第ニ夜
ザァっと、何かが揺れる音が聞こえた。
寝返りをうった自分の下に、いつもの毛布の肌触り。
うん、そう。この肌触り。あぁ、……幸せ。もっと寝てたい。
でも薄っすらと開いた瞼の先が、なんか眩しい。…もう、朝なの?
こんなにぐっすり寝れたの久しぶりかも。すごいね、お守りとカモミール。両親には感謝しないとね。ふぁ…と大きく出る欠伸に右手を軽く覆いつつ、体をおこして目をこすりながらあたしは起きた。
「……。」
スイマセンダレカコタエヲクダサイ。
空に浮かぶは蒼い月。
──しかも前と同じで二つある。
踏みしめたるはピンクの大地。
──あ、違う。これあたしのお気に入りの薄手の毛布じゃん。
洗濯してたんじゃなかったの?
視界の先には…見覚えのあるような、ないような。一匹のピンクの動物とその奥に広がる広大な草原…。
──もしかしてこれ昨日の、夢…の…?
いや、まって? そもそも夢って日を跨いで続きをみれるようなものだっけ?
ああ、もう。頭が痛くなる。「どこなのよ、ここ。」と無意識に呟くあたしに、
「ようこそ、夢守様。貴方をずっと、お待ちしておりました。
ここは名も無き夢の欠片の一つの世界。どうかお好きなようにお呼び下さい。」
目の前のピンクの動物が、昨日の黒い動物の声で答えてくれた。
「ええと…」
「ただ、出来れば──どうか、暫くは、お声を発せず私の話を聞いて下さると嬉しく思います。」
ええぇ、しゃべっちゃだめなの? 聞きたいこととか聞けないの!? いや、でもわざわざ敵対する事ないか? 昨日みたいな敵意は感じられないし。少しだけ考えてあたしはコクリと頷いた。
「──! ありがとうございます。
まずは…。──。先日は夢守様とは知らず無礼な振る舞いしたことを謝罪します。
今は訳あってこのような姿…をしておりますが…。──。先日、ここで夢守様と出会った黒い羊は私です。来訪された夢守様をクロキモノと思い込み、あまつさえ敵意を向けるとは…。
──。大変…申し訳ございませんでした。」
彼は時たま考え込みながら…あたしに謝罪を述べてきた。ふぅん、きのうの動物は君なんだ? イメチェンでもしたの? だって印象かわりすぎでしょ。
に、しても……なんか誰かと勘違いをされてる気がするんだけど。ゆめもり様って誰なんだろう。聞きたいけど喋るなってことは聞けないし…。申し訳なさそうにすがるような視線を向けられ続けるのも居心地悪いし、取り敢えず頷いて気にしてないよ。と意思表示をしてみると、表情がパッと明るくなった。あら、かわいい。
いや、まって? かわいいに誤魔化されてスルーしそうになったけど、謝罪に混じって今何か大事なこといってなかった? 黒い…羊? え、嘘羊? 羊なの、これ? いや、たしかにその毛ウールっぽいかもしれないけどさ? いや、でも羊ってしっぽこんなに長かったっけ? 記憶の中のあたしの羊はまんまる尻尾の持ち主ですが!? それにこんなにちっこくない…んだけど。……あれ?
そんなあたしの心境を察しずに、彼…だよね? 今は私って言ってるけど、昨日は俺っていってたし。は、言葉を続けた。
「それで──あの、夢守様は夢守についてご存知でしょうか?」
しらないです。意思表示に首を横にふってみる。あたしに使う時は様をつけつつも、単語自身には様がつかないってことは…「ゆめもり」ってのはだれか個人をさすわけじゃないってこと?
「そうですか…、…本当に…偶然の…。心より夢守様に感謝致します。
つきましては夢守についてご説明させて頂きたいのですが……先に申告させていただきます。
この説明にはどうしても私の私情が混ざります。私情とはいえ他者を蝕み傷つけて、夢守様の名を落とすようなものでは決してないと、ちっぽけな私の命ですが、これに誓ってお約束させて頂きます。ただ…どうか、どうか──この偶然を必然に変え、私…達を助けて頂きたい。先日の貴方の来訪で、少しの時間の猶予が出来ました。しかし…きっとそれは応急処置のようなもので、その時間はそれほど長くはないでしょう。夢守様の力であれば、その全てを救済して下さる。…と私は考えています。」
彼はそう言うと、呼吸を深く一つした。
え、ええ? なんか震えてる? いや……なんか目に涙うかんでない? えぇぇ。なんで泣いてるの!?
「しかしながら私のような者の私情で夢守様の手を煩わせるなど…本来であれば許されないのもまた事実。本来、あなたにその責はありません。煩わしいと思われたなら…このまま私の話は聞かず、その依り代を持ち、帰還なさるのが…筋でしょう。」
そういうと、彼の視線はあたしの足元に敷かれた毛布をじっとみた。
依り代って、この毛布?
