表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/92

Remember-79 《第二章 メンバーレポート》 ⭐︎

ユウマ/桐生 悠真


挿絵(By みてみん)


身長:177cm

体重:62.8kg

好きなこと:食事、散歩、ベルとの会話

嫌いなこと:無意味になること、約束を破ること

趣味:まだ考えてなかった……


 異世界の中で倒れていた記憶喪失の青年。異世界を彷徨(さまよ)ってる最中、同じく記憶喪失の少女、ベルを見つけ(文字通り)拾う。テンションが高かったり時には妙にドライだったりなど、記憶喪失の影響か性格に一貫性が無いが自身の発言や行動に対して人一倍責任感を感じているなど、根底には芯の強さがある。

 異世界での一件で“転生”と“魔法”を覚醒させているが、どうしてそんな力が使えるのかは思い出せていない。魔法は空気や水などの“特定の形を持たない物体に形を与える”というもの。その自由度の高さは他メンバーと比較して突出している。

 シャーリィの目的に共感し、彼女の手助けをしながらベルと共に失った記憶への手がかりを探している。


【メンバーレポート】

 今回は魔術、魔法のデータとして私が監督として色々調べさせて頂きました。


《条件》

・地上の一般的な平原。天候は晴れで統一。

・自然物では不規則なデータのため、50回行った平均をデータにする。

・礫などは無作為に用意した物を使用。自然物。

・当時の風向きは北向き、風速は2m/s。可能な限り風の吹いていないタイミングで測定。


《測定結果》

・空気に対する作用:空気に対しては純粋な圧縮、操作のみ行え、固形物にすることは出来ないと判明。ただし、煙幕や霧などに対してはやはり固形物には出来ないものの、普通の空気よりも自由度が高まった。どうやら目視で分かりやすい物であればより強力に魔法が作用するらしい。

 また、本人曰く「空気が見える」とのこと……だが、本人の主観的なものであるため詳しくは不明。空気の流れや内容物が分かるらしいが……詳しく検証する方法はまだ思いつかないので、次回までに考えることにする。



・水に対する作用:他の物体と比較して、最も自由に形状を与えられることが判明。特に色の付いた液体(追記:水自体は透明だが、川のように総合的に見ると色があるように見える水も含む)は特に自在に扱える様子。

 また、炭酸水のような物体に対しては空気の圧縮作用も働いて爆発物のように扱えたり出来るのを確認。今後の彼専用の魔道具開発の参考に加えて50回追加で検証。


 追記:試験的にアメーバや粘性を初めから持っている物体に魔法を使って貰ったが、そちらは上手く扱えていなかった。どうやら“水や空気への魔法”ではなく、本当に“形の無いものに対する魔法”であるらしい。この奇妙な魔法の特性は、今後も研究する必要があるだろう。



・砂に対する作用:水に対する魔法の実験で、砂も形がないモノとして判定されるか確認してみたところ、彼は砂もある程度自由に操作してみせた。しかし、重力の影響を受けやすい性質なのか、他の空気や水よりも重力の影響を受けていた。

 使い道は……正直、少し考えてみたがピンと来ない。精々、不安定な砂の足場を固めたりするぐらいだろうか。しかし、実際に行使するのはユウマさん本人だ。彼の発想力と相棒の知恵で活用してもらおう。


 追伸:もう二度とやりたくない :ユウマ(代筆者シャーリィ)



 記録者:アザミ


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ベル/???


挿絵(By みてみん)


身長:等身大は147cm、ガラスの大きさで比が変わる

体重:不明。ガラスと同等

好きなこと:誰かと話すこと、特にユウマとは仲良し

嫌いなこと:一人ぼっち、役に立たないこと

趣味:忘れている


 記憶喪失の少女。その姿は小さな板ガラスの中に映し出されている。地面に落ちていた所をユウマに(文字通り)拾われた。ベルという名前は彼女が昔呼ばれていたあだ名。どこか大人びた口調だが、所々に年相応の少女らしさが見られる。

 まるでガラスの中に居るような行動や振る舞いを見せるが、本当にガラスの中に居るのか、あるいは映像が映し出されているだけなのかは不明。

 戦闘などには参戦できないものの、客観的に物事を見てユウマの手助けや相談に徹している。彼女の目標は、“ユウマと共に記憶を取り戻す”こと。

 しかし、何かをユウマに対しても隠している節がある様子だが……?


