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9話目です。
誤字脱字、お目汚しあるとは思いますが・・・
かなりの説明回です。文章の切れ目が長いので読みづらいやもしれません。
座学といっても、蒼士が新しく得る知識は少ない。ゲームではなく現実になったときに、不都合が生じることが変化していたりした。地域情報や気候、風土や歴史はそのままだった。
今蒼士のいる場所は敵種族ー天族や龍族の襲撃はないが、ほかの地域ではそう頻繁にではないが偵察などで乗り込んでくる。そういったことも同じだった。
「飲み込みが早くて教え甲斐があるね。次は職業と生産についてだ」
もともと知ってましたから。という言葉を飲み込んでヴェルのめくる本に目を向けた。言語系チートなのか、体がなじんできたことによる変化でなのか、こちらの言葉で書かれた言語なのに何とかいてあるのか読める。便利なものだと思うことにした。
「適性としてあるのは大まかに4つだ。剣を扱う剣士、短剣を扱う斥候、オーブや本を扱う魔法師、鈍器を扱う神道師。その4種から派生する8職業に就くことができるのは、覚醒人のみとなる」
剣のマークを指差し、
「剣士はその名の通り剣術を扱う。魔法は自分を強化するもののみだ。剣の種類は多々あるが、剣士の扱えるのは片手剣のみ。バックラーといわれる木や革製の軽い盾まで装備できる」
短剣を指差し、
「次に斥候。特に敵やダンジョンを相手から姿を隠しながら偵察することに長けている。短剣を使った戦闘だが、敵に致命傷を与えることがうまいな。素早さに特化した戦術をとるので鎧など金属製のものは動きを阻害するのでつけないな」
一度手を止めて蒼士を見る。
「この2種が前衛だ。次に後衛だが」
隣のページのオーブのマークを指さし、
「魔法師はその名の通り魔法を使う。火や氷を使った攻撃魔法のほかに、敵の足を止めたり、自分の身を守る魔法の盾を張ったりできる。体力がないので重いものはつけられない。ローブなどの布製装備が主だ」
最後の十字のマークを指さし、
「神道師はけがや体力の回復を得意とするが、鈍器や聖魔法を使って攻撃、自分だけでなく他人への強化付与ができる。そして一番の特徴は体力がつきたものを救うことができる」
「それって、死んだものを生き返らせるってこと?」
「・・・死んだものは生き返らぬ。覚醒人ならば仮死状態での蘇生のみは叶う。体力がつきるというのは、息はあるが起きられない。瀕死の重傷のことだ」
ゲームならばHPが0になり、その場に伏した状態が『死』と言われ蘇生魔法を掛けてもらうか、帰還という前回のセーブポイントに戻ると生き返るシステムだった。
さすがにここでは完全に死んでしまえば終わりということだ。
「この4種がアストレイヤ人が生まれ持った適正で決まる職業だ」
「覚醒しない場合はずっとこの職業で、覚醒すればそこからの派生の職になるってことか」
つまり、覚醒しなければ基本4種職のままということだ。
ゲームだと当然プレイヤーすべて覚醒人となる。レベルを10まであげれば誰でも派生職を選べたのだ。そしていろいろな地域へ飛び、クエストをこなしてレベルをあげて新たなスキルやスペルで強くなっていく。
このレベルという概念のない現実で、いったいどうやって強くなってゆくのか。スキルやスペルを覚えていくのか。
ぱらりとページをめくる音で意識を本に戻すと、そこには見慣れた紋章が並んでいた。キャラクターをターゲットすると見れる、派生職の紋章である。
「これが覚醒後に就く職業だ。まずは剣士の派生からだね。各職2種に別れる。一つは剣闘士。すべての武器に精通し、唯一槍を装備することのできる職だ。弓や杖、当然そのほかのすべての武器を装備することができる。スキルの恩恵を一番受けられるのは剣、大剣、槍、2刀。攻撃特化の剣士だが、パーティを守る盾にもなれる。紋章は大剣と槍だ」
もう一つ隣に指を走らせる。