ええと…。
あたしの毛布は依り代?で、泣くほど頼みたい事があるけど無理強いする立場じゃない。と?
とりあえず、いくつか質問したいんだけどどうしよう…。
取り敢えずしゃべりたいんだけど! というのをジェスチャーで伝わらないかためしてみる。
「ご質問、ですか?」
おお、伝わった。コクコクっと首を縦に振ってみる。
「私に対する疑問形でしたら──恐らくは。
必ず疑問形でのご質問をお願い致します。」
ぎ、ぎもんけい? いや質問だから疑問形にはなるとおもうけど、うーん? なんか厄介事のフラグがどんどん立ってない?
でもこんなに泣きそうな目、してるのに放っておくのも、ちょっと気分がよろしくないし、どうしたもんかね…。
「ええと、じゃあ…貴方は最終的に、私にさせたい事があるって事で間違いない?」
「させたい…いいえ。して頂きたい事がございます。」
…同じじゃないの?
「それは、えっと……貴方の意思に従えと?」
「いいえ。口は…意見は出させて頂きたいです。ですが、決断は夢守様の意思でと考えております」
「それは……無理強いはしない、ってこと?」
「無理を強いる権限を私は持ち合わせておりません」
えー、なにそれ微妙な言い回し。権限あったら無理強いも辞さないって裏読みするのはちょっと性格わるいかなあ?
まぁいっか。きいておこっと。
「……権限があったら、無理強いするの?」
「……。」
……あ。だまった。悩んで、る?
「──いいえ。例え私に権限があったとしても、私の望みは、波風を立てることじゃない。権限の有無に関わらず、無理強いはしないとお約束します。」
あらま、きっぱりと言い切った。
「んーと、じゃぁ、今から質問することに、嘘偽りはないって約束してくれる?」
「私の命でよろしければ、これに誓ってお約束致します。」
いや、命はいらないんだけど。さっきから命、命って物騒だなぁ…。
「この世界って現実、なの?」
「──。私にとっては現実ですが先程もお伝えしたように、ここは名も無く無数に存在する世界の一つ。
──夢守様方、人の種はこの世界を含め、総称として夢と呼んでいる場所になります。」
…つまり、このこには現実で、他にもいっぱい存在してるけど、あたしにとっては夢ってこと?
「昨日の黒い動物──羊は本当に君で間違いないの?」
「──。先日の黒い羊は私で間違いございません。」
んん? なんかひっかかるような。……ああ。
「先日?」
「──私の頂いた知識から察するに、私が夢守様とお会いしたのは昨日という言葉の表現ではないと思われます。」
……昨日じゃない。それは、つまり…時間の流れが異なる可能性?
「私はその、君からみてゆめもりで間違いないの?」
「間違いない、と確信しております。」
「そう思った理由は教えて貰える?」
「──お力をお貸し頂けるならその時に。」
…ゆめもりについてはだめか。じゃあ…
「依り代、というのは?」
「先日夢守様がお忘れになったその布地にございます。」
いや、それはなんとなく解ったってば。そうじゃなくって…
「これを持って帰還するのは、どういう意味を持ってるの?」
「……。」
あああ、泣きそう!? なんで、どうして!? 涙目やめてよ!?
「……。夢守様とこの世界を繋ぐ物です。
事実、今回夢守様はその布地の上にご来訪されました。
私の考えを申し上げていいのなら──」
ちらり、と視線を向けてきたのでコクリとあたしは頷いた。
「それを持ち、帰還されるということは──、…その繋がりを無くす事だと考えます。」
ああ、うん。わかった。そんな涙目にならないでよ。
つまりこれ、現状召喚魔法陣みたいな扱いなのね。なるほど。
…じゃあ、あんまり近くに居ないほうが安心するかな?
涙目ですがるような視線を向けられ続けるのは、ちょっと精神的によろしくないし。うん、ちょっとこの上からどいておこう。
ちょっとだけ考えて、毛布から少し離れた位置に座りなおすと、彼は明らかに安堵したような表情をした。
……羊なのに君表情豊かだね…。
「で、ええと。私達っていうのは誰のこと?」
「私を含め、この世界全てでございます。」
ええと、うん。達の範囲、ちょっとでかくね?
「君があたしに望む事は、あたし自身に害をなす?」
「……わかりません。」
「わからない? それはどうして?」
「夢守様が何を考えどう感じるかで変わるような不確かなものに、私は答えを持ちません。」
……ふむ? このこが害じゃないと思っても、あたしが思えば害になる。っていうことか。なるほど?
