38
39話目です。
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
ブックマークが増えて、うれしい限りです。
ソウがドーリィと話している間のお話です。
ちょっとだけ腐な表現があります。
一般的にソーディアンの使う武器は槍である。
リーチ、威力、どちらを取っても不足感がないことが主な理由だ。
好んで大剣を使うものもいるが、大剣は振りかぶる動作が大きくなるため、一撃の威力に頼った戦闘となり、ファーストアタックを躱された時の戦略が難しい。
そんな中でも最も特殊なのは2刀だ。
右手と左手に1本ずつ剣を持つ、いわゆる2刀流である。
大物の武器と違い当然威力が低いので、手数で勝負する。ただかなりテクニックが必要とされる。
二つの剣を振るい、敵にダメージを与えてゆく。敵が倒れる前に止まってしまえば当然それが隙になり、反撃される。
シャドウなどは短剣を使うためもっとシビアになるが、スキルには状態異常を起こすものや毒などがあり、その隙をいくらでもカバーできる。
しかしもともと盾役としての役割を占めるソーディアンには、そういったスキルが少ないので連発はできないのだ。
だから2刀で戦うソーディアンは、大剣を使うものよりも絶対数が少ない。
レイはもともと力よりも早さに重きを置いて戦闘している。
今はメインで使っているのは槍だが、実は本気で戦うとなれば2刀になる。2刀を使うとなると周りを巻き込んでの範囲攻撃が打てなくなるが、そのスピードで範囲で倒すのと同じくらいの敵を捌くことができる。
(やはり片手剣を2刀で使うとなると、それなりにいいものでないと火力が落ちるな・・・)
装備屋で剣を物色しているレイは、カウンターに声をかけた。
「すまない、やはり特殊効果があるような片手剣はオーダーかレアドロップになるのだろうか」
「今片手剣を使う連中はガーディアンのみだからなぁ・・・あまり数は置いてないんだよ。大体がオーダーメイドでたまに露店や市場に出てくる程度かな。兄さんはソーディアンだろう?槍か大剣を探しているんじゃないのかね」
老齢の店番は、白いひげを撫でつけながらレイの背中の槍を見て顎をしゃくった。
「槍ならある程度はそろっているよ」
「いや・・・2刀なんだ、探しているのは」
「ほ、2刀とはまた・・・」
「槍はある程度回っているだけあって、探すのに困らないのだが片手剣でいいものになかなか出会えないので困っているんだ」
そのレイの言葉に、2刀使いならば、と老人は口を開いた。
「ふぅむ・・・そうだな、ある洞窟で2刀専用の片手剣を入手できる。しかし宝箱からでるものらしく、まず宝箱を見つけられねばならない」
「どういった剣なのか、情報はあるのだろうか」
「ふたふりの対となる剣という。片手剣だが片方ずつでは装備できない。まさに2刀専用の剣」
「情報、助かった。いってみる。なにか謝礼を・・・」
「ほ、情報に対する礼などいらんわ。むしろ2刀など使うものはいない中で、こんな情報は価値もない。どうしても、というなら・・・」
老人がにやりと笑って、レイの肩をたたいた。
「その2刀、手に入れることができたら見せてもらいたい」
「そんなことなら。手に入れたらまた来る」
挨拶して店を出る。レイの目的が一つ増えた。
まずはその洞窟の情報入手と、パーティメンバーの同意を取りに行くべく宿へ戻るのだった。
ミーシャとシルバーが今日の実地訓練を終えて宿に戻ると、ちょうど階段を上がるレイと一緒になった。
「あら、レイも帰ってたの」
「ああ、先ほどな。ふたりともお疲れ」
「ミーシャはスパルタだ。でもだいぶ慣れてきた」
「ああ、レイ。今日の夕食はどうする?」
「そうだな、ちょっと話したいことがあるから、予定がないならミーシャたちも含めてしっぽ亭でどうだろう」
レイが先ほど聞いた洞窟のことと、武器を入手したいことを相談するために現在もパーティを組んでいるミーシャたちにも意見を聞くべく夕食を誘う。
「わかったわ。準備してここで待ってるから」
その返事を聞き、レイとシルバーは一緒に2階へ上がっていった。
「レイ、ソウまた出かけなかったのかな。部屋に気配がするから・・・」
「そうだな、もう少し気分転換ができるようになればいいんだが・・・」
そんな会話を交わしながら部屋の扉をノックしてから中へ入る。中ではソウがベッドにうつぶせになって眠っているようだった。
シルバーはさっさと装備を外し身軽になると、ソウのそばへと寄っていく。
ウルフ体に戻り、ぼふぼふと尻尾でソウの顔をたたいた。その感触に振り払おうとするが、シルバーもしつこく尾で顔を撫で続ける。
「シルバー、ミーシャからいわれるまでウルフに戻るのは禁止じゃなかったのか」
それを聞いたシルバーは慌てて人化する。いわないでね、と言って起こすのをレイに任せて1階へ降りて行った。
「ソウ」
眉根を寄せてそれでもまだ夢の世界にいるらしいソウの、シルバーのしっぽ攻撃で乱れてしまった前髪を梳くように顔からよける。
普段見えない額がみえ、そうすると目を閉じているせいかいつもより幼く見える。
そのまま髪を梳いていた手でソウの頬を撫で、薄く開いた唇を指でたどる。
ふるり、と長いまつげが揺れたのを見て、レイはもう一度声をかけた。
「ソウ、皆でしっぽ亭に夕食を取りに行こう。皆下で待ってる」
「んー・・・おかえり、レイ・・・」
もぞ、とベッドから体を起こすと、レイが差し出してきた腕につかまりゆっくり引き起こしてもらった。
「ドーリィとお茶してから・・・んー・・・寝ちゃったのか・・・」
ふあ、と大あくびを一つしてから台所へ行き、魔法で水を出して顔を洗うとすっきりしたようで、ささっと身支度を整えるとレイとともに1階へ向かうのだった。
お読みいただきありがとうございます。




