『私メリーさん、今あなたの後ろにいるの』
「私メリーさん、今×××駅にいるの」
初めはただのイタズラだと思った。
メリーさんの都市伝説なんて、本気で信じていない。そもそも人形を捨てた記憶なんてないし、持っていた事もないのだ。自分の所に来る理由がない。
「私メリーさん、今駅前の本屋さんにいるの」
しかし、こうして非通知からの着信が続くとさすがに嫌な気分になる。
いや、よく考えてみれば非通知拒否の設定をしていたように思う。
「私メリーさん、今△△△スーパーにいるの」
徐々に近づいて来る得体の知れない存在に恐怖が沸き上がり、スマートフォンの電源を切った。
――はずだった。
「私メリーさん、今あなたのお友達の〇〇ちゃんの家にいるの」
それだけ言って再び切れた電話。
背中を嫌な汗が流れた。〇〇は幼馴染の名前だ。慌てて○○へと電話をかけるが繋がらない。
「私メリーさん、今あなたの家の前にいるの」
あっさりと訪れてしまったタイムリミット。
都市伝説ではこの後どうなっただろうか。
再び、電話が鳴った。
「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
果たして振り向いたらどうなるのだろうか。
自然と喉が鳴った。
身体に力が入らない。
冬だというのに、嫌な汗が止まらない。
振り向くべきではないと分かっているのに、その意思を無視して身体が勝手に動き出す。
ああ、終わった。
振り向いた俺の目の前に、可愛らしい少女が一人、真っ赤な何かを持って立っていた。
「私メリーさん、あなたにこれを届けに来たの。
〇〇ちゃんに手伝って貰ったの。
手作りチョコ。
本命なの」
最高だった。
チョコもメリーも。