「じゃあ君があたしに望む事、──私情の中に、あたしの身体が傷を負う様な意図はある?」
「……。──!? ございません!!」
うあ、声でかいって。あたしは彼の出した大声に思わず耳に手をあてた。もーちょっと音量さげてー…。
「私達をお助け頂けるのなら、命にかえてもお護りさせて頂きます!」
気合、入ってるね…。あたしが彼のお手伝いを決めたら、護衛犬ならぬ護衛羊が手に入るのか…。いや、でも羊ってちょっと…なんか、たよりないような…
「あなたが欲しがってるゆめもりの力っていうものは、あなたやこの世界の他の人は持ってないの?」
「この世界に住むもので、持って生まれた者はおりません。」
代用不可、かぁ。ああ、これやっぱり厄介事だ。しかも何のフラグが立ってるのかもばっちりみえる。あたしにとっては夢だって話だけど、でも、うん。…きっとこれ…
「最後に──」
そう言って、じぃっとあたしは彼をみた。
「あたしが決めた決断は、疑問形以外で伝えてもいい?」
「──…はぃ。」
びくっと彼が緊張するのが見て取れた。
「条件つきでなら、手伝ってあげる。」
「本当ですか!? ──…救世主さまあああああああああ!」
そういって、彼は泣きながらあたしに突進してきた。
救世主って、やっぱりゆめもりってそういう系かーぃ…。
* * * * * *
──彼は泣いた。そりゃぁもう泣いた。
彼が飛びつき陣取ったあたしのパジャマのウエストあたりが、濡れてしわっしわになるほどに。話しかける時は疑問形で。といわれているので、泣かないで。とも言えず、わぁわぁ泣く彼が少しでも落ち着くよう、撫でる事くらいしか出来なかった。
あたしにとっては夢だけど、彼にとっては現実らしいから彼はきっと色々と、思い詰めてたんだろうなぁ…。
「……っ、み…ぐるしぃ…とこっろぉ、みっせっ、……」
ずーっと泣いてた彼が話しはじめた。
ぽんぽん、と背中? を軽く叩いてあげると、鼻をスン、スン、っと啜りながら、ぐぐぐっと、目を瞑った。
偉いね。……泣くの、我慢してるよ。
「じょ…け…は…」
じょけは? ……ああ。条件か。条件つきで、って言ったんだった。
「んっとさっきの言葉を嘘にしないでほしいかな? って事と、あと、君、前にあった時は俺って言ってたよね? 今は私とか言ってるし、きっとすっごい作ってるんだよね?
昨日の今日で態度ちがうし、ちょっとその話し方に違和感が、ね。
あたしとしてはできれば友達みたいな感覚で、素で話して欲しいかな?って。
それから──疑問形以外の会話をしたいかな? って。このみっつってむずかしいかな?」
……疑問形の会話が割と辛いです。語尾をちょっとあげて、相手に聞く感じにすれば多分大丈夫なんだろうけれど…。
「嘘には、しません。偽り…ません。
でも…ほんとに、よろしい、のですか?
…友達感覚の会話…を?」
「え、だって。何かやって欲しい事があたしにあるんだよね?
力目当てに頭を下げてもらって利用されてる気分になんかなりたくないよ? 同じ目線で意見をお互い言い合って、納得した上で、友達としてなら力になってもいいんじゃないかな? って思って。まぁ、だからって一方的な押し付けや、力を貸さない事での暴言三昧はこまるから、さっきの会話を嘘にはしないで欲しいって思うんだけど?」
そういうと、彼はスンっと、鼻をすすった。
「──ぁり…がとう、ござい、ます。」
続いて彼はぴょんっとあたしから遠のいて深呼吸を何度か行った。
「では、夢守の説明、をさせて、頂いて、それでも、良いと言っ、て、下さるのなら…、是非お願いします」
彼はペコリとお辞儀して、説明しますね、と会話を続けた。
「まず夢守とは、夢を守る、と書きます。」
夢を守る…で、夢守ね? ふむふむ。……て、いや、まって。日本語なの? えー、だって夢なのに? この夢が日本人限定とかそういうくくり?
いや、もしかしてゆめもりってあたしが日本人だから日本語として認識するだけで、英語圏の人だとドリームなんちゃらーって脳内変換されるのかも? 多分ドリームプロテクトとか書いたって、ゆめをまもるって書くことになるもんね? 夢語なんて聞いた事ないし。
「あの、宜しいですか? 夢守様?」
あ、しまった。考え込んでると彼が声を掛けてきた。
指で○をつくって頷いて、聞いてる、聞いてるよっ!と、意思表示。っと。
「ではまずは、現状をお話します。
……先日、夢守様がいらした時、この世界の月は紅く輝き、この世界の終焉が近い…と警鐘を鳴らしておりました。
しかし──、あの日偶然にも来訪された夢守様が、夢守様と私の身に宿ったクロキモノの浄化と、さらには、私に言葉とこの──色、を授けてくださいました。
また、警鐘であったあの紅い月、原因は不明ですが、今は一時的ではありますがあのように、正常な蒼い月へと戻っております。……その蒼さは、夢守様の帰還と、そして今回の来訪で、より深くなったと認識しております。」
「……は?」
身に覚えが、ないんだけど?
