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51話目です。
第5章です。誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
新しく受けた依頼は、シルバーがカギになりそうです。
アストレイヤに堕ち、龍族の陰謀、モンスターの異常繁殖、覚醒人の失踪事件、研究所封鎖、そしてアディール団による誘拐。
かなり濃縮された慌ただしい時間を送っていたソウだが、誓いの儀式以後、ギルドでの依頼なども通常のものが多くなり呼び出されることもほぼなくなっていた。
通常依頼をこなして、ゆっくりと日々を過ごす。
変わったことといえば、ミーシャとドーリィがやっている『銀の猫』亭に自分たちも住むことになった。はじめは自分たちで家を借りるつもりだったが、空き家を探していることがふたりに知れるとどうせパーティなんだし部屋もあるからうちに住めば?と言われ、ふたりが出かけているときに宿の仕事をするということで好意に甘えることにした。
今まで取っていた部屋を開け、奥の居住スペースにある空き部屋に移動した。
奥の居住スペースは一軒家が宿につながってかなり広くなっており、1階はリビングダイニングとキッチン風呂などの共通スペース、2階はミーシャとドーリィの部屋のほかに書斎と大きめの空き部屋が3部屋ある。
あきらかに宿より広い。
その2階の2室をソウとレイ、シルバーで分けた。はじめは広いので3人でといったが・・・
「僕邪魔したくないもん」
のシルバーの一声で、真っ赤になって文句を言うソウは放置されてソウとレイが同室、シルバーがひとり部屋となったのだった。
「港で船が出せない?」
久しぶりにギルドに呼ばれたソウたち3人は、ミーシャ、ドーリィに留守を頼みロクスバと会っていた。
今回は個室ではないところを見ると、秘密情報ではなさそうだ。
スニルフェイルの港町は氷が貼るまでの短い期間ではあるが、船で漁に出ることができる。村から降りた入り江というには広い湖のような場所から船を出すのだが、最近そこにこの地域には見られないウルフが住みついているらしい。
住みついているだけならまだいいのだが、なぜかそのウルフは船を入江から出そうとすると決まって邪魔をしに来るのだ。
なぜか人に襲い掛かることはないのだが、とにかく船を出そう、と村の高台から降りてゆくとその階段で足止めしてくるという。
「ウルフかぁ・・・」
ソウはちらりとシルバーを見る。
「どうでしょう、人を襲っていないというのでシルバーくんを知っている僕としては、もしかしたら何かの理由があるんではないかと思うんです。町の方たちは退治してほしいというんですが、もしシルバーくんのように人と変わらない思考を持つようなものであれば話し合えるのではないかと」
「シルバー、どう思う?」
レイの問いかけに、考え込んでいたシルバーが一つうなづいて伝えた。
「僕以外にそういうウルフがいるかどうかはわからないけど、意思の疎通はできると思うよ」
「お願いしてもよろしいですか?急がせるようで申し訳ないんですが、町の人たちが強硬手段に訴えてきそうで・・・」
頭を下げるロクスバに、シルバーは慌てる。
「べつにいいよ!ソウとレイもいいかな」
「もちろん」
「早速行くか」
じゃあちょっと行ってくる、と見送るロクスバに手を振って3人はギルドを後にした。
ミーシャたちに声をかけると、情報屋の仕事があるということで今回は3人パーティとなった。
魔都から移動師で飛び、港町スニルフェイルに到着すると町中央の見張り台の前で揉めているのが見えた。ソウが困った顔で見ている移動師横の露天商に話しかけると、どうやら例のウルフのことで揉めているようだ。
ソウがその中心に向かうと、ひとりの青年が男に怒鳴られながら弾き飛ばされた。
「大丈夫ですか」
「あ、はい・・・」
青年を助け起こすと、こちらを睨んでいる面々に向かって言い放った。
「魔都バルディウムのギルドから、こちらで船が出航できないので何とかしてほしいとの指名依頼を受けてきたものですが」
その言葉を聞いた、青年を弾き飛ばした男が慌ててこちらに寄ってきた。
「申し訳ない、こいつがウルフを斃すのに反対するというから、話し合って説得しようと・・・」
「いささか話し合いの範疇から外れていたようですが。・・・とにかく、ギルドより受けた依頼なのでこの1件はこちらに一任していただきます。決して勝手な行動を取らないように」
「いえ、こちらとしてはそちらにウルフを斃してもらえるなら文句は何も・・・」
そう言ってヘコヘコ頭を下げながら男は集団を引き連れて戻っていった。
「あのウルフは人を傷つけたりしていないのに、殺してしまうんですか!」
男たちが去っていくと、青年がソウにつかみかかってきた。シルバーが青年を引き離すと、必死になって抵抗する。
「斃すとは言ってない。船が出航できるようにするだけだよ」
「え・・・」
ソウの言葉を聞いて、青年が抵抗をやめてびっくりしたように見つめた。
「話をきかせてもらいたい。あと、そのウルフが出るっていう場所も案内してほしい」
抵抗をやめた青年に、レイが静かに問いかけた。
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