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58話目です。
間があいてしまいました。今回も短いですが取り急ぎ。
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
息子が入院中ですのでまたしばらく更新が滞ると思います。
正直、言葉を失うほどだとは思わなかった。
自分は一度ゲーム内ではあるがこの風景を見ているから。確かに初めてクエストでここに入ったときは、きれいで美しい風景だとは思ったが。
女神像から転送され、中へ入る。
外から見ると海を切り取ったように見え、息ができるとは思えなかったが転送された大きなせり出した薄い岩場に立っていても苦しくはない。
精霊の言っていた水の魔結晶が満たされている、そこまで濃度の濃いものが行き場もなく閉じ込められていると、その元素の形状をとるのだろう。
何処までも青く透明なそこにいるのは、人魚のように下半身が魚の尾びれとなっている中位の水の精霊。
向こうの風景を映し出すほどにはかない色とりどりの魚たちは、いずれ中位の人魚となるという。
上から差す光に乱反射して、虹のように広がりキラキラ光る。
海月のような、泡のようなぷくぷくとした丸い生き物が揺蕩っている。
底のほうには巨大な亀がゆっくりと、周りを一緒に泳いでいる魚たちと散歩している。
入口より奥には宮殿といわれるゆえんとなったであろうサンゴ礁が、まるで神殿のように厳かにたたずんでいる。
「すごい、」
そのあとを詰まらせるようにしたローゼスは、くしゃりとゆがませた顔で涙を流す。
しかしすぐに泣き笑いのような表情になった。
「これが、アノヒトが見たかった風景。私に見せたかった風景」
心に刻み付けるように、食い入るように見つめる。
『ここでは、翼で移動できる。奥の宮殿へ、呼ばれているようだ』
ローゼスがふ、と息を吐いたタイミングで精霊が声をかけた。
「誰が呼んでいるの?」
『ここの主、巫女であるアスフェルト。巫女といっても人族ではない。水の精霊だ』
水の魔結晶の濃度が高いからか、器であるローゼスから離れなかった守護神が手のひらサイズの水の精霊となって現れた。
ふわふわとローゼスの目の前を飛びながら奥へと誘う。
「ローゼス、手を」
シルバーがローゼスの手を握り、魔結晶を巡らせる。シルバーの魔結晶エネルギーに包まれた二人の背に、魔族の証である黒い翼が現れた。
「飛んでる!」
ローゼスがなれない浮遊感に驚きシルバーにしがみつく。
「ソウ、大丈夫か?」
「今のシルバーからこつを掴めそうだ」
ソウはそのセレステブルーの瞳を閉じて集中する。周りに魔結晶エネルギーが巡るとその背には光の加減で深い藍にも見える、黒き翼が羽ばたいた。
それを確認したレイも翼を開き、ローゼスを支えて飛び立ったシルバーを追ってゆく。
初めて翼を使うソウは、スペルを扱うときのように集中して飛び立つがやはりなれない器官を使っているからかまだ不安定だ。慣れるまではレイがソウの手を引いて飛ぶことにした。
二組に分かれてゆっくりと入り口から奥に入ってゆく。海月のようなまるい精霊の子供は、案内をしている水の精霊の周りに侍る。
水の精霊の器となっているローゼスの周りや、スペラーで氷魔法を扱うからかシルバーのそばにも海月が寄ってきていた。
泳ぐように一際大きな珊瑚礁の森にたどり着き降り立つと、翡翠色の巫女服のような着物を身につけた、目の覚めるようなコバルトブルーの波打つ長い髪の人魚が此方におりてきた。
「外からの久方ぶりのお客人だの。こちらに敵意はないようだ。歓迎しよう」
美しくも妖しいかんばせに微笑みをのせて唄うように言った。
お読みいただきありがとうございます。