【メンバーレポート】


 彼女が時折行っている、“ガラス渡り”という技術に関してレポートする。

 ユウマのサポートとして彼女はガラスとガラスの間を通って索敵、またはガラス片の位置を知らせる役割を担ったことがあると、ユウマから聞いたため、実験してみた。ユウマが基本持っている一枚のガラス――コレを“ベースグラス”と仮定して、そこからもう一つのガラス片にまで渡れる距離を測定してみた。その結果、25m程度までは移動できることが分かった。更にそのガラス片から他のガラス片があれば移り渡れる……が、不思議なことに“ベースグラス”から離れれば離れるほど、彼女の姿が薄くなり、彼女は寒気を感じると訴えた。万が一に、彼女の存在消失の危険を考えて実験はそこで中止した。

 そしてさらに、大型のガラスがあれば、彼女はそこに映る風景の中を自由に動ける。そしてその場合は本来の身長で動き回れる様子だ(お陰で身長のデータが測れたわ)。ただし、ガラスの中の椅子に座ったりはできるが、椅子を動かしたり、耳に乗せている角ペンを使って落書きをしようとしてもらったが、椅子は全く動かず、ペンは何も書けなかった。そもそもインクが入っているのか怪しいのだが……



 記録者:シャーリィ


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 シャーリィ/シャーリィ・フォン・ネーデルランド


挿絵(By みてみん)


身長:139cm

体重:34.2kg

好きなこと:自由、直感的な行動、考察と推理

嫌いなこと:めんどくさいこと、他人に迷惑をかけること

趣味:紅茶、刃物集め


 ユウマ達が怪物に襲われていたところを救い出した少女。しっかりとした性格で、弱い姿をあまり見せない。ただし、その一方で面白いことには首を突っ込んで楽しむという性格もあり、ただ単に優しいだけではない。それでもかなりのお人好し気質。

 その正体はネーデル王国の若き王女であり、今は数少ない魔法を行使できる転生使いでもある。物心が付いた頃に転生使いと異世界の関係について知り、強迫観念に近い責任感を抱えながら、王女ではなく転生使いとして今までを過ごしてきた。

 扱う魔法は“ルーン魔術”。刻んだルーン文字に自身の魔力を流すことで特定の魔法を発現させるもの。シャーリィは魔力そのものでルーン文字を作ることで魔法の発現までのラグを減らしている。

 今はメンバーのリーダーを務めているが、隙があらばユウマかアザミに押しつけるつもりで計画を立てている。面倒くさいことは嫌い故に。


【メンバーレポート】


 シャーリィさんの魔術、ルーン魔術に関してはネーデル国の禁書リストの一つとのことで詳細不明なので、今回はシャーリィさんの転生時におけるスペックに関しての実験レポートを取らせて頂きました。


《条件》

・今回は特別にギルドの協力を得て、室内での実験を行わせて頂いた。

・ギルドの建設物は天井まで18m。今回もしこの高さを上回った場合は測定不能とする。

・本人曰く、コンディションが良いとのことで夜間を希望していたが、ギルドの酒場の都合上時間帯は昼で行った。

・翼による滑空はギルドの建設物への配慮の都合で禁止。滑空以外のその他の活用を考えて実験を行う。


《測定結果》

・筋力(上部):測定器でパンチ力等を測定した結果、約1200kg台と転生使いとしては低めの数値であった。



・筋力(下部):こちらも同じ測定器で上段蹴りを試して貰ったところ、約3700kg台を叩き出した。この結果から恐らく彼女の転生は主に脚部を強化する特性を持っていることが証明された。