「それからこれが──夢守様であると確信をした事例なのですが…。夢守様は、私に意識が戻った際に、話し相手が欲しいと呟かれた事や、御髪の色がピンクであれば──と宣言された事はお忘れ……でしょうか?」
……それ──は、言った…? 言った…かも?
「あの、できればお声を……ださないように…とお願い申し上げたのは…その、出来れば、今もまだお出しにならないで頂きたいのですが…、夢守様のおぐしを見ていただければ──」
──…髪?
「現状の把握をして頂けるとおもいます。」
といわれて、一房すくってみると、見慣れた黒髪ストレートはどこへやら、見事に自分好みの薄桃色。いやさらっさらのストレートではあるけどさ。……て、
「──ええええええええええええええ!?
鏡っ、鏡、ちょ、ねえ。どっかにないの!? 顔が確認できる程度のものでいいんだけど!」
思わずきいた、いや、だって。ねえ? ずーっと反対されて染色するなんて出来なかった。
だからちょっと、想像つかない、ねえ、本当に……黒髪以外のあたしがいるの?
だけど、うん。鏡が欲しい、と願うべきではなかった…のかもしれない。
身体に少しの違和感を感じた後、そよ風がふいた…とおもったら、足元に手頃なサイズの手鏡が転がっていた。
「……。そのように──夢守様のお言葉には力が宿り、この世界に変革をもたらす…と言われております。
夢守様、どうか、どうか私達をお助けください。
消え行くこの世界の警鐘を取り除き、クロキモノを浄化し、消えた民、全てをお救い頂きたいのです。」
彼の主張の肯定を自分の言動がさししめし、更に続いた彼のトドメの一言に、あたしの思考が一瞬止まってしまったのは……言うまでもない。
* * * * * *
──行動・発言・決断には、気をつけなさい。
ブレスレットをもらった時に、お父さんが言ってた言葉が浮かぶ。
決してこういうケースを想定していたわけじゃない…とおもう。
けど…うん。ドウシテコウナッタ…。
目の前には奇妙な羊がいる。ピンク色の羊毛を持ち、言葉を話す。
そんな彼があたし以外に頼れない、と訴えてきた。
困っている人は自分の出来る範囲でお手伝いをしてあげなさいって言われて育ったから、それがあたしだけにしか出来ないなら、助けてあげてもいいかなぁって思った。嘘は言ってなさそうだったし、涙を堪えるほど考え、思い詰めた上での決断だったというのは簡単に見て取れたから。
それに彼はここを、あたしにとっては夢だ、と言った。だからあたしの生活には支障ないだろうって思った。
うちのお父さんは小説家…なんだけど、…ほらファンタジーの世界とか魔法とか、異能力とか、ああいう系のも書いていて、それがまた、あたしの好みにドンピシャだったから小さい時からこれでもかというほど色々読んだし、漫画やネットやアニメにゲームがあふれてるこの時代、そういう知識の入手には事欠かなかった。彼が話すこの夢の設定も、そういう設定なんだーって解釈をしたら違和感とかはなかった。だって全部夢だしで片付くし。むしろお手伝いをするって伝えたら、教えてもらえる能力は超能力みたいな力かなあ? とか、それとも魔法…属性魔法みたいな力かなぁ? 助けてってことだから、もしかしたらとんでもない回復魔法が使えたりとか。ワープとか、空とか自由自在に飛べたりするのかなぁ? って内心、ちょっとわくわくしてた。
うん、だけどさ?
明言したら事実になるとか、さすがに…どうなの?
ちょっとチートすぎやしませんか?
救うどころか、いかすも殺すも自分の発言、声一つ。まさにつるの一声ってやつ?
…そーりゃあ、嫌がるよ夢守について説明するの。
言葉一つで生殺与奪権が確定します、…なんて、相手が悪人だったら恐怖政治されかねないし。
……そんな立場の人間から友達みたいな会話がしたい、なんて言われたら…うん。まあ。そうだよね。信じられずに最初はやっぱ、疑うよね。ほんとにいいの? って言ってたもんね。
だから、うん。そんな目でみないで。泣くのを我慢してすがるようなそんな目。ああ、もう…。何も悪いことしてないはずなのに、何なのこの罪悪感…。
とりあえず……うん。呆けてた思考も大分戻ってきたし大丈夫。あたしの頭は動いてる…はず。条件付きで手伝ってあげる。ってきっちり明言しちゃったし、あたし好みに偏った知識での助けでいいなら、助けてあげる。だから、だからさ…。
そんな捨て犬…いや捨て羊か…みたいな目で見ないでよ。
涙の浮かんだ目で見上げてくるとか反則だってば。
「……ええと…」「はい!」
とりあえず、話をすすめたい、んだけど、何をからいえばいいのか言葉につまったあたしの声に、彼は勢いのいい返事をしつつ姿勢をぴしっと立て直す。
……うん、気合、はいってるネ。ただ、うん。ごめんよ、ちょっと…うん。言葉を選ばせて。明言は駄目、明言はダメ、明言はだめ…。
「ええと……」「…はぃ」
彼は再度言い淀んだあたしの声に再度答えた…けど、うん。ちょっとしょんぼりさせちゃったね、ごめん。……どうしよう……、そうだ。確認しておこう。
「ええと、さ。貴方の…大切にしている世界を救う夢守は、あたしでいいの?
