、いいや。時空魔法の練習だろ?やるよ。収納庫は覚えたけど、亜空間、俺も覚えたいもんな!」
ふう…危ない危ない。
採掘を終えてお弁当を広げていたら、やっぱりアオさんが来た。
「やあ、ユーリ。そっちが例の友達?」
「は?誰」
「アオさん。物作りの先生みたいな人だよ」
「…こんにちは」
「テッドは錬金術も鍛冶もやらないけど、馬車を改造したり、バイク?を作ろうとしてるみたいです」
「バイクはさすがに…ガソリンはここにはないからね。魔道具として作るなら何とかなりそうだけど」
「え?バイクを知ってるんですか?」
「アオさんは物知りだもん。そうだ。アオさん、味噌はこの世界にあるんですよね?」
「うん。大豆から作られているよ」
「わ…まさかの正攻法ですか!でも、そうしたら糀は?それも作られているんですか?」
「糀…ああ。コージは花だよ。わりと広い地域で咲いているけど、この辺はなかったかな?」
「花…とりあえず探してみます!便利な検索魔法も覚えたし!」
「ミソを作って調味料として使っている地域もあるから、買う方が楽かもよ?」
「そっか…!とすると、スペシャルショッピングで買えるって事だ!ありがとうございます!アオさん」
「ユーリは本当に料理が好きだね」
「というより、和食の味が忘れられないんですよね。だからあのダンジョンで米を見つけて、すごく嬉しいです!」
「もうそんなに?…無理はしないでね」
「大丈夫です!」
「あ、あの!…もしかして青龍様ですか?」
「うん。そうだね。…ここで私に会った事は、ご家族には内緒にね」
「いや…言っても信じてくれないと思うし、却って怒られそうですし」
ていうか、何で青龍様がトトローなんだ?…大人には姿が見えないとか?
帰りにまたたくさんの果物を貰ってユーリはご機嫌だ。
「ありがとうございます!また来ますね!」
「ユーリ…まさかの青龍様のお気に入りだったとは驚きだぜ。本当にお前ってばとんだびっくり箱だな」
「たまたまだよ。ここの果物は、本当に美味しいの!でもモコ達には無理みたいなんだよね…」
「魔物だから仕方ないんじゃないか?」
「そうだけど…アオさんも従魔達も私にとっては大切な存在だからさ、ちょっとそれが悲しいな…我が儘だよね」
「ユーリってさ、従魔に反抗された事って一度もないのか?」
「ないよ?何で?」
「そういう話、たまに聞くからさ。…特にスコルなんて、いくらユーリが強くても敵わないだろう?」
「聞いた事がない訳じゃないけど、私は従魔のみんなの事、心から信頼してるから。みんな、私にとっては大切な家族なの」
「…そうだな。悪かった」
私も、いい主である努力は怠らないつもりだし、無茶な命令なんてこれからもしない。




