表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界夢紀行  作者: 舞原倫音
第1章 夢守の帰還
15/15

第四夜 11 幕間-異世界夢日誌- ◆◇ウル視点◇◆

第一夜のウル視点も入ってます。

 俺の名はウル。夢守である想に仕える夢羊だ。

 想に出会えた偶然に感謝が絶えない。あの交わした約束を何よりも大事に彼女を、想を。──護りたい…と思っている。


 ……。

 その想に、駆け寄り近づこうとした奴が居た。

 想に創って貰った擬人化スキルで隠密の姿を模してた俺は、そのキャラが持つ魔力の具現化スキルでロープを創り縛りあげた。

 ま、当然だな。

 捕まえたのは黒くて丸っとちんちくりんなこいつ。


┌───────────────────────────┐

├──◆クロキモノ◆──────────────────┤

  種 族:クロキモノ(バク種)

  浄化率:100%

├──────────────────────◇─◆─◇┤

└───────────────────────────┘


 モノクルで調べてみれば、クロキモノ。…やっぱりか。

 いやまて。浄化率100? おかしくないか? クロキモノだろ? こいつ。動いてるのを見たのもそういえば初めてだな…。…イレギュラーってやつ…か?

 何にせよこいつを教会あそこに入れる訳にはいかないな。…外の柵にでも縛りつけとくか。


「この不躾な縄をほどきなさい!」

 なるほど。これが喧しい、か。

「却下だ」

「──っ!!」

「その姿で睨まれてもな。何の目的で想に近づいた?」

「また貴方ですの!?」

 …ん? また、ってなんだ?

「私に恨みでもありますの!?

 私と想を引き離しただけでは満足できないという事ですの?!」

「お前と想を…?」

 俺が知り、俺と想を知るクロキモノ…?

「お前、まさか…あの時の…?」


     *  *  *  *  *  *


「あーあ、つまんない。

 せめて話し相手がいればいいのになぁ」


 昏くて音も無く何もない。自分という置物が在った。

 それはクロキモノが俺の身を染めてから続く自分の記憶。

 全てを無くした俺の世界に。あの日偶然響いたそのこえは、俺の世界に再び光をくれた。


 アア、ダレカ…

 ダレカ、タスケ「テ」。

「うん?」

 ウカンデクル、コレハ? ──。

 ユメモリ…? コノ存在ヒト、ナラ? ユメ「モ」リ…サマ。

「……うん?」


 俺の意思に反応するかのように流れ込んで来た知識。

 それまで紡いだ事のなかったおと

 目を開ければ……見知らぬが。──想が。俺を覗きこんでいた。


「ええっと… ねぇ、君、もしかして言葉が解るんじゃない?」

 ナンダ…?

「…コトバ」

 コノおと。コレハ…コトバ…

「ワカル。」

 ナゼ? ナゼ、コトバガ、浮カブ?

「ドウ、シテ─…」

『ふふっ。当然、ですの。』


 不思議と声が重なり響いた。


「良かったらあたしとお話しない?」

「…オハ、ナシ?」

「うん、そう。君、向こうの方で倒れてたんだけど覚えてない?

 せっかくだから、あたしこの世界の事知りたいんだけど?」

『ああ、それは。互いを知るにはとても良い事。そうなさいませ?』


 目の前には一人の、夢住人だと思っていた人の種、想がいた。

 だが。想から俺に響く声は二人分。……その声は?


 ……タスケテ? ダレカラ? クロキ、モノカラ。

 黒キ髪、黒キ瞳に染まっタ……コイツ、カラ…!?

「俺ハまだ、染マッテ…ナイ。騙サレない」

「えぇぇ…。騙すって何。ってか危害を加えるつもりなら、わざわざ運んだりしないんだけど?」

『騙すだなんて。信用なさって?』


 重なり響いたその声は。想が纏ったクロキモノの声だと思った。

 こいつらも言葉を使うのか、と。


「クロキモノは、信用シナイ。」

「クロキモノ?」

『──まぁ。それは先入観と言うものですの?』

「お前、クロキモノ、ダロウ?」

『ええ、そうですの』

「いや、クロキモノってなんなのよ?」

「近ヨルナ!」

『貴方、無知は罪という言葉を御存じ?』

 何ダ、そレ…?


 思い浮かんだその意味に。


「無知ハ罪」思わず呟いた。

『そう拒絶しなくとも、この子はとても優しい子。

 貴方も互いを知る事はとても素晴らしく有意義な事…と、知るべきですの』

 俺ガ、無知? コイツハ優シイ?

 コイツを知らナイ俺ハ、罪?

「すいません……

 ええと、そうだ。罪が深くならないよう、よかったら教えてよ?」

 ソレハ……互いヲ知る為ニ?

 コレハ……優しサ?

「クロキモノハ民ヲ染めイズコヘト連レ去ッテシマウ。

 ──俺モ、お前モ、姿ヲ見るニ染マッテイル、ダロウナ…」

「ええと、つまり例えば、あたしの髪と目や、君の身体を覆うその毛が、黒じゃなければ少しは違う態度だった、と?」

 クロキモノは夢住人の姿ヲ染めル。

 コの人の種がクロキモノに染マッてイナケレバ。一ツの、可能性トシて。

「……クロヨリハ。」

「ああ、そうなんだ…。

 色…かぁ。

 まぁ夢の中でくらい、黒髪じゃなくてもいいのかな?