多分…夢守って、一人をさす言葉じゃないよね?」
「本来夢守様は、僅かに世界を改変し一処には留まらずに夢を渡り歩くそうです。
そして本来であれば、──接触を試みたり…お引き止めをしてはいけないとされています。
その為、同一人物であると確認をした者はおらず、お察しの通り、不特定多数に対し使っています。
だから…、この世界だけを救ってくれる夢守は存在しないのです。
私は貴方以外の夢守様を存じませんが…、でも…。お会いしてから貴方はずっと…温かかったから。私が敵意を向けたあの時ですら、優しく接しようとしてくれました。
だから、もし、自分の意思を通して数多の中の誰かを選んでもいいとお許しがあるのなら、──私は、貴方を選びたい。」
「……そ。」「はい。」
お願いします。と聞こえたきがした。……彼はあたしでいいらしい。
……これがほんとに夢ではなくて、現実ならば。選択間違った気がしなくもない。
でも、でもさ? あたしにとっては夢なんだから……いいよね?
「じゃあ、とりあえず。言葉、戻して?」
これは明言じゃなくあくまで疑問形。
友達って約束だもん。明言実行、それも強制…なんて。それ友達とは言えないもんね?
「それと、さっきの取り決めの一部を変更して貴方に制約をつけさせてもらいたい…んだけど?」
「──。この世界が助かるなら、俺への制約は些事にすぎん…本望だ。」
……、ああ、やっぱりそっちの口調が…素、なんだ?
「──宣言して、欲しい。」
え、宣言? …あー、疑問形じゃなくきちんと明言として形にのこせって? 出来れば強制じゃなく自発的にしてほしいような…
さて、どうしよう? 抜け道っぽいのは思いついたけど。
とりあえず、うーん。イメージ的には運動会とかの選手宣誓! …みたいな、かんじ?
いや、まぁ観客なんていないし、手をピシーっと上げたりとかは、さすがにしない…けど。
「では、宣言する。」
…あれ? そういやお互い名前、しらなくね? …まあ、適当でいっか。
「私は、この者の現時点までの発言に嘘がない場合に限り、今後、この者の願いに耳を傾け、必要があると判断をした場合には夢守の力を行使する。
この誓いはこの者が先程自ら掲げた制約を、偽りにしない限り続くもの事とする。
ただし──」
あ、ビクッとこわばった。そんな怯えた目しないでよ本望っていったのだれよ、…まったく。先が思いやられる…。
……でも、まぁ、あの取り決めは、きちっとかえておきましょうね?
「この者が主張した、命の誓いを私は望まない為、その誓いは無効とし別の対価を指定する。
私がこの者に力を貸す期限は、制約が偽りとなった場合の他、この者が泣いた、と私が判断を下した場合にも終了となる事とする。
また、この者が私と対等な友であろうと振る舞う言動、この者が泣くのを我慢する行為、そして、私との雑談や、夢守の力への相談事等、二人で言葉を交わしている日常会話全般、自ら掲げた制約を守る為の自身の言動には、私の夢守としての力は決して介入してはならない。
最後に、この制約はこの者の同意をもって成立とみなし、同意が得られぬ場合は私の帰還をもって破棄とする。」
あ。大口開けてぽかんとしてる。おーい、もしもーし? 彼の眼前でパンっと軽く手と叩くと、その音に彼は表情を引き締めた。
「同意は?」
「ど、同意…する」
絞り出すような声で答えた彼は 信じられない。という視線を向けてきた。そして彼の同意に呼応して、あたしの中から何かが抜け出る感覚がして、そして…世界を風が揺らした。
……この感覚は…もしかして…いやもしかしなくても。……なるほど、ね? これがあたしの払う対価…。
安眠が大分遠のいた気がするけど、でも対価を払ったのはあたしだけじゃないし、それにあたし自身が面白そうだと思ってしまったんだから、この対価は甘んじて受けましょう。
……にしても。
彼は何を差し出して、何を失うと想像してたんだろう…。未だに焦点の合ってない視線をあたしに向けてる。
予想外かな? まぁ、そうか。普通は泣くな。なんて言われるとは…思わないか。
だって仕方ないじゃんか? 君の泣き落としはあたしにはちょっと凶悪そうだし。
それに努力もせずに願いが叶う…なんて状況もちょっと、しゃくだしね。
友達として接してくる口調も態度も、泣きそうになった目から涙をひっこめる事も、力を貸すために守ってもらう制約も夢守の力は助けになってくれないからね?
