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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
4 絆の刻印
50/68

46

47話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


街に帰還しました。各自したいことをしたり。

シルバーが今までとちょっと違って大人です。

スクロールを使っての移動の場合、街の中心部にある女神像の前に帰還することになる。

この女神像はポータルとしての機能もあるため街に訪れた際触れて登録すると、帰還スクロールやスペラーの移動魔法を使用した際の目印になり、それらを使用した場合にそこに現れるのだ。


ソウたちが現れると、まだ人通りの多い時間でもあったためかかなりの視線を集めたようだ。

外見上もそうだがミーシャとドーリィはギルド2級を持つ者であり、腕利きの情報屋でもあるためこの女神像で帰還すると目立つのだ。

「『猫』と『人形(ドール)』だぞ」

「最近外で見るな。あの一緒にいる男3人はよくあのふたりと一緒にいるが、まさかパーティ組んだのか?」

周りの噂話めいた声と、ピリピリした視線を感じる。しかしそのひそひそ声もレイが歩き出し腰の剣を見た瞬間、驚愕のものとなった。

「おい、あのソーディアン前まで槍じゃなかったか?ていうかあの剣見ろよ、あれ英雄級の片手剣だろ」

「噂の英雄級の武器の出る宝箱の洞窟で手に入れたんじゃないのか」

「ソーディアンの2刀なんて『暗黒騎士(ブラックナイト)』しかみたことねぇ・・・」

ざわついている広場を気にせず歩き出すミーシャとドーリィ。外野の話の中で気になる単語をシルバーが聞いた。

「『暗黒騎士』ってなに?魔物の名前?」

「ふふ、ちがうわよ。あたしたちと同じ2級のソーディアンよ。固定パーティで行動していて今は魔都にはいないけれど、2刀使いの凄腕ね。黒い刀身の剣を使っていて、敵にはかなり冷酷なものだからそう呼ばれているみたいよ」

「レイと、どっちが強いのかな?ミーシャはその人とも手合わせしたんでしょ?」

興味津々で前のめりに聞くシルバーに、レイはあきれて答えた。

「相手は2級だぞ。向こうのほうが・・・」

「あら、ご謙遜ね。あたしはふたりが()りあえば、かなりいい対決がみられると思うわよ」

レイの言葉を遮るように、楽しそうにシルバーに告げる。

「明らかにレイの実力は3級のものではないわよ。アフィズの最前線で功績をあげて帰還できる実力はもっているでしょうね」

ミーシャは妖艶な微笑みを浮かべながらつぶやく。

「それよりも、今日はもう解散にしましょ。久しぶりに残った時間はゆっくり過ごしたいわ」

そう言うとドーリィとともに宿へ向かって歩いて行ってしまった。

おいて行かれたソウたちは、そのまま顔を見合わせる。

「・・・洞窟の情報を聞いた店の主人に、剣を見せたいから行ってくる」

「あ、俺部屋に戻る。まだちょっと魔結晶酔い抜け切れてないから・・・シルバーはどうする?」

「装備屋も気になるけど、ソウと一緒にいる」

残された3人も解散した。




先に戻っていたミーシャとドーリィは、装備を外して外出着に着替えた。

ミーシャはシンプルな薄橙のワンピースに黒のレース生地で織られたショールを肩に掛け、かなり高いヒールの細かい装飾の施された淡い桃色の靴。

ドーリィはふわふわとした藍色のシフォンスカートに、襟や袖に黒のレースが縫い付けられた体の線が出るぴったりとしたブラウスで、ブラウンの皮のブーツを履いている。

「ふたりでゆっくり出かけるの、久しぶり」

何時もの無表情が嘘のように、嬉しそうにミーシャに微笑むドーリィはその腕に自分の腕を絡ませた。

ミーシャはあいている手で髪が崩れないように、やさしくドーリィの頭をなでる。

「やっとゆっくり時間が取れると思っていたけど、ソウたちが来てからはばたついていたしね。少なくとも今日は別行動できそうだし、今のうちにデートしましょ」

仲睦まじくふたりは街へと繰り出していった。



「シルバー、レイについて行ってもよかったのに」

装備を外し、ベッドに横になっているソウはけだるそうに赤い髪をかき上げながらシルバーを見つめた。

「だって。まだアディール団の件も片付いてないのにひとりにできないよ。それに装備屋はいつでもいけるけど、こうしてソウと二人でゆっくりできるのなんてそうそうないでしょー!」

ダルそうなソウを気遣ってか、ベッドには上がってこないが嬉しそうにソウの額に自分の額を合わせた。

「あ˝ーだるいの抜けないな・・・マイッタ」

「熱はないね」

目を閉じてため息をつくソウ。


少しの沈黙の後、ソウが寝ていないのを気配で分かっていたシルバーが切り出した。


「ね、ソウ」

ぱちりと目を開いたソウの目をじっと見て続けた。

「レイのこと、どうおもってる?」

そのシルバーの言葉に、目を見開くソウ。

「・・・シルバー」

「あまり介入するのよくないってわかってる。ミーシャにも言われたし・・・ソウは還り人だから、ここと違う常識の世界で生きてきたって知ってるけど」

「まいったな、ミーシャまで知ってるのか・・・ドーリィには相談したけど」

「ドーリィが言ったわけじゃないよ。レイとソウの態度で分かったみたい。ぎくしゃくしてたし、あとはあの洞窟で・・・」

「ああ、そうだよな聞こえたんだよな・・・」

諦めたように息を吐いたソウに、シルバーがその髪を撫でながら言った。

「誓いがどうとかじゃなくって、ソウたちはもっと、お互い話をしたらいいよ。この世界の命の価値は低い。いつ二度と会えなくなるかもわからない。後悔しないように、たくさん話をしたらいいよ」

「わかって、るんだよ」

「うん」

「俺の世界は、男同士とか、そういうの色々・・・」

「こっちでは、普通だよ。そもそも覚醒人は子を成せないんだよ。不老半不死だから・・・だからじぶんの『唯一』を、性別関係なく探すんだよ」

シルバーの言葉に、黙り込む。


起こってはほしくない未来だが、たしかに覚醒した時のようなことが、レイが斃れることがないとは言い切れない。

その反対に自分が・・・ということもありうる世界。

斃れないまでも、何かの事態で離れてしまうかもしれない。



この状態のままで。

レイに何も言わないままで。


「いやだ」

「ソウ?」

「シルバーの言うとおりだ。何があるかわからないこの世界で、レイとのことをいつまでもこのままにして後悔したくない」

ベッドから体を起こして、シルバーに微笑んだ。

「ありがとな、シルバー。レイと話すよ、お互いのこと、色々」


お読みいただきありがとうございます。

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