・速度:距離25mで測定したが、測定不能――規模が小さすぎて彼女の全力を引き出せていないと結論づけた。一応データを載せると、スタート時の一回の踏み込みで1.7秒であった。ゴールでピタリと止まった事から、ギルド内の物を破壊しないため力を抑えて居た可能性が高い(本人はギルドへの配慮が恥ずかしいのか、気恥ずかしそうに「そんなことない」と言っていたが)。

 何処か大きな空間で測定出来る機会があればその時に速度に関して測定する。


 追伸:一応書いとくけど、最終的には私が目を通しているから。だからつまり、気恥ずかしそうになんてしてないわよ! :シャーリィ



・跳躍力:こちらも測定不能であった。問題なく跳躍し、天井の埃を指で取って私の前で吹いて見せた。脚力のスペックもあって余力をまだまだ残している。

 条件を揃えるためにできる限り室内で行いたいが、この際野外での測定も考えて良いかもしれない。



・魔力放出:今回の実験で最も驚いたのは、彼女の魔力量の低さであった。本人曰く、「母は体の弱い人だったから、生命力はそこが私に受け継がれた」とのこと……肉体的には健康だが、その中身が弱いのは稀有でアンバランスと言える。つまり、不安を感じずにはいられない。何か理由でも無ければ先天的な病を疑うが……

 その次に驚いたのは、コストパフォーマンスの良さだ。ルーン魔術自体、自己完結していて魔力をほとんど使わない上に、彼女の独自の呪文、“depict(描写)”は魔力を鉛筆のように使う魔法で、消耗が全く無いのだ。彼女の生命力の弱さを全てカバーできているのは驚いた。禁書でなければ是非ともルーン魔術について調べたい……


 追伸:彼女の翼を試しに出して貰ったが、形状は不安定で明確な形を保てていない。彼女の生命力の弱さ故か、刃物による転生方法の都合上、出力が低いのか(そう考えると、首を切る仕草だけで転生出来るのは彼女の生命力の弱さ故、実質“瀕死”と肉体が認識しているのかもしれない……)問題は分からない。

 ただ、もしもあの翼が明確な形を持つほどの生命力の消費をしてしまえば、彼女の命が危ない可能性が極めて高いので、今はこの形で良いのかもしれない……



 記録者:アザミ


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 アザミ/アザミ


挿絵(By みてみん)


身長:163cm

体重:43.4kg

好きなこと:和風な物、料理、魔術媒体の実験

嫌いなこと:不必要に目立つこと、悪意

趣味:緑茶、骨董品集め、刀の手入れ


 転生者伝説に記録されている“獣人族”の生き残りである転生使い。種族は狐。本人曰く、大和撫子見習いとのことで、常に一歩身を引いて周りを立てる役割に徹している……が、ユウマの奮闘もあってその引いていた一歩を踏み出し始めている。

 魔法使いだが、今は衰えていて狐火程度の些細な魔法しか扱えない。その分を補うように、媒体を使った魔術を行使しており、その破壊力はメンバーでトップクラス。これもまた本人曰く、“必ず殺すと書いて必殺”とのこと。

 現在はシャーリィのメンバーに所属し、地域語に対する通訳者として、または強力な戦力を持つ転生使いとしてサポートする心強い存在になっている。


【メンバーレポート】


 彼女の魔法は……正直に言うと、恐ろしいと感じる代物が多い。言うなら武器のような魔術だ。なのでその切り札方面の魔術ではなく、仕込み杖に関する魔術のレポートを記載しようと思う。



・媒体の基本:三色の媒体――それに加えて一つ、恐ろしいものがあるが、今回は省略する――は、共通した規格で生成されていて、様々な武装に接続し使用できるらしい。主に仕込み杖、先折れの短刀、矢の先端など……今後も新兵器を開発します! と本人は意気込んでいるが、これ以上の性能が果たして要るのかは謎である。