ちゃーんと自分で努力してあたしの友達の座、勝ち取ってね?
──こんな感じで。夢を紡いでの異世界構築、……これ、割となんでもありなんじゃね? 生活が始まった。
* * * * * *
とりあえず。名前を知らないままなのは今後不便そうなので、意識が戻ってきた彼に名前を聞いてみる事に。
「ねぇ、あたしは想。想像の想って書くの。君はなんて名前なの? あ、あたしの事は想って呼んでね。」
「名前? ……。ないな。あえて言うなら、羊だ。」
彼は少し考えた後、さらりと言った。
え、名前ないの? 羊って、だってそれ種族じゃないの?
「ああ、」
彼はあたしの顔をみて、察してくれたのか、説明を続けてくれた。
「この世界で生まれた者に、……。ありがたく想と呼ばせて貰う。
想の世界の様な親というものは存在しない。
俺の生まれを例に説明するなら、俺は人の種が数えた羊の中の一匹だ。」
「……数えた?」
「人の種はよくやるんだろう?
眠れない時、羊が一匹、羊が二匹…と。」
えぇ…、あれなの? いや、やるけどさ、…。マジで?
「この世界に住む者は、俺の様な羊が大多数を占めている。
俺の兄弟羊の、──。集落、があるが行ってみるか?」
「え、そんなとこあるの? あたし君以外見たことないよ?」
「勿論ある。言っただろ? 俺達を救って欲しい…と。
ただ…、危険があるかもしれないな」
「クロキモノ?」
「……ああ。」
「でもあたしなら治せるんだよね?」
「──。治せるだろう、な。──だが、俺のクロキモノを浄化した時、…想は苦しそうだった。
想への負担は大きいかもしれない……」
そういって彼は少しだけ、目に涙をにじませ、そのまま沈黙してしまった。
苦しい=あたしを害すると判断したのかもしれない。
確かにあの対価…、お祓い?するたびにあれが来るのはあたしとしてもちょっとさけたい。
でもあの時あたしは夢守の事を知らなかったし、言葉を選んで使ったら、負担は軽くなるかもしれないし?
それには一度試してみなくちゃ判断できないし、何より明言しちゃったし?
フラグを拾って物語を勧めてみるべき。…だよね?
だけど、うん。君のその涙目はよろしくないね?
彼はあたしをじぃっと見つめてる。
あたしは彼をじぃっと見つめかえして、自分の目を人差し指で二度、三度。ちょいちょいっとさしてみる。
「──!」
彼はハッとした表情をして、一瞬考え込んだ後、
「すまない、目から鼻水が」
と、ちまっこい前足で目をこすりつつ、鼻を啜った。
* * * * * *
「んじゃ、案内を頼むとしてさ?」
彼はあたしの一声に、パァっと綺麗な花を咲かせた。
「でもその前に、やっぱり名前がないと不便なんだけど?」
「──。羊でいい。」
「いや、住人がほとんど羊なんでしょ? 紛らわしいからそれはヤダ。
なんかないの? 呼ばれてみたい名前とか。」
「ないな。──。だが、くれるなら名乗ってもいい。」
丸投げか…!
えー? うーん、君泣いてるイメージしかないんだけど。
なみだ…ルイなんてつけるわけにはいかないし…、彼の印象は、ドピンクのもこもこウール、涙目パッチリうるうるお目々、この世界を救いたいというまっすぐな意思──。これくらい、だよね?
