後日談
一軒家が欲しいという透たちの願いは、ガイオス・フィンリスにしかと聞き届けられた。
ガイオスからの許可を頂けるよう、ずいぶんとトマスが骨を折ってくれたと、ギルドマスターのアロンが言っていた。
「まさか本当に一軒家が貰えるなんて思わなかったよ。トマスさんには頭が上がらないね」
「そうだな。次に会う機会があったら、しっかりお礼を言おう」
「うん」
アロンから鍵を貰い、指定された場所へと向かった。
フィンリスの街はちゃくちゃくと再建が進んでいる。
だが、すぐに元通りになるわけではない。茜色の屋根に、白い壁の家が建ち並ぶ美しい街並みに戻るまでは、まだしばらくの時間がかかるだろう。
透たちがやってきたのは、ギルドから少し離れた市民街の一角だった。
透が指定した通り、庭付き二階建ての一軒家だ。
「ここが、私たちのチームハウス、なのだな……」
「うん。かなり風情がある良い家だね」
家の外壁はツタで覆われていて、屋根や壁に年季が入っている。
しかしそれは、汚さを感じないタイプの経年変化だ。
壊れている場所があったり、傾いていることもない。
暮らす分には、なんの問題もない。
(あとは、台所がどうなってるかかなー)
透はこれまで、密かに抱き続けていた不満があった。
それは、宿の食事が不味いというものだ。
エステルは一度も、宿の食事が不味いと口にしたことがない。
その様子から透は、この世界の食事はこれくらいのレベルなのだろうと考えていた。
しかし元日本人の透は、出汁がなく、塩辛いだけの味気ない料理は我慢がならなかった。
といっても、女将には一度も文句を言ったことはない。それは、料理を作って頂いたことへの感謝があるからだ。
また厨房を借りることもしなかった。
もし透が頻繁に厨房を使えば、間接的に『女将の料理は食えたもんじゃない』と言っているようなものだからだ。
だから、透はここまで我慢した。
せめて自分の家を持つまでは、黙っていようと……。
そうして今日、透は飯マズの呪縛から解き放たれた。
(まずはなにを作ろうかなー。あとで市場をまわろう! ああ、厨房器具も買わなきゃなあ!!)
まだ厨房も確認していないのに、透は炊事と食事で頭がいっぱいだった。
うきうきで鍵を開き、家の中に入った透はしかし、
「……ん?」
「……えっ!?」
「なんでここに、リリィがいるのだ……?」
リビングで椅子に座ってぼーっとしていたリリィと目が合い、頭が真っ白になったのだった。
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