・赤の媒体:“殺傷”の要素を強く持つ媒体とのこと。実際、この媒体を入れた杖から放たれる魔術は殺傷能力が極めて高く、偶々近くを歩いていたユウマにコレを見せたらビックリして二の足を踏んでいた。

 それぐらいにインパクトのある火力を持った“殺傷”の名に恥じない性能の媒体であるが、同時に強すぎて本人も気をつけて使わないといけないと用心しているらしい。



・青の媒体:“代償”の要素を持つ媒体。代償とは言っても黒魔術的な恐ろしいものではなく、霧隠れや変わり身のような、防御に特化した意味での“代償”とのことらしい。また水の状態変化の作用も持つため、思ったよりも使い方は多い。

 実際に使った場面はまだ見たことが無いが、仕込み杖で霧隠れに使うのが基本らしい。私のルーン魔術よりも準備が簡単なので、撤退が必要な時は頼りにさせて頂こうと思う。



・緑の媒体:“干渉”の意味を持つ媒体。主に植物に対して突然変異を起こさせて使うらしい。また、これもユウマには苦い思い出があるのか、コレを見たらそそくさと退散していった。少し面白い。

 ただ、植物への突然変異による干渉は、生態系への影響や魔術の存在の外部漏洩、また生命を結果的に殺す事になるため、彼女本人は余り使いたがらない……からといって、唯一の非殺傷魔術を避けて殺傷力の高い魔術を選ぶのは、何か変な気がするが……まあ、深くは考えないでおこう。



 記録者:シャーリィ


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 クレオ/クレオ

身長:185cm

体重:86.2kg

好きなこと:馬の世話、運転

嫌いなこと:堅苦しい雰囲気、かあちゃん(妻)

趣味:馬のブラッシング、罠猟


 シャーリィ達のメンバーを馬車などで運ぶ専属の運送業者。自身のことを“俺さん”と呼んだり、人に対して愛称やちゃん付けで呼ぶなど、見た目に対しておおらかな性格をしている。ただし、豪快さは見た目通りで人によっては喧しく感じるほど。

 転生使いでは無いため非戦闘員だが、魔法や異世界についての情報を解禁された稀有な例。ただし本人はその情報量に頭を抱えているし、万が一秘密を口外すれば物理的に首が飛ぶ契約をしているため、少々今の仕事に恐れを感じている。

 しかし、普段はそんな恐れは笑い飛ばし、今日も馬車を運転してユウマ達を助けている。因みに本人曰く、動物に好かれやすい体質で、馬車の馬四頭とは既に仲良しである。


【メンバーレポート】


 ……彼に関して何を書けば良いのか、正直悩む……けど、ユウマが「仲間なんだから書いてあげてよ!」と強い主張をするので簡潔ながら記載する。

 彼の年齢は47歳。少し驚くが、私と同い年ぐらいの娘がいるらしい。あと、妻のことを“かあちゃん”と呼んでいて、まあ簡単に言えば尻に敷かれている様子だ。運送業でその妻に色々言われない自由を感じてる一方、娘に会えない寂しさを感じているらしい。

 次に驚くことは彼の免許証だ。運送業には資格として免許証の概念があるが、彼は馬車、連結馬車、船、大型船、そして何処で得たのか蒸気機関装置の資格まで持っている。本人に聞いてみたら、若い頃に旅をしていたらその旅先で色々縁があって、なんやかんや手に入れたとか。……まるで説明になってないって今書きながら頭抱えているわ。蒸気機関はミストアイランド――北西の島国だから、そこで得たことは分かるんだけど……


 その得た資格の多さが、彼を私達の専属運送業者にギルマスが選択した理由なのだろう。正直、連結馬車と船の資格さえ持っていれば良いのに、過保護だと思う……でもまあ、私にも気さくに接してくれる良い人柄の人なので、その点ではギルマスにも彼にも感謝している。


 記録者:シャーリィ


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