んー… あ──…じゃぁ、これにしよう。
「ウル…、とかどう?」
ウールのウル、うるうるのウル。そして…彼が成長し世界を潤せる存在になるように期待をこめて、ウル。
え? 潤すは……「うるお」すじゃないかって? ウルオってダサいし「お」は却下します。「お」なんて文字は、最初からそこに居なかった、うん。
「ウル、か。じゃあ俺は今からウルと名乗ろう。……想、」
「うん?」
「──ありがと、な」
そういってウルは、嬉しそうに微笑んだ。
* * * * * *
──彼は走った。そりゃぁもう必死に。ゼイゼイと息を荒げつつ、てふっ、てふっと。あたしを故郷?へ案内する為必死に走った。
ちまっとした四本の手足を必死に動かしあたしの前を走るウル。そんな彼の首あたり?には、マントのように縛ったあたしの毛布。
彼は、あたしが依り代を持つのを嫌がった。いつ帰還するか解らないから、事故って持って帰らないようなるべく近くに居ないで欲しい。と主張した。
「でも移動するなら持ってかないと」と言ったあたしにこうして運ぶと、彼は示した。
彼は走る。身の丈に合わない毛布をマントの様にたなびかせ、そして同時に引きずりながら。
彼が走るそのたびに、毛布が土と草にまみれてく。あたしはボロボロになっていく一番お気に入りだった毛布に視線をやりながら、その毛布を踏まないよう、ゆっくり歩きながらついていく。一度ミスって踏んでしまい、走ろうとしたウルが巻き添えになりビタン!と地面に叩きつけられた為、再犯防止に距離を広めに取りながら、あの毛布、どこで買ったんだっけなぁと、思いをはせて…。ちくしょー…。
「……ねぇ、ウル。抱っこしようか?」
「断る」
「じゃあせめて、何か乗り物でも出してみる?」
さっきの鏡みたいに、言えばきっとでてくるんでしょ?」
歩いてるあたしの疲労はともかく、ずっと走りっぱなしのウルは辛そうに見える。
案内しようと必死なのはわかるんだけど、正直、歩幅が違いすぎて。ていうか歩幅せますぎやしませんか?
犬とか猫とかハムスターとか、もっと機敏に走ると思うんだけど…
これなら、そう、チャリンコとか欲しいかな。ウルを籠にでもつっこんで労力もなくサーッと移動できちゃうような。
「──。不要だ。俺への配慮はいらん。使う力は最小限がいいだろう?」
「えー…。でもさ? 救助、なんでしょ? 少しでも早いほうがいいんじゃないの?
現実の世界でもゲームの中でも、災害や敵襲は早めに対応すると被害が減るって認識があるし、一度出しちゃえば乗り物はずっと使えるし、メリットの方が大きくない?」
「そう、か。──。そうなんだな。
必要だと判断したなら、……さっきみたいにビシっと、頼む。」
「んじゃ、頼まれます、えーと……、え? ──…さっきみたい、に?」
「俺との会話を世界がどこまで会話だと解釈するかわからんからな。
望んだ変革が曖昧なものだと変革した事実に気づかない場合だってある。
宣言としてキッチリ差をつけておけば事故も減るだろう?」
……まじですか…。あの時手、上げて無くてよかった…。
で、ええっと…欲しいのはチャリンコみたいなやつなんだけど、普通のだと多分不便が出てくる…よね?川とか谷とかあっても困るし、空に浮ける機能は欲しいかなぁ。そうするとタイヤなんて意味ないし、タイヤがないスクーターみたいな形のほうがいいのかなぁ。……うん? あれ? 空に…浮く…? いいのあるじゃん、うん。あれでごろごろしたい。あれにしよう。
「では、宣言する。
いでよ、私とウルの意思に従う乗り物──空飛ぶ絨毯よ!」
自分の中から何かが強く引っ張られる感覚がする。
なんとなく正体がわかったせいか以前の様な怖さはないけど、だけど、…あぁ、まって。
意識が、世界が、…感覚が遠く…遠ざかっていく……。ここ数日で把握した目覚めてしまう前の感覚。
まってあたしの空飛ぶ絨毯…、 帰る前に、出した絨毯に乗ってみたい。
せめてひと目み、て…か、ら…
──本日のメイン構築、乗り物「空飛ぶ絨毯」獲得。
* * * * * *
第二夜・裏
──数時間程、時を遡り現代。
部屋のドアから二つの影が想の部屋を見ていた。
視線の先には月明かりさす無人のベッド。
「どうかしら?」
「ああ、眠ってしまったようだ」
「あの石は…?
「念のため渡しておいたよ」
「そう…」
「あの石と、僕が夢守としてあの子にあげた名前が…今後、彼女を守ってくれるといいんだけどね…。」
「後悔、してる?」
「まさか。そうならないよう、私達は知恵を絞ってきたじゃないか。
あの子は私達と過ごしたあの子のままだよ。……まぁ、私が構いすぎてしまったせいで、多少ひねくれさせてしまった所も勿論あるけどね。
だって仕方ないじゃないか、あの夢が現実になった、だなんて。
私はあの子が居るだけで、毎日が幸せだ。後悔を感じる要因は、一つもないよ」
「えぇ、そうね。私も毎日幸せだわ。
私達があの子の親になって過ごした時間は変えようがなく現実、ですものね。」
──行動・発言・決断には、気をつけなさい。
我が子を案じ示された父の真意に想はまだ、気づいていない。
* * * * * *
「ははは、面白そうな夢を見たね。想の次のブームは異世界創りか。
そのネタでパパも新作を書いたら想は読んでくれるかい?