 いっそパパっと、例えばそうだなぁ、女の子らしいピンクとかに染まっちゃえば、ファンタジーらしくてかわいいかもね。

 そしたら友達になれたかも、しれないんでしょ?」

『きゃぁ!? 嘘、どうし、てっ!? 貴方、なんて事を!

 私の夢の続きを、あの方達との思い出をこのような──…想っ…だめっ…私っ、絶っ対いやっ、ですの!』

「──抜けないでッ」


 あの時俺の前から姿を消したふたり

 俺の中からは淀みが消えて、黒く染められた俺の身も色を変え、まさか…とよぎった1つの知識が、これが答えと言わんばかりに俺へと主張していた。


「まさか」

 彼女は。

「夢守──…」なのか…と。


     *  *  *  *  *  *


「ええ、恐らくそれはわたくしでしょう。

 再会早々随分な歓迎ですね?」

 想の最後の一言は気になっていた。だから、想を調査スキャンして、存在の確認をした。かなり細かく調べる事が出来たが、あの声の主は見当たらなかった。

 だから。

 居ないのであれば、俺の中からも消えたように、想の中にいた奴も、浄化されたんだろうと思っていた。だが、想は夢守。あいつの言葉には力が宿る。こいつの言う事が本当なら…?

「何しに来た?」

「私の半身に逢いに」

「半身?」

「想ですの」

「ふざけるな!」

 やっぱりこいつ、想に!

「ふざけてません」

「二度と想に近づくな!」

「嫌です。あの子は私の妹分ですから」

「迷惑だ!」

「それは貴方。側で見守るのは私の務め、ですの」

「不要だ。護衛は俺一人で充分だ」

「あら、不十分でしょう?」

「なんだと!?」

「レディにこの様な仕打ちをなさる殿方なんて。想の護衛にあるまじき人選ですの」

「…は? レディ?」

「目の前に」

「居ないが?」

「あら、見えてませんの?」

「見えないな?」

「貴方のその目は節穴ですの?」

「それはお前の頭だろ?」

「失礼なっ。わたくしの様な立派なレディが見えないなんて」

「俺達みたいな一山いくらの夢住人が性別なんて持つわけないだろ?」

 何も考えずにただなんとなく生み出された自分達。

 想のように…人の種のように…生まれ持った性別なんて、授かっていない。持っているわけがない。

「ありますの」

「ねえよ」

「あるんですの!」

「ねえよ!」

「あ・り・ま・す・のっ!」

「ね・え・よ!」

「貴方に無くとも!

 私にはっ! あるんですの!!」

「ありえないだろ!」

「あの方達に娘として愛されてっ、大事に育んで頂いた乙女心がありますの!」

 生まれた後に性別という属性が、増えた? いや、ないだろ。

「これだから無知は罪、ですの」

「なっ──」

「貴方も、自身に問いかけてごらんなさい!

 何故、貴方は自身を「俺」と言っているのか。

 私に乙女心が宿った様に…、貴方にも宿った心がありますの!

 選んだ理由がある筈ですの!!」

 俺が俺と言う理由…? 

 幾つかの選択肢の中から、必ず選ぶ必要があった。

 その一つを選んだ理由……

「……ないな」

「全く……。私の愛する想にこの様な朴念仁が纏わりつくだなんて……」

「なんだと?」

「独り言です。お気になさらず。

 それよりも、いい加減この縄、」

く理由はないな」

「縛る理由もないですの」

「あるだろ」

「あら、どのような?」

「想に危害を加える可能性がゼロじゃない」

「ゼロですね。

 私が、あの子を傷つけるわけないでしょう?」

「どうだか」

「解いて下さい」

「断る」

「何故ですの?」

「クロキモノなんて信用できるか」

「そう…、それだけ、ですの?」

「十分な理由だろ」

「……どうしても?」

「当たり前だ」

「そうですか。

 …想はもう手の届かない夢の中。片や私は縄に縛られ身動きできず。

 ……仕方がないですの。

 次にあの子が来るまで私も一眠りして、あの子の日常ゆめでも見ましょうか」

「眠る…?」

「私は少しばかり、特別なので。

 ああ、ご存知? 時間というものは有限ですの。

 貴方も想が来るまでの間、信じたくない事実を否定きょひする前に、頭を使って考えて見るといいですの。

 何度も言いますが、無知は罪。貴方の無知は私がレディである事を覆す理由にはなりません。では、おやすみなさいませ?」

 そう言うと、こいつは本当に寝入っちまった。

 ……。

 夢住人が眠って現実ゆめを見る…? 嘘、だろ?

 いや、まてよ? こいつには想が…、夢守が絡んでる。

 想の半身って言ってたな…? 妹分ってどういう事だ…?

 ──。……嘘、だろう?

 俺の中にある想の記憶を。俺の意思に従い浮かんだそれを。……否定せずには居られなかった。


     *  *  *  *  *  *

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