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7話目です。
誤字脱字、お目汚しなどあると思いますが・・・
蒼士君、採集にチャレンジです。
小屋の周りは本当に採集の宝庫で、30分も摘んでいるとかごがいっぱいになってしまった。とくにレダイムは一株に5、6個なっているので先にこちらが入りきらなくなった。薬草もある程度は密集してはいるが、何せ根ごと回収するので丁寧に抜かなければならない。
かご分とりつくしても、周りにはまだまだ薬草もレダイムもたくさんあった。
「なんか俺とヴェル婆さんしか人がいないとか無いよな。この近くで警護兵がいるはずなのに見えないし・・・」
一杯のかごを持って小屋へと戻る。ちょうど小屋の入り口先の小径を目を凝らしてみるが全く人の姿は見えない。
この知識もゲームプレイ時のものだが、確かに今も緊張した人の気配は感じる。緊張、というよりはむしろ焦っているかのような・・・。
「ただいま、かごに入らなくなったから戻ったよ」
「ああ、ちょうどいい。こちらの部屋へ持ってきておくれ」
開いていた奥扉からヴェルの声がした。かごを持ったまま入ってゆく。ちなみにダンテはすでに部屋の止まり木で毛繕いだ。
入ったとたんむわっと青臭いにおいが鼻につく。
顔をしかめてかごをテーブルの空いている場所においた。さすがにこの空気では、とレダイムの実は置いていない。
「これは向こうに置いとくよ」
「頼むよ」
食事をとる部屋のテーブルにかごを置き、薬草を作っている仕事部屋を覗く。入り口で止まったのはどうにも薬草のにおいがなれず、気分が悪くなりそうだったからだ。
「この薬草は自分で見つけたのを摘んだのかい?」
「そうだけど、違うの混ざってた?かなり気を付けて見てからとってるけど」
「いや、半分以上がかなりいい状態だ。よくこんなにいいものが摘めたね。大体2割ぐらいの割合で新鮮な状態のものが摘めるんだよ。半分なんてすごいじゃないか」
「ただ普通に近くにあるのをとっていっただけだし、特に何かした覚えはないけどな」
「採集物は大気中の魔結晶のエネルギーを吸収している。魔結晶濃度が高いものが長持ち、つまり咲いた後も新鮮さを長く保つことができる。新鮮な薬草は希少なマジックポーションになったり、特殊な料理を作ったりできるから高く売れるのさ」
ところで、と作業中だったヴェルが顔を上げて入り口から入ってこない蒼士を見た。
「なにそんなところにつったっているんだい」
「くさいから」
「慣れることだね。今日は採集だけだが、明日は午前中にちょっとした座学をやったら実際薬草づくりを教えるからやってもらうよ」
「ええええええええええええぇ?!!」
蒼士の叫び声が小屋に響き渡った。ダンテが隣の部屋で驚き、止まり木から飛び上がった。
夜になると、日本とは違い本当に静かだ。
ただ、月の明かりは今までいた世界のそれとは違う。薄青いしらじらとした冷たい光があたりを照らし、草木はその光で薄藍色に輝いているように見える。昼間とは違い、明るい鳥たちのさえずりも、動物の草木を踏む足音も聞こえない。
ただ、低くのどを震わす声で鳴く夜行性の梟の気配だけを色濃く感じた。
蒼士は固いベッドに寝転がりながら、今までの知識を反芻する。
(ほとんどゲームプレイ時の知識と差異はない。ただスキルやスペルを使う概念がSPやMPじゃなくて、大気中のエネルギーから使用するとか、生産活動が首都とかのでかい街じゃなくてもできることなんかが違うな。まぁ料理なんかは生きてくためにどこでもできないとおかしいし、渡り人なんて首都に堕ちない限り生産できなくなるしな)
それじゃぁ生きてけないよな、と独りごちる。
とにかく、明日からまたワンステップアップだな。
あの薬草臭さを思い出し、少しげっそりした顔をする。
しかし慣れないことをしたからか、すぐにうとうとし始め、青白い月が窓からそっと見守るままあっという間に眠りについたのだった。
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