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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
5 果たされなかった雪原の約束
56/68

51

52話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


ウルフの正体が明らかに?

青年に聞いた町から湖畔に降りる階段を下り、広がる湖を眺める。

この階段を下りたあたりで現れるらしいのだが、ソウたちが下りて行った時には見られなかった。町の者ではないからなのか、気配もない。


湖は漁獲期だというが、岸に近い部分は少し氷が張っている。

漁に出るための小舟のつないである桟橋の先に立つと、うっすらと向こう岸が見える。

「あの町人がウルフに助けられていたとはな」

「本当に危害を加える気はないみたいだな。問題は、どうして人が漁に出ようとするのを妨害するのか」

ソウとレイが周辺の様子を調べながらゆっくりと歩いている。

シルバーは立ち止まったまま何かを考えていた。

「どした?シルバー」

「おかしいなと思って」

距離が離れた二人の傍に小走りで向かい、自分の考えを伝える。

「魔物は、それ自体が考えて行動することはない。人型や等級が高いものはそういうものもいるけど、動物系の物は本能で動くものだ。なのにそのウルフが人を助けたりするのが普通じゃないと思って」

「シルバーは『すべるもの』、王になるべく生まれた個体だといわれていたな・・・そういう個体なのかもしれない」

「時代にひとりと言われているけど、すべるものがいる時代にそういう個体がいるとすれば、それも世界の異変と関係があるのかもしれないよな」

シルバーが小高い岩の上に登ると、声をかけてきた。

「ソウ、レイ。あの周りより大きい木があるあたりから、匂いがする」

「行ってみるか」

「まって、たぶん人族がいるともっと警戒して出てこないかもしれない。僕だけで行ってくるよ」

岩から飛び降りウルフに戻ったシルバーが、返事を聞くまでもなく走り去っていってしまった。

「ひとりで行っちゃったけど、大丈夫かな?」

「この辺の魔物のレベルは低いから、シルバーならソロでも十分だ。ここでしばらく待とうか」



ふたりと別れ、同族のにおいが強くなるほうへ駆ける。

木からそう遠くない場所に、よく見ないとわからないほどの狭い入口の洞窟のようなものがある。シルバーが身をかがめて体をねじ込むと、狭いのは入り口だけで中はかなりの空洞になっていた。

『勝手に入ってきたのは誰』

ひとりごとのような思考がシルバーの頭に届いた。

『僕はシルバー。勝手に入ってごめん、話ができるかなと思ってここに来たんだ。僕の言葉わかる?』

『おどろいた。ほかのどの仲間にも私の声は届かなかったのに』

奥でのそりと何かが立ち上がる気配、そしてこちらへ近づいてきた。


金茶(ゴールドブラウン)の美しい毛並みの、雌のウルフだった。

『そんな色のウルフ、初めて見た』

『僕だって!』

敵意がないとわかったのか、金茶のウルフはシルバーに近づいてじろじろと姿を見ている。

『ねぇ、君さ、なんで船に乗る人たちの邪魔をするの?このままじゃ狩られちゃうよ』

『・・・』

『僕は、魔族の依頼で船を出すようにしたいって言われたんだ。町の人が君を傷つけないうちに、なにか理由があるのなら教えてほしいんだ』

『なぜ、ウルフが人の依頼を受けるの』

とたんに警戒心をあらわにしたウルフに、あわててシルバーは事情を説明した。


自分は魔族に拾われて、育ててもらったこと。

特殊個体であること。

人化できること。

それにより、より人に近い生活を送っており、人の社会でも身分証明のためにギルドというところに登録していること。

そこでの依頼でここに、育ての親と来ていること。


『さっきも言ったけど、このままじゃ君に危害が加わってしまう。人を害したわけじゃないのに、それは避けたいって皆が心配してるんだ。僕なら、ほかのウルフとの意思の疎通ができるかと思って、まずはひとりで説明に来たんだ。決して君を害そうとしているわけじゃないことはわかって』

『外で、人化して。本当にそれができるなら話してもいい』

金茶のウルフの言葉にシルバーはうなづくと狭い入口からまた外へ出て、ウルフが出てきたのを見計らって人化した。

「これでいい?」

そう言ってウルフを見る、シルバーの目が驚愕に見開いた。



明るい光の下で見るそのウルフは、洞窟で見ていたよりも何倍も美しい。

雪の上に立っているからか、淡く金色に輝いているように見える。

シルバーをひたりと見つめるその瞳は、血のように赤いピジョンブラッドをはめ込んだようだ。


シルバーが近づいてふわりとその毛並みを撫でると、ウルフは気持ちよさそうに一瞬目を閉じる。

その瞬間、周りが光に包まれて、それが収まるとそこには金茶のロングヘアーの、ローブを身に着けた美しい女性が立っていた。

「・・・え?」

「これは、どういうことなの?」

ぽかんとするシルバーに、金茶のウルフだったであろう女性が詰め寄った。


お読みいただきありがとうございます。

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