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59話目です。
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
ブックマーク、評価が上がっていて驚きました。
更新停滞していたのにありがとうございます。
ずいぶんと間が空いてしまいました(;^ω^)
巫女との邂逅です。
巫女服の精霊アスフェルトは、案内をしてきた水の守護精霊に感謝を伝えると、改めて案内されてきた4人をじっくりと見つめた。
まるで体の奥底まで暴かれそうな不躾な視線だが、相手はヒトではなく精霊。
歓迎の意を示したものの、きっと自分たちがここに来るのに相応しいかどうかじっくりと見極めているのかもしれない。
その黄金のまなざしを緩めたのを認めると、自然に緊張していた力を緩めることができたのだった。
「よくもこれだけ珍しい客人を連れてきたものよの。外界からヒトが来るのはどのくらいぶりか」
「巫女よ、ここが封印されてよりおよそ200年ほどかと。封印が施され、精霊を視るものが減り、悪意ある精霊狩りは見なくはなったもののわれらが事実存在するということが知れれば、また繰り返しになるかもしれぬ」
「よい、少し見てみたかっただけなのだよ」
暗に『早く再封印してしまいたい』ということを伝えるペネイオだが、アスフェルトはその瞳を笑みの形にゆがめると、すべるように近づきローゼスをそっと抱きしめた。
驚いたローゼスが身を引こうとすると、ひそやかに語った。
「本来なら起こらなくてよかった哀しい思いをさせてしまったようだの。主の家族であった者には申し訳ないことをしてしまった。ここが開かれておれば、封印されておらねば守護者に斃されてしまうことなく辿り着けたものを」
「・・・っ!」
気丈にふるまっていたローゼスも、水の精霊の中でも高位のアスフェルトの心からの謝罪に気が緩んだのだろう。
アスフェルトに抱きしめられるまま、その腕の中で声にならない嗚咽を漏らし涙を流した。
ようやく想いが昇華され、心から祈りをささげられる。
頬に伝う涙をそのままに、ローゼスは頬笑みを浮かべてこの美しい風景を顔を上げて見つめた。
アスフェルトは涙を止めたローゼスの髪をするりとなでると、先ほどまで座っていた珊瑚へと戻っていく。
「さて、われらも200年前と同じ過ちは犯さぬ。このままここを開けたままにしておいて、また精霊狩りに荒らされてはたまらぬからな。しかし今日ここでつながった縁を離してしまうには惜しい」
手を掲げると、周り中から水精霊の幼生体である半透明の魚たちや、海月たちが集ってきた。
『友に捧ぐ、新たなる鍵をここに』
謳うような詠唱の後、魔結晶が集束する。
まばゆい光が柔らかな光に変わったとき、その掌の上には黄金に輝く1本の鍵があった。
「これをそなたに預けよう。水精霊の生まれる地、この神殿の鍵となる。これがあればここが封印されたのちも封印を崩すことなく入ることができる」
ふわりとうかぶ黄金の鍵をするりとひとなですると、ネックレスに鍵がぶら下がって身につけられるようになっていた。
アスフェルトはそれを手放すと、鍵はまるで決まっていたかのようにローゼスの首にかかった。
「水精霊の加護を示した神殿でとれる真珠で作った首飾りにしておいた。あとは・・・」
アスフェルトが自分の肩に控えているペネイオをちらりと見ると、ペネイオはローゼスのそばへ飛んでいった。
「おぬし、この守護者を器にいれても弊害がなかったようだな。おそらく召喚者としての素質もあるのだろうが、ペネイオと契約してみぬか?」
「あたしが、召喚者?」
「たぶん、人化したことで僕と同じ、魔族という括りにも入ったんだと思う。きっと召喚者っていうのはスピリツァーだ。精霊と契約してともに戦うことのできる、魔法職」
ぽかんとしているローゼスに、シルバーが簡単に説明した。
「急に言われるとびっくりだよな。まぁ、戦って生きていくための一つの力が増えるってことかな。水精霊と契約してしまえばおそらく、ウルフとしての単純な生は望めなくなる。それでももし、もっと広い世界を識るのなら・・・」
「識りたい。あのヒトが生きるはずだった世界、生きた世界をヒトの目線で見てみたい」
ソウの言葉にひるむことなく、まっすぐにアスフェルトを見て告げた。
「契約する」
その瞬間、淡い水色の透明な光がペネイオを包み、ペネイオは透きとおってはいるが人型となった。
そっとその透明な手をローゼスに差し出し、ローゼスもその手に自分の手のひらを合わせる。
瞬間、青く碧い光がさく裂し、ふたりを包んだ。
『契約は為された。召喚士ローゼスを護り、ともに戦うことを誓う』
まるで鈴が鳴るような音。
そして光が収まるとそこにペネイオはすでにおらず、ローゼスが一人立ち尽くしていた。
「無事に契約できたようだの。アレはまがりなりにもここの封印を守っていた守護精霊。普通の召喚者が初めから契約できる代物ではない。あの人型の姿はあ奴の最終形態になる。絆を深め、おのが力量を上げてゆくことだ」
「ありがとう、アスフェルト」
ローゼスがそう伝えると、まるで愛娘でも見るような溶けそうな眼差しでうなづいた。
「さぁ、ゆくがよい。そしてこの世界の美しさを視ておいで。いつでもここへきて、おぬしが見たものを話に来ておくれ、精霊の愛娘よ」
お読みいただきありがとうございます。




