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劣等人の魔剣使い スキルボードを駆使して最強に至る(WEB連載版)  作者: 萩鵜アキ
3章 王都ユステルの炎禍

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純粋な力の差

「ぐぬぅ……!!」


 テミスの剣が、男に迫る。

 だが、届かない。


 テミスの攻撃は、男にあっさりと避けられた。


 無理もない。テミスが男に対抗出来ているのは、防御力の一点のみ。

 攻撃力も素早さも、宝具は底上げしてくれないのだ。


 おまけに、テミスの体にはダメージが蓄積されている。

 宝具の効果によって男の攻撃を完全に無効化出来るほどの、深刻なダメージだ。


 それほどのダメージを抱えて、まともな攻撃が出来るはずもなかった。


「誰が、悪だと? 貴様らは、俺の息子を殺したではないか!」

「なんだと?」

「罪もない俺の息子を、残虐に殺した人間こそが悪だ!!」

「待て、なんの話だ?」

「問答無用!!」

「くっ!」


 男の言葉に引っかかったテミスだったが、尋ねる機会は失われた。

 そこからテミスは、男からの猛攻撃を受け続けた。


 ダメージはない。宝具が底上げした防御力が、ほとんど弾いてしまっている。

 だが、攻撃に耐えられても、攻撃を止める力がない。


 素手ではダメージが与えられないと気づいたからか、男は何もない空間から剣を取り出した。


(<異空庫>持ちか!)


 剣は子どもの身の丈ほどある大剣だった。

 その剣の切っ先が、テミスに迫る。


(これは不味いか)


 テミスが辛うじて反応する。

 だが、まるで間に合わない。


 鈍色の刃が、テミスの首元に触れた。


「――ッ!」

「ぬ?」


 男の剣は、しかしテミスの首を1ミリしか傷付けられなかった。


(……ふぅ。さすがに、肝が冷えた)


 テミスは内心安堵する。


 宝具を用いるのは、今日が初めてだ。

 だからテミスは実際に、宝具がどこまでの攻撃を退けられるかを知らない。


 さすがに武器はダメだろうと慌てたが、どうやら宝具はあらゆる攻撃を退けられるようだ。


 続いて男は、掌に《フレア》を浮かべた。

 村を焼いてあまりあるほどの上級魔術が、テミスに放たれた。

 しかし、それですらテミスには効果がなかった。


「くっ……うおぉぉぉぉ!!」


 そこからテミスは、男のありとあらゆる攻撃を受け続けた。


 100発か、200発か。

 攻撃を受け続けたテミスは、ふと攻撃が止んでいることに気がついた。


「はぁ……はぁ……」


 男の息が上がっている。

 それほど、男はテミスを激しく責め続けたのだ。


 にも拘わらず、テミスに新たに生まれた傷はない。

 さすが、悪魔を倒すための武具だけはある。


(……まだか)


 もう、新たなダメージは受けない。

 だがテミスは、焦っていた。


(まだ毒が回りきらないのか!?)

(オレの寿命は、あとどれだけ持つ?)

(あとどれくらい耐えれば、男は死ぬんだ!?)


 テミスは、ずいぶん長く戦っている気がした。

 実際はそこまで時間は経過してなのかもしれない。

 だが、このままではテミスが先に倒れてしまうかもしれない。


 その兆候が、既に現われていた。


「カフッ!!」


 テミスが咳をすると、口から大量の血が飛び出した。

 これが、蓄積されたダメージのせいか、削られた寿命のせいか、テミスにはわからない。


 だが、テミスはこの異変で確信する。

 もう長くは持たない……と。


 それが相手にも伝わったか。

 男が唇をニィっと歪めた。


「このまま黙っていれば、すぐに死にそうだな」

「さて、それはどうかな? そっちも、結界毒がそろそろ回ってきたんじゃないかな?」

「なら試してみるか」

「……」


 男は自信ありげに笑った。


 さて、ここからどうするか……。

 考えていた時だった。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


 見覚えのある少年が長剣を振りかぶり、男に斬りかかった。

 その少年は――トールだ。


 まさかのトールの出現に、テミスは唖然とした。


(逃げたんじゃ……なかったのか)


 テミスには、トールがこの男の雰囲気に気圧されていたように見えた。

 それも無理はない。


 他の冒険者や、銀翼騎士団の団員は全員、身動きが取れなくなる程の圧を持つ相手だったのだ。


 真の強敵が出現した時、己の力など関係ない。

 最後に体を突き動かすのは、心の強さなのだ。


 彼はまだ20歳にも満たない少年だ。

 その少年に、並の大人を超える心の強さを望むのは酷というものである。


 テミスが動けたのは、いついかなる時も、宝具を使って寿命を燃やし尽くす覚悟を持って、毎日を過ごしていたからだ。


(それほどの覚悟が、この少年にもあったのか……?)


 男の雰囲気に飲まれて足を竦ませていた頃のトールはもういない。

 黒い長剣を巧みに操り、男を攻めていた。


 剣術の技量は、テミス以上だった。

 テミスでは、剣筋を線で追うのがギリギリである。


 そのトールの攻撃を、受けきっている男も恐ろしい。


(これなら、いけるか!?)


 テミスが希望を見いだした、その時だった。


「しゃらくせぇぇぇ!!」

「――ッ!?」


 男が力任せに大剣を振るった。

 その攻撃を、トールが剣で受ける。


「避け――」


 避けろ。

 テミスがそう言う前に、剣が接触。

 透の体が、小石のように飛ばされた。


 力任せに飛ばされた透が、民家に直撃した。


 ――ズゥゥゥン!!


 透が接触した民家が、その衝撃により瓦解したのだった。

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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