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異世界夢紀行  作者: 舞原倫音
第1章 夢守の帰還
12/15

第四夜 8

     *  *  *  *  *  *


 ウルが悩んでる。

「……すまん。確認したい事がある。」

 と、夢守羊報を再確認して部屋を移動したのがついさっき。

 移動先は勿論起きた時に居た祈り?の間。

 ウルは待機してもらってた兄弟羊このこたちをモノクルで調査スキャンした。

 で、その結果。

 浄化済である兄弟羊このこたちは全員、ウルと同じく亜種の表記があった。…というのが今の状況。

 だけど部屋を出る前に確認をした夢守羊報データには、亜種の記載はなかったはず…なんだけど…?

「……タイミング、か。」

「タイミング?」

 それが悩んでたウルの解答こたえなの?

「ああ。兄弟羊こいつらの情報を調べたのは、浄化率を確認した時だ。浄化率が100%になった後はわざわざ確認する必要がないからな。

 羊報には俺の知識の記録はない。モノクルで調べた情報だけが載っていた。

 調べた情報だけが載るのであれば、モノクルで調べた後から今までの間に変化があった。と、考えるべきだろう。」

「あー、なるほど…」

 つまり原因の特定は、その期間に何があったかを調べればいい?

兄弟羊こいつらには名前はない。色も元の色のまま、か。

 ……想の見立てはあと一つ。夢守の記憶だったな。」

「え…」

 ちょっとまって、それってもしかしてあたしの記憶…

「これは俺の失態だ。心当たりが一つある。罰は当然受けさせてもらう。

 だが安心してくれ、想。人の種が言うところのプライバシー、か? これの侵害は一切してないぞ。

 何より想にも報告済みだしな。」

「え? いつ?」

 そんな報告されたっけ?

「ついさっきだ。

 この建物の仕様説明…指示をするときに、最低限の知識は流した。…と言っただろう?」

 ……。言ってたような気がします…。

「とはいえ何か別の要因である可能性もあるからな。今は様子を見るべきか。

 現状に動きが出るまでは、想の記憶を他の兄弟羊やつらには流さないほうがよさそうだ。

 ……だが、既に亜種となった兄弟羊こいつらは…」

 ウルは兄弟羊に一瞬視線をおくった後、あたしをじっと見てきた。

 ……だめか? とが言ってる気がする。

 巻き込んでしまったのなら、せめて尊重したいって事…?

 まぁ、会話出来たら便利なのは確かなんだよね。……当面このこ達だけって話なら…

「希望者だけ、ね?」

「もちろんだ!」

 あたしの許可にニパッとウルは笑う。うん、……かわいい。

 やっぱりウルってホントに表情豊か。羊、なのにね? ドピンクだけど。

 目は口ほどに物を言うっていう言葉の通り、ウルの目はあたしに対して物を言う…。

 出会った時の警戒心はもうなくて、今あたしとウルの関係は良好的。

 特に笑顔は可愛くて、抱っこして愛でたい、もふもふしたいって衝動が湧くんだけど、ウルは嫌がってる風なんだよね。

 ……あの時友達って言ったけど、ペット契約でもよかったなぁ。

 そうしたら思う存分……。

「それで、想。俺は罰として何をしたらいい?」

「え、罰?」

「人の種は悪い事をした場合、罰金・罰則というものがあるんだろう?

 俺が参考にした文献でもそうした描写は多くある。

 だが金という物は今ここには存在しないし、あっても想には無意味だろう? 罰金は無理だ。

 だから想。俺に罰を与えてくれ。」

 ……。

「えっと、……」

 今、ウルなんて言った…?

「ごめん、もっかい?」

 聞き間違い。…そう、聞き間違い。きっとそうに決まってる。

 だってそうじゃなきゃ…

「俺に罰を与えて欲しい」

 ピシっと姿勢を正したような座り方…多分正座でウルが言う。

 ────。

 聞き間違いではないらしい…。

 頭、いた…。ドウシテソウナッタ…。

 これは、…、うん?

 ちょっと整理が必要だ?

 あたしとウルは宣誓で、なかば押し付けた友達の仲。

 だけどモノクル調べでは、ウルはあたしの忠臣状態。

 あたしの記憶を元にしてるなら罰金と罰則っていうのは、……多分、法律や校則とか…? の事だよね?

 で、参考文献でもそうした描写は多々ある、と?

 でもあたし、文献っていえるようなかしこまった本に覚えなんてないよ? なんかやな予感…

「ねえ、ウル」

「なんだ?」

「今、一番参考にしてる文献のタイトルは?」


 ……………


 ………


 ……


 やっぱり、というべきか。

 ウルから聞き出した文献名…っていうか、ウルがあげたそのタイトルは一種のラノベだった。

 あたしが読むほとんどの本が小説ラノベだというのも原因なんだろうけど、日常会話の参考元がラノベとか、勘弁して欲しい。あれは非日常を書いたものがほとんどなんだし。…まぁ夢守もあるいみ非日常だろうから間違ってはいないのかもしれないけどさ…。

 記憶に残るあの小説はなしには、幼馴染ともだちであり執事という立場を持つ人物キャラクターが確かにいたし、仕える主は特権階級いわゆる貴族で、召使の粗相には罰をという主張をする描写があったのも覚えてる。だからウルは執事に自分を、貴族に夢守を当てはめたんだと思うけど…。

 だけど読後感のいい小説ではなかったし、何よりあの小説の執事、主以外への対応がクズい。

「ウル、その本は参考にしちゃだめなやつ」

「…そうか…。」

「てかさ? 望んで罰を求めるってどーなの? 罰の事ホントにわかってる? 普通はされたらな事…で…、」

 ……。あ。

「ウルが本当に必要だと思うなら、罰してあげる♪」

「何をすればいい?」

 説教をしようとしてたあたしの脳裏に浮かんだ悪戯心。

 思わず浮かれたあたしの声にウルは気づいてないっぽい。

「じゃあ罰として──愛でさせて!!」

 座ってたウルを持ち上げてギューっと抱っこしてみると、ウルはあたしの腕の中で固まった──。

 だって罰でしょ?

 ウルはあたしの抱っこを嫌がるし、嫌がる事じゃないと罰にならないんだから、うん、この罰いいかも、あたし得。


     *  *  *  *  *  *

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