「もう一つは、守護戦士。剣、盾、大剣を装備できる。こちらはソーディアンとは真逆で、守りに特化している。攻撃の肩代わりをしたり、敵の注目を集めたり。相手を一気に引き寄せる魔法や、自分を補助する防御魔法でさらに強化して戦う。紋章は盾と剣だ」
隣のページの斥候のマークに指を走らせる。
「これが斥候の派生2種で、まずは影士。短剣、剣、弓を使うことができる。斥候と似通ってはいるが、不意打ちや毒などに特化している。相手に紋章といわれるものを刻印し、爆破したりする術を持っている。またほかの斥候の透明化や隠密を見破ることもできる。2刀で舞っているかのような戦いをする。紋章は2本の剣だ」
その隣のマークに指を滑らせる。
「こちらは斥候の派生とはいっても全く変わる。弓術師は弓での戦術と罠に特化している。装備できるのは弓と剣と短剣でアサシンと同じだが、弓での戦闘になる。罠を駆使して近づく前に集中攻撃する。紋章は弓。この斥候の2種は偵察のほかに攻撃特化で、ソーディアンやガーディアンが敵や魔物を押さえているうちに攻撃して倒すという役目をすることも多い」
次のページにいって魔術師のマークへ。
「魔法師はどちらの職もオーブや本を扱うのは変わらない。まず魔術師は火や氷を呼び出す攻撃魔法と、敵を眠りに誘ったり足止めしたりする妨害魔法、空間を移動する空間魔法を使う。魔法師の強化版というところだね。紋章はオーブと本だ」
指がその隣のマークに移る。
「もう一つは召喚士で、こちらは精霊を呼び出し戦わせる。精霊を強化しつつ相手には得意とする土魔法や、持続性のあるダメージ魔法、鈍足や攻撃低下などのダメージを伴う状態異常魔法をかけて追い詰める。味方に対しても攻撃力が上がったり、防御力が上がったりする魔法を使える。精霊は火、土、風、水と4種いて、召喚者とともに成長していく。紋章は本に獅子の影だ」
隣のページの神道師に指を合わせる。
「神道師も特化する部分がかなり変わる。こちらは巫術士。回復魔法もあるが、味方を強化することに特化している。攻撃、防御、速度など戦闘に関する付与術は豊富だ。杖と鈍器、盾も装備できるが、杖を使った棒術には防御低下や速度低下、攻撃低下などの魔法をまとわせて妨害と攻撃の両方を同時にこなす。もっとも特徴的なのは自在に掛け外しできるヒュムネといわれるスキルだね。このスキルだけはなんのデメリットもなく、最大3つまで付与し続けることができる。紋章は杖だ。」
隣のマークを指さす。
「癒術士は回復特化。味方を回復することにたけている。回復範囲も広く、周辺に回復を掛けたりバリア系といわれる魔法の盾のようなものを付与できる。復活魔法も多彩で、先掛けして体力が尽きた瞬間発動するものや、範囲にいるものすべて復活させる魔法などがある。自分や味方が受けた状態低下の解除魔法もキュアだけが持っている。攻撃魔法はライトニング系といわれる神聖魔法を使う。紋章は十字と光だ」
クラスの書かれた本の裏表紙を閉じ、蒼士を見る。
「これで4職、8種の職業。どうだい?ついていけているかい?」
何度も思ったことだが、ついていくも何も初めから知っている。そう心で告げながらもうなずいた。
「まだ適性が出るところまでは来ていないようだから、どの適性が現れてもまごつかないようにある程度勉強しておくといい。何か聞きたいことは?」
「いや、後でゆっくり本を読ませてもらうよ。もうちょっと詳しく書かれているものとかあれば、借りておく。わからない時に聞くようにしたい」
それを聞いたヴェルは椅子から立ち上がり、本棚から2冊の本を取り出し蒼士に差し出した。
1冊には剣士、斥候、ソーディアン、ガーディアン、シャドウ、アーチェスの紋章が。
もう1冊には魔法師、神道師、スペラー、スピリツァー、チャント、キュアの紋章が描かれている。前衛、後衛で1冊ずつのようだ。
「もうじき昼だ。昼食を作って食事したら、生産について教えながら実際調薬してもらうよ」
「ぅえええぇえ」
午後いっぱいはずっと慣れるためにも調薬するよ、と蒼士にとって厳しい言葉をかけつつヴェルは説明の終わったクラスについての本だけをしまい台所へ向かった。
お読みいただきありがとうございます。