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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
4 絆の刻印
51/68

47

48話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


腐な表現が最後のほうにあるのでご注意を。

「これが、噂の2刀か・・・」

レイは約束通り武器屋の主人に見せるため、手に入れたその足で店に来ていた。


主人は手袋をはめ、汚れが付かないように2振りの剣をじっくりと見ている。

「抜き身を見てもいいかな?」

「もちろんだ」


刃に傷を付けぬように、すらりと剣を抜き息をのんだ。

「これは・・・なんと美しい」

クリスタルのように透明度の高い、普通の片手剣よりも刃幅が細いほうを抜いた主人は、感嘆のため息をもらす。


剣を回し、刀身をじっくりとみるとそっと鞘にしまい、もうひと振りを手にする。


「なんと」

こちらの刀身もじっくりとなめるように確かめる。

抜くと揺らめくようにかがやく、刀身に刻まれた赤い刻印が淡く光を放っていた。


剣を鞘に収めると、満足したようにうなづく。

「まさに『英雄武器』といったところだな。クリスタルのように見えるこの刀身が薄い剣は、アダマンという魔法鉱石で造られたもののようだ。限界まで薄く削られておる。だが攻撃力はかなりのものだな。こういった華奢な剣は総じて威力に欠けるが、これは『斬る』ことを極限まで特化しておるようだ。手練れが使えば、斬られたものはそうとわからぬまま消えるだろうよ」

剣をカウンターに置き、もう一方を指さした。

「こちらはよくあるタイプの片手剣だ。形状だけがよく見るというだけで、威力はとんでもない化け物だ。こちらのアダマン製の剣はどちらかといえば『速さ』に特化しているが、こちらは『攻撃力』に特化している。オリハルコンという鉱石で、おそらくなにか他の魔法鉱石も混じっていそうだ。ある程度の重さもあり、かなりの威力が出るだろう。あとはこの鞘にも仕掛けがあるようだ」

「仕掛け?」

「鞘にレッドベリルとターコイズという魔宝石がつかわれておる。これはよく『装飾』で最上級のネックレスやリングなどの細工をする際使用される。ランダムで能力がつくのだがこの鞘の場合は相乗効果でなのか、『耐久無限、破損無効』という能力がついておるようだ。剣は使えば摩耗する。それを研ぎなおしまた使えるようになる。使い続ければいずれは破損する。だがこの剣には」

「この鞘の効果があるから必要ないということか」

レイが主人の言葉を引き継いで言った。


大抵の前衛は、何に一番金がかかるかといえば武器だろう。

武器は消耗品として分類されるからだ。武器屋の主人の言うように、使い続ければいくら大切に扱っていてもいつかは破損する。研ぎ直ししていくにつれ、摩耗してゆくからだ。

強い武器ほど高価になる、手入れの道具もいいものを使う。しかしずっと使い続けていられるわけではない。


ごくまれに武器に追加効果として『耐久無限』『破損無効』が付くことがあるようだが、かなり等級が上のものか、本当にそのドロップを拾ったものが運がいいということになるほど目にしないオプションなのだ。


「良いものを見せてもらった」

主人が笑顔で剣を返す。

受け取り腰に差すレイは、逆に主人に礼を言った。

「いや、こちらこそ。かなり詳しく剣のことを知れた。また何かあったらよらせてもらってもいいだろうか」

「もちろん。おまえさん程の剣士なら、色々珍しいものを見せてもらえそうだしな」

にやりと笑う主人にもう一度礼を言い、店を出ていった。



2階の部屋に戻ると、ソウとシルバーがテーブルで雑談していたようだ。すでにテーブルの上にある菓子の類が入っていたであろう籠の中は空になっており、ふたりのグラスの中もほとんど中身は入っていないようだった。

「おかえり」

「ああ、ただいま」

「レイも戻ったし、僕出てくるね」

そう言い置いて、シルバーは軽装のまま部屋を出ていった。

「武器屋に行ってたんだっけ。剣、見せてきたのか?」

ソウは立ち上がり自分の飲み物と、レイの分も用意しようと簡易キッチンへ向かう。レイは装備を外して身軽になると、グラスにアイスコーヒーを入れてきたソウに礼を言い受け取ってから椅子に腰かけた。

「かなりいいものだった。ソウは色々大変だったろうが、おかげで長く使えるものが手に入った」

「1回で出てよかったよ、俺もうあそこは行きたくないや」

「ところで魔結晶酔いはどうだ?寝ていなくていいのか」

レイが心配そうに見つめる。ソウは自分のグラスを持ち上げて一口飲んで答えた。

「ん。ゆっくりしてたし・・・」

「無理はするなよ」

じっと見つめてくるレイに、意を決して切り出した。

「ち、誓いのことだけど!」

下を向いていた顔をあげて、正面からレイを見る。


レイの紫苑の瞳がじっとソウを見つめていた。


「誓いのこと、レイに甘えてこのままでいるわけにはいかないって思ったんだ。まだ、自分の中ではハッキリと整理はついていないんだけど、もっと色々話をしたいと思って・・・」

「・・・そのままでいいといった手前、追い詰めるようなことはしたくなかったが・・・思わず今日はあんな風に言ってしまって悪かったな。あれではソウを困らせるだけだった」

「レイ、さっきも言ったけど、その・・・レイのことは大事なのは本当なんだ。だからそんな風に言わないでくれ」

「それを聞いた時はもう、それだけでもいいとは思っていたんだ。でも・・・」

レイの手がソウの頬に伸び、指の背でゆっくりと撫でて離れていった。

「やはり想いというのはままならないな。ひとつかなうとそれ以上を望みたくなる。その言葉だけで十分だという思いの後、やはり自分の・・・」

そこまで言うと、レイは目を伏せ立ち上がった。

「いや、やめよう。ソウも深く考え・・・」

「その先は?やっと俺はレイとしっかり向き合おうと思ったのに、レイは隠すの?」

かぶせるように言いじっとみつめる天上の蒼(セレステブルー)の瞳に、レイは息をのんだ。

「レイの想いを知りたいんだ」


そういった瞬間、抱きしめられた。

つよい腕に引き寄せられ、椅子から引き上げられて抱き込まれる。

「大切にしたい、護りたいと、そう思っているのに自分だけのものにしたいと思う自分がいるんだ」


「うん」

苦しいくらいきつく抱きしめられながら、ソウはレイの想いを知る。



「すきなんだ」



まるで許しを請うように、ソウに口づけた。


お読みいただきありがとうございます。

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