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劣等人の魔剣使い スキルボードを駆使して最強に至る(WEB連載版)  作者: 萩鵜アキ
3章 王都ユステルの炎禍

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リリィの疑問

 リリィは食事のあと、リビングにあるソファで微睡んでいた

 先ほど食べた料理は、100年を超えるリリィの人生において、最も美味であった。


 リリィはこれまで様々な料理を口にしてきた。

 まだまだ成木(おとな)に成り立てではあるが、それでも一般的な人間より沢山の経験を積んできた。


 そのリリィが、口にした経験がないほどの料理である。

 これほどの料理を作った彼を、逃すような愚か者ではない。


 リリィはシェアハウス案に同意し、〝ほぼ〟専属料理人のトールを確保したのだった。


「……ふぅ」


 まさか自分がここまで料理に胃袋を掴まれるとは。リリィは考えたこともなかった。


 これまでの人生において、己の興味は魔術の探究にのみ向いていた。 

 それ以外のことは、二の次三の次だった。


 昔ともに旅をした冒険者パーティに〝躾〟られなければ、リリィはいまだにぼろ布を纏っていたかもしれない。


 ――それまでは自分の姿に、全く興味が湧かなかったのだ。


『リリィは凄く綺麗なんだから! もったいない!!』


 冒険者の女性が毎日やいのやいの文句を言うせいで、いつしかリリィは身だしなみを整える癖がついたのだ。


 さておき、自らの身だしなみさえも興味がない。

 そのようなリリィにとって、魔術以外で心を動かされるのは、初めての経験である。


「……はぁ」


 ――まさか自分が、食事如きにこれほど感動するとは。


「……むふぅ」


 ――次の食事は、まだかな?

 既に次の食事が待ち遠しい。


 リリィが夕食に心を馳せていたときだった。

 家の外から、微弱な魔力派を感じ取った。


 それからしばらくして、カンカンとなにかがぶつかる音が聞こえてきた。


「……うるさい」


 美味しい食事の記憶を思い返しながら、うっとりうとうとしていたリリィは、目をつり上げながら立ち上がった。

 これでは気持ち良く午睡も出来ない。


 家を出て、耳を澄ませる。

 音はどうやら、家の裏手にある庭から響いてくるようだ。


 リリィはむっつり頬を膨らませ、庭に向かった。


 庭を訪れると、リリィはそれまで蓄えていた怒りを途端に消散させた。


「……えっ?」


 庭では、トールとエステルが木剣を手にして戦闘訓練を行っていた。


 トールとエステルの剣術は素晴らしい。

 魔術以外に興味がないリリィには、詳しく評価する目がない。だが、それでも大雑把になら、彼らのレベルがわかる。


 二人の剣術は間違いく、Cランク冒険者レベルだ。


 リリィが驚いたのは、剣術レベルの高さにではない。(むしろ剣術への興味は一瞬で失せた)


 リリィが驚いたのは、トールだ。

 彼はつい一・二週間前に魔術を購入しに来た、新人魔術師である。


 クインテッドという、リリィの頭では理解出来ない才能の持ち主だ。


(あれは絶対、測定宝珠が壊れてた。うん。そうに違いない)


 トールが購入したのは、基礎中の基礎魔術のみだ。

 だからリリィはこれから、少しずつ魔術スキルを上げていくものだと考えていた。


 しかし、いま目の前に広がる光景はどうだ?


 トールは《筋力強化》を常時発動させている。


 通常《筋力強化》を発動しながら、まともに動けるようになるまでには、最低でも1ヶ月はかかるはずだ。

 にも関わらず、トールはエステルと同レベル――いや、それ以上の制度で《筋力強化》を制御していた。


 それだけではない。

 トールはさらに、《ウォーターボール》を5つも頭上に浮かべて、グルグルと回転させているではないか!


 あの《ウォーターボール》を攻撃に使うのか?

 そう思ったリリィだったが、いつまで待ってもトールは攻撃に使わない。


 攻撃魔術を頭上に浮かべたまま、彼は一体なにをしているのか?


「……意味がわからない」


 しばらく訓練を観戦していると、エステルの切っ先がトールの首筋に突きつけられた。


 剣術では互角か、トールが一歩上にいた。

 だが、勝負勘はエステルが上だったようだ。


「ああ、また負けちゃったか」

「しょうが無いのだ。トールはエアルガルドに来てから、さほど時間が経ってないのだからな」

「うーん」

「剣を握ってから1ヶ月も経ってないトールに負けたら、私が落ち込むのだ。まだまだ、負け続けてくれて良いのだぞ!」

「いやいや」


 試合が終わり、休憩する二人の会話にリリィの耳がぴくりと反応した。


「エアルガルドに来てから?」

「ん、おおリリィ殿、来ていたのだな。気づかず失礼した」

「いい。それより、エアルガルドに来てからって?」

「ええと……それは……」


 エステルが顔を引きつらせ、トールの顔を見た。

 トールがその先を引き継ぐように口を開く。


「僕は迷い人なんです」

「えっ」


 迷い人と聞かされたリリィは、かつてない程の衝撃を受けた。


 当然ながら、成木であるリリィは迷い人がどのような存在であるかを熟知している。

 これまで何名もの迷い人を見たことがあるが、そのいずれも〝劣等人〟と呼ぶに相応しい存在であった。

 一人の例外もなく。


(迷い人が、クインテッド? しかも、修得してから1ヶ月もしないで、これほど習熟してる……!?)


「ありえない」


 リリィの口からぽつりと本音が漏れた。

 もう、その言葉しか出て来なかった。


 リリィが自我を持ってから百余年。

 魔術を修得して1ヶ月で一定レベルまで習熟した人間の話は耳にしたことがない。

 ましてやその人間が劣等人など、あり得ないとしか言いようがなかった。


「トールは本当に、迷い人?」

「うん。一応そう言われてるね」

「……」


 彼が嘘を吐いて迷い人だと偽っているのなら、少し調べればすぐにわかる。

 だが、冒険者が自らを迷い人と称する者がいるはずがない。

 何故ならそれは『自分はいっぱしの仕事すら出来ない』と公言するものだからだ。


 トールが迷い人である可能性は、限りなく高い。

 では、何故Cランク冒険者ほどの剣術を身につけ、さらに魔術も驚異的なスピードで習熟しているのか?


 しかも彼には、とてつもなく美味な料理を作る腕前もある。


 ――トールは一体、何者なんだ?

 その問いをいくら考えても、リリィには答えが出せなかった。

マガポケにて「劣等人の魔剣使い」が更新されております。

次回更新の更新ですが、漫画家さんが急病のため休載となります。

大変申し訳ありませんが、再開をお待ちくださいm(_ _)m

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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