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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
4 絆の刻印
52/68

48

49話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


BL、GL要素があるのでご注意を。

羽のようにそっと触れるようなキス。


唇が離れた瞬間、レイがどんな表情をしているのか見たくて顔を上げようとするが、それを防ぐようにソウの肩口に顔をうずめてしまった。

「はじめは、ただの護る対象だった。異界から堕ちて不安だろうにアストレイヤで生きていこうとしているソウは、同じようにイレギュラーな存在のオレからはすごいと思った。天族にさらわれた時、壊れそうなソウを見て傍にいて支えたいと思った。あの小屋で言ったことは本当だ。でも時がたつにつれ想いは、独占欲になっていく。そんな自分が汚いものに感じるんだ」

顔をうずめたままぽつぽつとひとりごとのように思いを吐き出すレイ。

そんなレイの頭を、ソウはゆっくりと撫でた。


「苦しい想いしてたんだな。もっと早くこうして話していればよかった」

こつん、と肩口にあるレイの頭に寄り添うソウは、そっと両腕を背中に回した。

「俺の世界では、圧倒的に男女でくっつくのが多いんだ。同性同士っていうのはなくはないけど、少数だ。そういう世界で育ってきたから正直、抵抗感があった」

ピク、と一瞬反応したレイを諫めるように、背中にすがる腕の力を強める。

「でも、今日わかった。ホントに大事なら、そんなこと関係ないんだ。レイの言葉を聞いて、関係が壊れるのが怖かった。でも聞いた今、思うことは・・・」

背中の腕を解いて、少し緩んでいた腕の中から抜け出して顔が見えるように、レイの頬に手を当てて顔をあげ目を合わす。

「そんなレイの言葉を聞いても、キスされても嫌じゃなくって。そんな風に苦しそうに自分の想いを吐き出したレイを、大事にしたいなって思ったんだ」

照れたように微笑んで、レイに抱きつく。


「受けるよ、『唯一(ソルエユニーク)』の誓い」

抱きついたまま宣言する。

レイは腕に飛び込んできたいとしいひとを、思い切り抱きしめた。



久しぶりのゆっくりとした時間に、ドーリィは自分が満たされるのを感じていた。

ソウたちが魔都へ来た頃、やっと自分たちの時間が取れそうだったのに色々とごたごたして、ミーシャとの時間が取れ無くなりさみしかった。

決してソウたちが悪いわけではないのだが、愚痴の一つもこぼしたくなる。

「やっと、ふたりになった。落ち着いたと思ったら、ソウたちが来て忙しくなってミーシャ成分が取れなくなった」

「こら、ソウたちのせいにしないの。好きでトラブルに巻き込まれているわけじゃないんだし」

「わかってるけど・・・」

そんなドーリィのふくれ面を楽しそうにつついて、目の前のケーキをフォークで取り、ドーリィの口元に運んだ。

「ひとりにできないソウを、一緒にいて護ってくれたじゃないの」

差し出されたケーキを飲み込んで、ドーリィが独りごとのようにつぶやく。

「・・・気分的にヘコんでるのわかったから。なんかいっぱい悩んでたみたいだし。わたしはあんなに悩まなかったけど、ソウは還り人だし色々思うところがあるんだろうなって。知らないことも多いみたいだし」

「そう思えるって、ドーリィもかなりソウのこと、気に入ってるんでしょ」

「だって、今までいなかった。あんな、トモダチみたいに接してくるの」


2級という高ランク、その容姿。

いやでも周りから注目される。

接点を求めてくるのはその地位を利用したい、その容姿から自分のものにしたいというものばかり。



あげくのドーリィの誘拐事件。

あの事件以来、ただでさえ人とのコミュニケーションが苦手だったドーリィはミーシャ以外を信じなくなった。


ソウたちが来た時、表に出てこなかったのもそのせいだ。

自分が表に出ると、自分目当ての魔族が来る。ミーシャ以外の他人となんて、関係を持ちたくない。そんな思いで、必要最低限の外出以外はずっと引きこもっていたのだ。

しかしソウは、ソウたちは違った。


あの日、ミーシャが仕事に出なければいけなかったために受付に立った。

宿に戻ったソウたちは、ドーリィの態度に驚いてはいても変な目で見ることはしなかった。

裏から見ていても、自分の噂話など一切しない。


パーティを組み仕事した時もそうだった。

自分ばかりをひいきしない。レイやシルバー、ミーシャと同じように扱う。

「そうね。別にふたりだけで生きていってもよかったけれど、いい巡りあわせなのかもしれない」

「普通の生活なんて諦めてた。こんな風に、ミーシャと外でデートしたり、ほかの覚醒人みたいにパーティ組んでどこかに冒険に行ったり」

ソウたちと一緒にいるようになって、いつのまにかドーリィは外の視線を気にしなくなっていた。

「これからもきっと、もっとドーリィの世界は広がるわ」

「そしたら嬉しい」

ふわり、と花が開くように微笑うドーリィをまぶしいものを見るように嬉しそうに見つめるミーシャは、さらに美味しく感じるようになった紅茶を口に運ぶのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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