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劣等人の魔剣使い スキルボードを駆使して最強に至る(WEB連載版)  作者: 萩鵜アキ
3章 王都ユステルの炎禍

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警邏任務

明けましておめでとうございます。

本年も、どうぞ宜しくお願いいたします。

「それだけ、王国にとって王位継承順位発表の儀が大切なんです。仕事に張り合いがないかもしれませんが、宜しくお願いします」


 テミスにとって、警邏任務は日常業務である。

 その警邏が〝緩い〟と言われると、面白くなかった。


 その日常業務こそが、国民が平和に暮らすために最も大切なものだからだ。

 それを〝緩い〟と言われると、警邏が如何にユステルに貢献しているのかを、訥々と語りたくなる。


 だがテミスは、その気持ちをぐっと呑み込んだ。


 彼らはフィンリスの冒険者ギルドマスターから、〝将来有望〟と評された者達だ。


『おそらく近いうちに、一気に頭角を現わすよ』


 フィンリスのギルドマスターといえば、元Aランク冒険者として名高い人物である。

 そんな彼の〝神眼〟に適った冒険者だ。

 ただ者でないだろうと、テミスは予想していた。


 実際、目にして驚いた。

 まず、女性冒険者のエステルだが、たしかにその立ち振る舞いは素養を強く感じさせる。

 足の動かし方、重心移動、視線。すべてが剣士として磨かれてきたものだ。


 平の騎士団員では相手にならない。

 班長クラスでやっと、まともな勝負が行えるはずだ。


 今後、大きく飛躍する可能性は、確かにテミスにも感じられた。


 問題は、もう一人の少年トールだった。

 見た目は十代後半くらいで、顔にはまだあどけなさが残っている。


 王都に来るのが初めてなのか、目をキラキラさせながら、興味深そうに辺りを見回している。


 銀翼騎士団は今回の依頼を行う上で、ギルドに冒険者の簡単な素性書を作らせている。

 裏で怪しい団体とつるんでいないか、事前に調査するためのものである。


 その素性書には、トールは迷い人と書かれていた。

 まさかの、迷い人である。


 テミスも迷い人の噂は、何度となく耳にしている。

 その存在が〝劣等人〟と呼ぶに相応しいものであることも、知っている。


 エステルとパーティを組んでいることから、テミスはてっきり『トールは荷物持ちか』と思っていた。

 その程度の役割ならば、劣等人にも出来るからだ。


 しかし、奴は化物だ。


 歩法に重心移動はかなり高レベルな剣士のそれだが、テミスが知らない技術も用いられている。

 また、立ち振る舞いは剣士風なのに、トールからは常時強い魔力を感じる。


(彼は、本当に劣等人なのか?)


 トールの底がまるで見えない。

 テミスは素性書と己の感覚の、どちらを信じて良いのかわからなくなった。


 テミスは王都を守護する銀翼騎士団にて、長年任務を全うしてきた。

 その実力を買われて、副団長にもなった。


 そのテミスが、トールの実力を測ることさえ出来なかった。


 これが、己の勘違いであれば、どれほど良かったか……。

 試しにテミスは、薄らと殺気を放ってみた。


 雑踏に紛れ込むほど、テミスが放った殺気は薄い。

 しかし、


「――ん? なにかありましたかテミスさん」


 なんと、トールは死角から放たれた殺気に気づき、しかもそれがテミスが放ったものだと気づいたではないか!


「い、いえ。トールさんは、王都は初めてかなと思いまして」

「はい。初めて来ました。とても良い街ですね」

「ありがとうございます」


 テミスは表情を繕いながら、内心怯えた。

 そして、この化物を王都によこしたアロン・ディルムトを怨んだ。


『対応する人は、副団長以上にしてね。一応、フィンリスの冒険者ギルドでは、重要な冒険者だから』


 たしかに平団員に、トールらのお守りは荷が勝ちすぎている。

 平団員が対応したのであれば、儀式が終わるまでにその団員は髪の毛が真っ白になっていただろう。


 テミスは叫び出したかった。


(こんな化物が劣等人でたまるか!)


