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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
5 果たされなかった雪原の約束
60/68

55

56話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


ローゼスの願いをかなえるために、出発です。

先に守護者を探すことにしたソウたちは、また船に乗り湖の中心へ漕ぎだした。

ソウが意識を集中して、変異を探る。

「・・・ちょうど転覆した船のある場所から少し先に行ったあたりに、濃い魔結晶(オード)の気配を感じる」

「しゃあまた船から降りて進まないとかな」

レイが船を厚い氷につけて繋いだ。注意しておりていき、船より先へと進んでゆく。

船から降りた後コートを出して羽織ったソウは、いつ何が起きてもいいようにメンバーに強化(バフ)スペルをかけた。


転覆船より5分ほど進んだ場所。通り過ぎた船はあたりの靄で見えなくなっている。

『我が領域に立ち入るべからず』

キィンとした冷たい空気を揺らした不協和音のような声が響いた。

さぁっとまわりの靄が晴れると、水の精霊(ウォーティ)を人ほど大きくしたような薄水色の美しい複雑な形をしたものが、ゆらゆらと揺れていた。

ソウが意識を集中して視ると、魔都の名前付き(ネームド)の時のように情報が現れる。

「『水の守護精霊 ペネイオ 湖の守護者 精霊族』精霊だ、水精霊」

ソウがメンバーにだけ聞こえる声でそっとつぶやく。シルバーがそれを聞いて守護者に話しかけた。

「守護者に問う、僕はウルフをすべるものとして生まれた、シルバー。何故あなたを害さないものを襲った?」

『それはそこの船の人族のことか。あれは我が領域に入り込み荒らした。竜のうろこといわれる我が護るべきものを奪おうとしたのだろう』

「竜のうろこ?それがアノヒトが言ってた宝物?」

ローゼスが守護者に向かって一歩踏み出した。

「アノヒトは見たこともない美しい風景を見るために、何かを探していた。それがその宝物だったのかもしれない」

『なおさらわたせぬ。あの場所は人族に荒らされ、精霊たちが狩りつくされるまえに我が入れぬように封印したのだ』

守護者の周りの魔結晶が密度を濃くしてゆく。

「っ!コールドプロテクション!!!」

ソウの属性防御スペルと同じタイミングで吹雪が吹き荒れた。

「荒らすつもりはない!彼女はただ、あなたが斃した自分の大切な人が見たかった風景を見たいだけだ!必ず返すと約束する!!」

『一度封印を解いてしまえば、かけなおすのに膨大な力が必要になる。命を懸けることになっても見たいというのか』

「私が」

かばっていたシルバーの影からローゼスが叫んだ。

「私の力をつかえばいい!命を懸けることになっても、それでも!」

アノヒトが見せたがった風景を。


その瞬間、吹雪が止んだ。



『その真摯な願い、信じよう』

透明な水色の美しい人型となった守護者が、ローゼスを見つめる。

目をそらさずにその視線を受け止めると、薄くなりやがてはひとしずくとなった守護者がローゼスの胸に飛び込んできた。

『封印を施すのには、我を受け入れる器が必要だ。お前と契約することとしよう』

「大丈夫?」

「違和感はないわ。それより、そのうろこをてに入れることで見れる風景っていったい何?」

『うろこというのはそのもの竜のうろこではない。そのような形状をしたもので、それをある場所にはめると封印が解かれるのだ。うろこはこの先にある奥まった廃屋に隠されている』

精霊の言葉で一行はさらに奥へと進み、廃屋らしき場所へとたどり着いた。

あたりには半透明の幽霊のような影がひしめいている。

『哀れな魂だ。我から隠れてうろこを探そうと、欲にかられたものがその箱を手にしただけで精霊に斃されるだけだ』

「こんなに・・・封印を施された場所ってそんなにしてまで行きたい場所なの?」

『そうだ、すべるものよ。精霊たちの楽園とされている場所なのだ。そこに住むものたちは人族にとっては希少とされるものを持っている。そのために狩られてしまったのだ』

影たちはこちらに気づくと、まるで宝は渡さないとばかりに襲い掛かってきた。

「レイス系ってことは、火に弱いよね」

シルバーがスペルを詠唱し始める。



(アグニ)よ、炎となれ!炎の矢(ファイアアロー)!!」

1発目の炎スペルが当たるとすぐに2段階目の範囲スペルを放った。

地獄の炎(ヘルフレイム)!」

かなりの魔結晶を込めた炎は燃え広がり、廃屋周辺の魔物を一掃した。



廃屋というよりはもともと小屋があった跡といったほうがいいほど、壁も天井も朽ちてしまっており、かろうじて床らしき跡だけがそこが小屋だったのだろうと感じる。

朽ちた板に隠れるようにして、その箱はあった。

箱自体は何の変哲もない、とても高価なものが入っているとは思えないような形状だ。大きさは両掌で収まる程度。

シルバーが警戒しつつ手に取るが、特に罠のようなものはなかった。

『精霊が現れないということで、その願いが真実であることが証明された。本当に風景を見たいというだけなのだな。あの人族には申し訳ないことをしてしまった・・・』

「・・・あやまってももうアノヒトは戻ってこないわ。今はあの風景を見るために」

『もちろん、協力しよう』

シルバーが箱を渡すと、ローゼスが蓋を開いた。

中には、手のひらほどの大きな透明な円形の物が入っている。覗き込んだソウがつぶやいた。

「これって、レンズじゃないか?」

『そうだ。これをあそこに見える丘の上にある灯台にはめると、今まで封印で見えなかった宮殿を照らす光が灯るのだ』


お読みいただきありがとうございます。

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