むしろ想を主人公にして書いてしまおうか、うん、いいね。想が主人公なら私の筆も進みそうだ。」
「えええ、それは恥ずかしいよ、やめてパパ」
あの後やっぱりというか、予想通りに目が覚めて、軽くお風呂でシャワーでも…と移動をしたら、台所の明かりが付いていた。覗いてみるとパパがコーヒーをお供に構想メモとにらめっこ中。
我が家はこの父の創作活動で生活してるので、小さい頃から日常的にあったことや夢で見た内容等を割りと良く話していた。……なので今回も、夢守…という単語だけを伏せて夢の話をしたんだけど…、とんでもない事を言いだした。ここで止めないと、きっとお父さんはやる、絶対やる。
これはお母さんから聞いた話なんだけど、……小さい頃、父はあたしに一冊の童話を書いてくれたそうだ。
あたしの寝かしつけにどうかな。と。知人の絵師を巻き込んで、きちんと本の形にして。
そしてあたしはその本を気に入って、父が書いたと知った時「もっとほしい」とねだったらしい。
その後父はやらかして、お仕事をそっちのけ、童話の執筆・製本をし続けたそうだ。
イラストを担当した父の知人は降ってわいた仕事に喜びつつも、父の執筆ペースの速さから来る作成数の多いイラストの催促に寝る時間を削って衰弱し、そっちのけた小説の担当者は、苦肉の策です!と代替案として当時執筆していたその童話の原稿を知人の書いたイラストごと持ち帰り、出版する話をまとめたとかなんとか。雑誌連載ではなかったからなんとかしてもらったけど、困った人よね。と母は笑っていた。ちなみにこの騒動は担当さんがあたしに「君のパパが僕をいじめるんだ、パパダメでしょって僕と一緒に言いに行ってくれないか!」と泣きついて、「パパ、メっでしょ」と理解せずに言ったあたしの言葉で収束したんだとか。
何年か前にこの話を聞き、不用意にはねだるまい…とあたしは決意した。
そんな前例があるんだから、うっかり読んでみたいかもなんて言おうものなら冗談抜きに本にされる気がする。
あたしの黒歴史?みたいなものが世間に公開されてしまう。しかも名前に一定のファンがついてるパパの本として。それは、避けたい。絶対にヤダ!
「うちがそれで食べてるのは理解してるし、見た夢がネタになるなら協力だってするけどさ。でもこの年で自分が主人公とか、恥ずかしくて外あるけなくなっちゃうよ。そんな事するパパなんてあたし嫌いになっちゃうからね」
「そんなにだめかい? うーん、いい案だと思ったんだけど。残念だけどネタの提供で我慢しておくよ。
また見たら教えてくれるかい?」
「え、うん。いいよ」
「それは楽しみだ。……あぁ、そうだ。
想が見てる面白そうな夢だけどね、夢だと自覚しながら見る夢を明晰夢というんだよ。
想が言うように、夢の状況を望んだように変えられると言われていた筈だ。
ただ、どんな事でも出来るから…と自分だけでと視野を狭めない方が楽しい夢になるんじゃないかな。
人には適材適所というものがあるからね。」
「………? はぁい。」
* * * * * *
……またあの夢を見るんだろうか?
見ないかも知れない。…でも見れそうな気はする。
もし見たら…。見続けてしまったら。
知識は…、再確認。しておいた方がいいんだろうな…?
自分なりに、夢で見た内容を幾つか検索してみた結果──
検索ワード『羊のしっぽ』
断尾…というのがあるらしい…。
綿羊には元々長い尾があって生後間もなく短く切ってしまうんだとか…
…………。知らなかった。
検索ワード『夢守』
歌・会社名・ゲーム・小説・漫画に、ハンドルネームまで…。
うーん…色々出てくるみたい?
…でも、パッと見だけど、ウルが言ってた意味合いっぽいのは見当たらないや。
検索ワード『浄化』
幾つか意味合いがあるみたいだけど…。
ただの汚れって意味じゃないだろうし、こっち…かなぁ?
けがれなどの不純物を取り除き、正しいあり方に戻すこと。
クロキモノの正体はまだ良くわからないけど、何かを取り除いて、戻す事…て事かぁ。
……だとすると、あたしが取り除いた不純物はいったい何処に行ったんだろう。
検索ワード『明晰夢』
最後にお父さんが言っていたあたしの夢をさす単語──。
検索をしてでてきたペディア(ウィキペディア)。
概要らしきメカニズムの項目には、チラホラ思い当たる事があるような無いような…。
その中でも、夢を自覚しても起きないという項目には気になる事が書いてあった。
夢を自覚する方法を主張する人がいて夢を自覚する為の訓練方法があるらしい。
金縛りや二度寝の時は見やすいという意見もある…とか。
……金縛りってあたしが最近ずっと悩んでた…あれ、だよね…?
スマホで調べた内容に頭を悩ませながらベッドに入る。
明晰夢──。
ホントにまた、ウルが待ってるあの世界に行けるのかなぁ?と、…考えながら…、気がつけば眠ってしまっていた。
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