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42話目です。
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
洞窟に向かって出発です。
洞窟へは魔都からまずベルスとは別の村、さらに魔都から離れているスニルフェイルの港村へと飛ぶ。
そこからもう一つ奥の村、フロスティという年中雪が降り時には一歩先も見えないほどの激しい雪嵐に見舞われることも多々あるという場所へと、移動師を利用して降り立つのだ。
村は年中こんな気候ということもあり、ほぼ無人に近いようで村というよりも警戒所のように狭い。
テントのようなものが数個と、ロッジのような山小屋が1棟立っており人の姿は外にはない。
村を囲むのもただの木の柵で、その切れ目にひとり完全に防寒している姿の警備兵が立っているだけだ。
周りは山に囲まれ、道は迂回していくしかない。
幸い今日は雪は降ってはいなかったが、分厚い雪雲が空を覆っていた。
「寒い!」
最初に移動師の翼から降りたシルバーが、ローブの上に来ている防寒具の前を掻き合わせて白い息を吐く。
次いでレイ、ミーシャ、ドーリィ、ソウと降り立った。
ドーリィはすぐにミーシャにぺっとりと張り付き、暖を取っている。ミーシャはもともと肌を覆っている面積の狭い皮装備だが、防寒のために何時も履いているミニスカート型の下半身防具ではなくぴったりとしたパンツ型のものにしていた。
レイとソウも何時もの装備の上に、厚手のコートのようなものを着ている。
(やっべー・・・嘗めてた・・・)
実際にこの寒さを体験すると、想像以上だった。
肌が出ている部分に時折吹きつける風は、刺すようにソウを攻撃する。
小手を使用しているので、薄手の手袋をつけてはいるが金属部分が冷やされて手先が冷えていく。
「大丈夫か、震えてるぞ」
レイが心配そうに顔を覗き込んできた。
カチカチ歯を鳴らしながらもソウは首を縦に動かす。
「ここからあの山沿いに奥へ進むわ。歩き始めれば少しは体も慣れてくるでしょう。立ってると余計に寒いわよ」
「ライフ、シールドプロテクション」
ドーリィが出発前に強化スペルをかけ、小さく鼻歌を歌うとすこし寒さがましになったような気がした。
「体力回復のヒュムネいれておく。すこしだけどよくなるから」
「ありがと・・・」
なんとか震えは止まったようだ。
一行は村を出て山間に進んでいった。
村を出て少し先には、山道のような山道を登ってゆくための道のようなものがあった。
しかし現代と違い、きちんと整備されているわけではない。ただ歩きやすい場所を通っていったために、そこがまわりよりもわかりやすく道のようになっているだけだ。
しかし周りの雪深い、または凍っていて滑りやすい場所を歩くよりははるかにましなので、そこを通って進んでいった。
寒さの厳しい地域だからか、魔物の類はあまりいない。遠巻きに見える雪豹のような白い獣がたまに確認できるのみだ。その魔物も、遠くから見かける程度では襲ってはこないようだ。
「皆大丈夫?」
先頭を警戒しながら進むミーシャが、1時間ほど歩いたところで一度立ち止まった。
そこはちょうど周りを大きな岩で囲まれており、風もさえぎられるので休憩にはちょうどよさそうな場所だった。
「この先はもっと厳しくなるわ。このまま右手の山沿いに進んで、上へ登っていく」
「紅茶、出すよ」
ソウが休憩の声を聴いてすぐ、人数分の紅茶を出す。
アイテムボックスは基本的に入れた状態を保っていられるので、温かいまま入れた紅茶はこの気候では貴重だ。
保温ポットのような魔道具に入れて、各自に渡してさらにスコーンもひとつずつ渡していく。
相変わらずミーシャにべったりのドーリィは、ミーシャがアイテムボックスから出した毛布に一緒にくるまって紅茶を飲んでいる。
それをうらやましそうに見ながら暖かい紅茶で体内を温める。
シルバーは紅茶とスコーンを胃に収めると、ウルフ体に戻ってソウの足元によってきた。その温かい毛皮を抱きしめながら嬉しそうにシルバーを撫でた。
「ありがと、シルバー」
「ソウもレイにくっつけば?」
ドーリィがとんでもないことを提案するが、ソウは聞こえないふりをしてシルバーに抱きついていた。
「この先標高が高くなればそれだけ環境も厳しくなる。なるべく早く洞窟にたどりつけるようにここからは強行軍になるわ。ここでしっかり休んでいきましょ」
「ここからどの程度の距離なんだ?」
「そうね・・・このまま天候が持てば、2時間から3時間ってところね。ただし戦闘はしないでの場合だけど」
「このあとは休憩なしで、か。ソウ、ドーリィ、大丈夫か」
うなづく二人を見てレイが紅茶を飲み干した。
30分ほど休憩した後、一行はさらに険しい山間へと入っていくのだった。
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