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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
6 アストレイヤを走破せよ!
67/68

61

62話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


新章です。よろしくお願いします。

ちょっとした腐成分があります。ホントに香るくらい・・・

みしり、みしり。


今までとは違う、同族たちの朽ち方を初めて見たのはいつだったろうか。


みしり、みしり、みしり。


本来ならばゆっくりと、眠りに落ちるように樹々へと還ってゆくはずだったのに。


みしり、みしり。


こんなに、思いもよらぬ突然に。

まるで体の内から何かに喰い破られるかのように。

浸食される何かに、あがらうこともできずに。


その軋む音がやむころにはもう、樹の精霊(エリム)は精霊ではなく、枯れ落ちたただの木になっていた。


『せめて、この異変を伝えねば』

個としての意識がなくなるその刹那。

ひとすじの風が翁の体を吹き抜けていく。


かつて最も長く生きたエリムの老。

時代の長となるものにすべてを譲る間もなく、ただの老木となり果てた。





体が本調子になったローゼスは、そのままソウたちと行動することになった。

魔族としての常識、またパーティとして他と戦う戦術などを学ぶため、シルバーと一緒に行動している。

シルバーがサポートしきれない部分は、ミーシャやドーリィが手の空いている時にフォローするようにしていた。


早急に異変を察知すべく、ソウとレイはペアで動いていた。

ロクスバには自分たちも積極的に動くことを伝えて、何か情報があればすぐ連絡してもらえるように言ってある。

魔都周辺の村や町、移動師を使って足で情報を探す。取りこぼしの無いように、どんな人物にも話を聞くようにした。


「なかなかないな、探すとなると」

今日も情報を探していたふたりが魔都に戻ると、すでにあたりは夕方で広場の露店もスイーツ系と代わり串焼きや酒などの夜向けへと変わっていた。

「小腹空いた~」

ソウが串焼きの店で4本頼む。ちょうど今から焼くようで、ちょっと待ってな、という露天商の言葉に頷いた。

「今日も情報収集かい?」

「そ~。なにもなし」

ここの露店の串焼きが一番好みの味で、よく購入しているソウは主人とは顔なじみだ。色々世間話をする程度は仲がいい。

「しょっちゅう購入してもらって助かるんだがよ、今後若干値上げするかもしれないけど今後も贔屓にしてくれな!」

「別に値上げしてもここの旨いから買うけどさ、なんで?肉が希少だったっけ?」

「いや~、実は食材じゃないんだよな。これだ」

店主がまだ食材を刺していない串を取り出した。

「串?」

「ああ、最近生木が手に入らないようでよ、かなり値上がってるんだ。今までこんなことはなかったんだがな。森の恵みは樹の精霊(エリム)族がくれるもんで賄えてたんだが」

「エリム族・・・」

「実はこれは仕入れ先から聞いたんだがな、中までカラカラに乾いたようなボロボロの木をよく見るらしい。エリムのいる森でそんな風に枯れている木はめったにないそうなんだけどな。なんで薪にするような木は余るほどあるんだが、生木から加工するものは軒並み減っているんだってよ」

ほれ、焼けたぞ。

串の4本入った袋を渡されてソウは今聞いた話をレイにするべく足早に戻っていった。



広場にある一角に腰掛け、串焼きに喰いつきながらソウは記憶の奥底から情報を探っていた。

(エリム、枯れる・・・ゲームのミッションかなんかであった気がするけど)

最近、こちらにいる期間が長くなり体がなじむと同時に、日本にいたころの記憶が薄れてきていた。

ゲームの情報として鮮明に覚えていたことも、かなり薄らいできている。

一番手掛かりになりそうなミッションやクエストの情報は、早い段階で人から聞いて『ああ、そんなことあったかも』程度になってしまっていた。

難しい顔で串焼きを食べているソウだが、はたから見るとまずいものでも食べているように見える・・・

「ソウ」

横目で見ていたレイがソウに声をかける。

(たしか結構初期だったよな・・・なんか最終的にいろんなところへ行って、)

「ソウ」

まだ難しい顔で思考の海に沈んでいたソウの額を軽くデコピンすると、びっくりした顔でレイのほうを見た。

「いて、ごめ、なに?」

「そんな顔して食べてたら、通行人が誤解して店主に迷惑がかかるぞ」

「んあ?」

「食っている時ぐらいは、目の前のものに集中したほうがいい」

「あ、」

ようやく自分が『不味そうに見える』顔で串焼きを食べていたことに気付き、気分を入れ替える。

残りの半分を集中して完食して、串を袋へと戻して立ち上がった。

「ソウ、口」

トントン、とレイが自分の口の横を指すとソウがきょとんとその行動を見つめる。

「ソースついてる。・・・舐めてやろうか?」

「んなっ・・・!」

意地の悪い顔をしてにやついているレイを、慌てて口元でソースをぬぐった手で叩いてやった。

「外だろ!自重しろよ!」

「っく、外じゃないときは言わないで行動に移すよ」

「はァ?!!」

「まぁまぁ」

周りはそんなふたりのやりとりを微笑ましく見ているのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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