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異世界夢紀行  作者: 舞原倫音
第1章 夢守の帰還
9/15

第四夜 5

 思わず机の瓶の落ちた落下地点をたたいてみたけど、コンコン鳴るし、ああ板だよね。っていう普通の強度。

 うん、ええと…? なに、いまの?

「……。確か、部屋で安全に保管する、と宣言していたな。

 小瓶を割らないための安全(強制力)が働いた、んじゃないか?」

「強制力?」

「保管物が割れたら安全じゃなくなるだろう?」

 えぇ…?

「……そういう……こと?」

 瓶ではなく部屋に変化が出たってことは、「安全」が働いてるのは部屋であって小瓶じゃないと?

 ……。「部屋で安全に」って確かに言った。

 うん。だけど。……普通、こんなの想像しなくない?

 地球儀には創った覚えのない拡大縮小効果はなかった。

 それなのに、どうして部屋には作った覚えのない機能があるんだか…。

 確か曖昧な明言は曖昧な結果をって生むかもしれないって話だったから…。

「それってつまり、あたしの持ってる「安全」の認識が曖昧だ、ってこと?」

「かも知れないな。」

 認識…ね?

 夢守の能力ってチートだと思ったけど、万能では…ないんだなぁ。

「……どういう安全か調べた方がいいと思う?」

「……。」

 あたしの問いに、

「そうだな。何が後に響くかわからない。

 把握できる事柄なら、それは把握しておくべきだ。」

 ウルは少しだけ考えこんで、一つの答えを出した。

「おっけ。じゃあ、ウル、」

「なんだ?」

「危ないから、動かないでね。」

「あ、あぁ……?」

 ウルに一言指示をして、あたしはクロキモノが入ってる小瓶を思いっきり足元へと投げつけた。

 投げた理由は、小瓶が強い衝撃を受けた時に、割れるのか、跳ねるのか、転がるのか。それとも違う何かが起こるのか。

 ……それを実演して確かめようとしただけなんだけど。だってさっきの見た感じだと多分…っていうかきっと、小瓶は割れないし。

「想!?」

 あたしのした行動にウルが驚いてるけど、いや、だってさ?

 どういう安全か、ってこういう事…だよね?

 あ。やっぱり、というか。

 結果として、その小瓶は跳ねた。しかも真上。下にのぞき込んでるあたしの顔に向かって。

 なにこの小瓶、スーパーボール状態? って違うか。床がさっきと同じくぐにゃっとへこんだわけだから…部屋が弾力のあるトランポリン状態?

「危な──! ──っ」

 あたしの視界をピンクの風が遮って、小瓶が消える。

 ……ちがった。

「いきなり何をしてるんだ!!」

 ピンクの風じゃなくてウルだった。

 目つきがすっごく鋭くなってる。これは、うん。……怒ってる。

「実演が一番かなって…」

「怪我をしたらどうするんだ、危ないだろう!?」

「でも試さないとどう安全かわかんないし…」

「じゃあ俺が…!」

「ウルの手足じゃ投げられないでしょ?」

「机の上から落とすとかあるだろ!」

「それじゃ勢いたりなそうじゃん?」

「……。」

「ごめん、ウル。痛かったんだよね…? 大丈夫?」

 あたしへの抗議に起き上ったウルの体の下には小瓶がある。

 つまりウルがした行動は、あたしにぶつかりそうになった小瓶を身を挺して受けてくれたって事…、だよね。

「あの程度の衝撃、俺はいいんだ! 想の身が危なくなる事はするんじゃない!」

「ごめん。……でも、調べた方がいいかは聞いたよ?」

「こんな調べ方するとは思わないだろう?!」

 ……まぁ、そうか…。ごもっとも…。

「ごめんなさい…。」

「……、わかってくれればいい。頼むから進んで危ない事はしないでくれ。」

「うん、まぁ…気を付ける。」

「ああ。」

「ウル、守ってくれてありがとね。」

「想を守るのは、俺の誉れだ。気にしなくていい」

「でも…」「だが……、」

「礼を言われるということは、こんなにも嬉しくある事なんだな。」

 そういって、ウルは満面の笑みを浮かべた。


     *  *  *  *  *  *


「それはそうと、安全についてだが、確認はもういいか? 想の見解は?」

「ん、そだね。とりあえずは部屋がトランポリンみたいかな? って感じ」

「トランポリン…。──。なるほどな。

 じゃあ俺達が普通に過ごし管理する分には割れるような事はないな」

「かな?」

 まぁ多少落としたところで、さっきの叩きつける衝撃よりも弱いだろうし。そうなのかな。

「ああ。確認としては十分だ。

 それより想。そのクロキモノを調べたいんだが。」

「ああ、モノクルで? 勿論調べていいよ。

 そういえばクロキモノなんだけど、二種類あってね。

 違いが気になるから、みんなからも話をききたいんだけど…」

「種類?」

「うん、ほとんどが黒い結晶なんだけど、一つだけ色が違くてね。」

「色が?」

「うん。赤いんだよね。」

「赤いクロキモノ…」

 あ、ちょっと複雑そうな顔してる。

 そうだよね、黒い色をクロキモノだと嫌悪してたもんね。

「ま、とりあえず調べてみてくれる?」

「あぁ、勿論だ。」


     *  *  *  *  *  *

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