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6話目です。
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
還り人であることが判明した蒼士さんです。
蒼士はぼうっとしたまま庭の外へ出てゆくヴェルについてゆく。そんな蒼士を横目で見ながらヴェルは一旦庭を出てすぐの木の前で止まった。
「まぁ生活魔法も全く使えそうな兆しもないソウにいきなり還り人だと言っても、信じられぬのはわかる。あたしだってソウには魔結晶の気配のかけらも感じぬ。まぁ今現在確認されている還り人は少ない。初めからこちらになじみ堕ちたその瞬間からスペルやスキルを扱えるものしか現れておらぬが、ソウのようにゆっくりとこちらの世界になじむ者もいるのであろうよ」
とにかく、とヴェルが木の根元に咲いている白い花を指さす。
「まずは知識を得ることだな。この白い花が薬草となる。我らは草花の魔結晶の気配を感じてそれが薬草かどうかを見分けるので、近くに寄らずともどの辺に咲いているのかが把握できる。ソウのように感じられぬ場合は目で見て摘んでもらうことになるよ。果物も毒のあるものとない物がある。これも教えてゆくから、ソウは魔結晶の気配が感じられるようになるまではしっかり確認しながら摘んでいくんだよ」
「魔結晶の気配っていわれても、どんなものだかわからない・・・具体的にどう感じるとか、わかるのか?」
「一般的にはそうだねぇ・・・ほのかに光って見える、とか強い存在感を感じる、とかかね。逆に悪いものに関してのほうがわかりやすい。危機感を感じたり、知らぬ間に避けていたりする」
「本当に感覚的なものなんだな・・・自分でわかっていくしかないってことか」
「あまり考えすぎても余計に理解しがたくなるだけだよ。さぁ、今は薬草と果物を採集しておくれ。薬草はこのかご、果物はこちらだ」
重くなるであろう果物を入れるかごをソウに渡して、ヴェルは薬草を根ごと引っこ抜いた。
「薬草の類は、根ごと摘んでおくれ。果物は実だけだよ」
摘んだ薬草をかごに入れると、蒼士の肩にいたダンテが少し先の背の低い茂みのそばに降りて、こちらを振り返り羽ばたいた。ヴェルが顎をしゃくってダンテをさす。その茂みへ近づくと、姫リンゴのような赤い実がなっていた。ダンテは肩にとまると、蒼士の髪の毛を引っ張った。
木になっている実に触れてみる。
特に何かあるでもなく、すんなり蒼士の手に収まった。蒼士の手のひらより一回り小さい実は、ひんやりと冷たかった。
そっともいでみる。ぷちん、と簡単に実が摘めた。近くで見てみると、本当に小さいリンゴだった。顔に近づけたことで、ふわりと甘酸っぱいにおいが香ってくる。
「それはレダイムという実だよ。この辺でよく採集できる。そのままでも、加工しても美味い。その辺の茂みはすべてレダイムの実だから、摘んでしまってもいいよ」
「わかった。あまり小屋から離れない程度にして、色々摘んでみる」
「ダンテがついているようだからあたしは小屋で薬の作成をしているよ。何かあればすぐに戻っておいで。ダンテ、頼んだよ」
ギャァ、ともグァともつかない鳴き声を発し、翼を羽ばたかせるダンテ。鳥にお守りとは思わない。この3日でダンテがどれほど規格外かは見てきている。むしろ今の自分よりよほど頼りになる。
「かごにいっぱい摘んだら戻るよ」
ヴェルに渡された薬草用のかごを持って、ダンテとともに採集にいそしんだ。
今だに魔結晶の気配とやらは全く感じないが、確かに感覚は研ぎ澄まされているようだ。
ただ単に緊張からあまりまわりに目がいかなかったのかと思っていたが、昔なら全く気にならないようなことを肌で感じる。
たとえば、吹き抜ける風が運んでくるささやかな水の音。
たとえば、遠くの木々から聞こえるさえずりと木の実をつついて喜んでいる鳥たちの気配。
なんというか、本当に肌で感じるのだ。
(この感覚が、魔結晶の気配を感じるっていうのに近づくヒントになりそうかな)
まだ、薬草や木の実たちの魔結晶の気配は感じられない。
お読みいただきありがとうございます。