 まるでどこに逆鱗があるかわからないドラゴンを、撫でる刑罰を受けている気分だ。

 いつ噛みつかれるかと思うと、頭髪がすべて抜け落ちてしまいそうである。


 出来れば誰かに担当を代ってほしかった。

 だがそんな荒れ狂う内心を表には出さず、テミスはトールらを引き連れて警邏任務を行う。


 このまま何事もなく任務が終わる未来を、テミスは祈らずにはいられなかった。


         ○


 任務初日は、警邏の手順を教わりながら1時間ほどかけて街を回り終了した。

 本番は翌日にある、王位継承順位発表の儀だ。


 儀式当日は、国王自らが民の前に姿を現わす。

 とはいっても、王城のバルコニーに出るだけだ。

 王城からは一歩も出ないし、また平民は王城の敷地にすら入れない。


 一番近い場所で見ても、米粒ほどにしか見えない。

 それでも魔術で拡声された声は王都中に届くと、テミスは言っていた。


 どのような儀式なのか、透は興味が湧いた。

 だが当日は警邏任務がある。


 遠くから聞こえてくる王様の声を聞きながら、儀式を想像する他なさそうだ。



 翌日になり、透らは指定の場所でテミスと落ち合った。

 王位継承順位発表の儀当日ということもあって、街は非常に賑わっていた。


 先日とは打って変わって露店が軒を連ねているし、また旅装束を身に纏った人の姿がかなり多い。

 まるで国を挙げたお祭りだ。


 透は露店を興味津々に眺めながら、テミスの後を着いて歩く。


「すごい人ですね。こんなに人が集まることってあるんですか?」

「年に一度あるかないかですね。戴冠式はもっとすごいですよ。一週間ほどこの状態が続きます」

「おおっ」

「我が国は正義神フォルセルスの恩寵を受けてますから。戴冠式では高位神官の体に、フォルセルス神がわざわざ降臨して祝福してくださるのです。それが見たいがために、国中から人が集まってくるのです」

「へぇ~!」


 その話は以前、エステルから聞いたことがある。

 透も、神が降臨する姿を一目見てみたいと思う。


(あれとは違って、普通にまともな神様なんだろうなあ)


 透は何度か会話したことがあるネイシスを頭に思い浮かべた。

 正義神というくらいなのだから、あれよりしっかりしているに違いない。


 道を歩くと、かなりの頻度で冒険者を伴った騎士団員とすれ違う。

 今回、どれほど冒険者が投入されているかは不明だが、これだけいれば、罪を犯すのも一苦労だ。


 途中、露店の店主と客の諍いを仲裁した以外は、何事もない。

 警邏任務は、順調そのものだった。


 そうしているうちに、遠くから楽器の音色が聞こえてきた。


「おっ?」

「音楽が聞こえてくるな」

「どうやら始まったようです」


 テミスが王城のある方向に顔を向けた。

 音楽は、そちらから聞こえてくる。


 王城まではかなりの距離があるが、音楽はすぐそこで奏でられていると思えるほどに近い。

 魔術を用いて、音を遠くまで伝達しているのだ。


 音楽が終わると、宰相が演説を始めた。

 かなり修飾華美な長い演説だった。


 それが終わると、国王の声が聞こえた。


『皆の者。今日はよく集まった。我が名はフェリペ・サムソン・ユステルである』


 その声が聞こえると同時に、辺りから喧噪が消えた。

 まるで魔術がかかったように、ユステル中の人々が国王の声に耳を傾けている。


(すごく威厳のある声だな……)


 声を聞いて黙ってしまうのも、無理はない。

 それだけ国王の声には、強い力が秘められていた。


 国王の威厳、みたいなスキルがあるのか。

 国王の声は、透が思わず平伏したくなるほどだった。


『時期、国王の継承順位を発表する。我らがユステル王国を継ぐ、王位継承順位第一は――』


 その時だった。

 突如、王都ユステル爆音が轟いた。

小説版『劣等人の魔剣使い』が発売となりました。

また2月5日には本作『生き返った冒険者のクエスト攻略生活』が発売となります。

両者共に、宜しくお願いいたします。

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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