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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
5 果たされなかった雪原の約束
64/68

59

60話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


これで依頼もひと段落です。

アスフェルトと別れ入口へと戻った一行は、女神像に触れると外へと転送される。

小さな水精霊となった元水の守護精霊・ペネイオがローゼスの胸元から具現化すると、ほのかに発光している黄金の鍵をローゼスに掲げさせる。

『この扉をまたあかぬよう戻すために封印する。封印後はしばし召喚には応じられなくなる。あるじの魔結晶もかなり使うことになる。封印後はせめて半日は休んでもらいたい』

「わかった。僕が背負って休める場所に連れて行くから安心して」

「湖の氷の件はどうなるんだ?それに今後守護者だったペネイオがいなくなるけど、大丈夫なのか?」

封印が発動され、話が聞けなくなる前にとソウが尋ねる。

『湖の守に関しては問題ない。もともとあそこにわれがいたのは、ここの扉を開けられぬよう、うろこを守っていただけにすぎぬ。うろこはもう効力を失い、新たに封印を開けるにはこの黄金の鍵が必要だ。われがあるじであるローゼスといる限り、鍵の守は問題ない。湖の氷もわれがやっていたことだ。あそこへと向かうものがいなければ、凍らせておく必要もない。われがここにいる時点で、すでに溶け始めているだろう』

ソウの疑問に答えたペネイオは、魔結晶を鍵に込める。


『閉じよ』


ぱしん、という何かが破裂するような音とともに、ペネイオは消え、ローゼスがシルバーに倒れ掛かった。

「あ、っと」

しっかりローゼスを受け止めてシルバーがウルフへと変化すると、レイがその背にローゼスをそっと乗せた。

「村への報告は俺たちで行くから、シルバーはその間ローゼスがいた洞で待機してて」

軽く頷いたシルバーは、ローゼスを落とさぬよう走っていった。

「すごいな、ここに水の神殿があるなんて、実際見ていないと信じられない」

今はもう中の幻想的な風景を見とめることもできない雪の壁に見える神殿の入り口に触れ、レイがつぶやく。

それに同意しつつソウも先ほどまでは女神像があった場所の氷柱を見つめていた。

「もう2時間もすれば夜が来る。急いで村に行って報告して、シルバーと合流しよう」

白い息を吐き出しながら、ふたりは村へ急いだ。




空が少し濃い青に染まり始めたころ、ソウとレイは村に到着した。

入り口を警護している警備団が、近づいてきた二人に気付くと一人が村の中へと走っていく。おそらくソウたちが戻ったことを伝えるためだろう。すぐに中から数名の男たちがこちらへと向かってきた。


ふたりが警備兵に声をかけ、中へと入ると若い者のリーダーであろう、あの最初にかみついてきた男が立っていた。

「なにやら湖とは反対のほうへ向かっていったが、どうなったんだ。怪しげな光を見た。あれはなんなんだ」

「結果から言えば、湖の氷はこの後確実に溶けていく」

わぁっ!と男たちの歓声が上がった。ソウの言葉で、ようやく船が出せるようになると確信したからだろう。

「怪しげな光は、湖の守護者と対峙した時だろう。伝承ではなく湖は守護者に守られていた。伝承通りにこれからも湖が凍っている間は、うかつに船は出さないようにするんだな」

村人が変に勘繰らないよう、レンズをはめたときの光のことは伝承の守護者がやったことにしておく。伝承通りに守護者がいたことは嘘ではないので、とりあえずそれでこの湖は守られていると思ってもらったほうがいいだろうというソウの考えだった。

「これで依頼は終了とさせてもらう。こちらもギルドへ戻らせてもらう」

「わ、わるかったな!ありがとうな!」

村を後にしようとする二人の背に、焦ったように謝罪と感謝の声がかかった。

振り返らずに手を上げることで返事としたソウだった。



足早に洞へ向かう。

すでに空の青は藍にちかい。相当気温も冷え込んできた。寒さが苦手なソウは、風を少しでもよけるためにレイの隣ではなく真後ろにいた。

洞が見えてくると、中からまず灰銀のウルフが、そのあとすぐに金茶のウルフがゆっくりと出てきた。

「ローゼス、目が覚めたんだ」

そばに寄ると、ふたりが人化した。

「とりあえず意識は戻ったけど、まだまだ本調子じゃないみたい。ペネイオとも全く意識疎通できないって」

「まだ回復していないんだろ。かなり魔結晶が薄い。とにかく村の報告も済んだ。魔都に戻ってゆっくり部屋で休ませよう」

人型に戻るとよくわかるが、明らかに顔色が悪いローゼス。

早急に戻り休んでもらうため、魔都へのスクロールで一気に戻っていった。


お読みいただきありがとうございます。

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