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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
4 絆の刻印
49/68

45

46話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・


洞窟で装備を手に入れたソウたちです。

「ヒールウインド」

パーティメンバーを同時に回復させる範囲回復魔法を唱え、全員の傷が癒えたのを確認するとソウはその場に座り込んだ。


あわてて傍に寄ってくるシルバーに、心配ないという風に手をひらひらと振る。

「気が抜けた・・・」

くらくらする頭を振って、ドーリィに差し出されたマジックポーションを受け取り飲み干した。

「とにかく無事に斃せたようね・・・お疲れさま」

「なんとか斃せてよかった。このパーティでなければ強制送還だったな・・・」

一番傷を負ったレイも、ソウの必死のヒールで癒えたようだ。鎧には槍が貫通し、腰周りは血痕が残ったままではあるが。

「ボス(クラス)は宝箱がある浅階には出ないはずだったけど」

「装備品のドロップがあるってことは、ボス級だったってことだろ?俺もう精神的にキツい・・・!?」

へたり込んだままのソウが、ドロップ品に目を移すと、すごい勢いで立ち上がった。

「どうしたソウ?そんな急に立ち上がって大丈夫なのか」

レイの言う通り立ち上がった瞬間立ちくらみでふらつくが、傍にいたレイが支えた。ソウはドロップのプレートアーマーを瞬きもせずに見ている。

「どうしたの?ソウ」

「これ・・・英雄(ヒーロー)級だよ・・・」

シルバーの問いに声を震わせながら答えるのだった。



ソウの鑑定眼(アブレイズアイ)によると、ドロップした防具は英雄級と言われる最上級クラスの一つ下の種類になる。

それでも普段はめったに目にすることはない代物だ。

伝説(レジェンド)級まではそこそこ店で見ることはできるが、英雄級となると価値も高くそうそう売りに出されることはない。


各地域のボス級や、アフィズでの功績などで手に入れることができる。


「英雄級ってことは、やっぱりボスだったのね」

「レイの怪我で俺てんぱっちゃって・・・あの龍族鑑定してればわかったかもしれないのに・・・」

「ソウ、効果とかわかる?」

「ホワイトアバドンブレストプレート 防御力のほかに体力、攻撃力、速度増加がついてる」

ドーリィの疑問にソウが鑑定した結果を読み上げると、一行は静まり返った。



「・・・この程度の洞窟で出るにはちょっと壊れた追加効果の付き方じゃない?」

ミーシャの声が小部屋に響く。

「と、とにかく拾っちゃってさ、宝箱探して帰ろうよ!」

シルバーが回収しようと手を伸ばすと、なぜか静電気のようにバチッと音がして手がはじかれた。

「・・・・・・」

全員で顔を見合わせ、一斉に手を伸ばすと。


レイ以外の手は、シルバーのようにはじき返されていた。

「装備が人を選ぶの?」

「いいんじゃない?どうせレイしかつけれない」

「装備した後ならまだしも、拾うのまで所有権が・・・?」

ミーシャ、ドーリィ、ソウは一斉にレイを見た。レイはいたたまれなく思いながらも装備を回収した。


装備を回収した後、気を取り直して3通路の入り口にいる龍族をすべて倒し、ミーシャが奥の様子を見に行った。

「ビンゴよ。左通路の先に、箱」

戻ってきたミーシャが一番左の通路を指さした。

「ボスは真ん中から来たのに、お宝は違う部屋とかなんか変だよね」

「そうでもない。一つトラップ、一つボス、一つ宝箱とか洞窟にはよくある」

シルバーのつぶやきに答えるドーリィは、念のためもう一度バフをかけ直して鼻歌を歌う。

「ミーシャのおかげで道に迷うことがなくて助かるな」

レイを先頭にして左の通路へと進んでいった。

道中どころか部屋の中にも魔物はいなかった。

確認のためミーシャが宝箱を調べるが、罠の類も仕掛けられてはいないようだ。

「じゃあ、開けるわね」

そのままミーシャが開けると、宝箱は消え去り、中に入っていたであろう物だけが残された。


それは、ふた振りの剣。

1本は、黒い刀身に炎のような赤い刻印の入った剣。

もう1本は、まるで氷のように冴え冴えとしたクリスタルのように繊細な少し反りのある、刀に似た形の剣だった。


まるで正反対の、1対には見えない2本の剣。

しかしよく見ると持ち手の部分が全く同じ細工がされていた。

そして剣の傍にある2本の鞘も、全く同じものだった。


「まさか1回で出ちゃうなんてね」

ミーシャが剣を持ち上げると、先ほどのようにはじかれることもなく手に収まった。

鞘にしまい、レイに渡す。

「ありがとう、皆のおかげだな」

受け取るレイは、持ち手を握ったり、鞘から抜いて刀身を確認した後腰に差していた剣をしまい、そこに装備した。

「今日はレイの装備たくさん。帰ったらレイのおごりでご飯」

「そうね、美味しいお酒でも飲みたいわね」

ドーリィとミーシャの言葉に苦笑してうなづくレイ。

「もちろんだ。ふたりなくしては手に入らなかったからな。もちろん、ソウとシルバーにも感謝している」

「よかったね、レイ」

やはり新しい装備はレイでも嬉しいのか、すこし表情が柔らかい。

「じゃあ、スクロールで戻りましょうか」

こうしてなんとか装備を手に入れた一行は、先に進むこともなくその場でスクロールを使って魔都へと戻るのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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