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36話目です。
第4章です。誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
説明回に近いです。
ギルドに呼び出されるソウたちです。
ソウの体調が本調子になるころ、ギルドからの呼び出しがあった。
亀裂の案件の調査が進み、3人のうち一人、魔族のローブの男からの話もあらかた整理できたようだ。
やはりはじめは全く話そうとしなかったらしいが、調薬ギルドマスターの作った怪しげな薬、自白剤のようなものらしいが、それを投与したようだ。
まだ研究途中ということで、実験的に使われたようだが効果がかなり高かったらしく、知っていることはすべて吐き出したようだった。
副作用として現在も昏睡状態のようだが・・・
「あたしとレイで行ってきてもいいけど、どうする?被害者であるソウから直接話を聞きたいみたいだけど、別に絶対じゃないのよ」
ミーシャが腰に短剣をつけながら、ソウに言う。ギルドから通達があったのは今朝のことで、いわく無理はせずに来れるようならとのことだ。
シルバーの毛並みを撫でながらソウは椅子から立ち上がる。
「十分休んだし、一緒に行くよ」
そう言うと、シルバーが人化した。
「僕もいく!」
「っていうかシルバーは何で普段から人化したままでいないんだ?獣型のほうが楽なの?」
「だって、ソウに撫でられたいしブラッシングしてほしいし・・・」
成体したとはいっても、まだまだ心は甘えたい思いが強いようで、普段はほとんどウルフになってソウにべったりだった。
「悪い、待たせたか」
レイが階段から降りてくる。いつも通りの自主練をして、汗を流してきたようだ。軽装ではあるが剣を差している。
宿に鍵をかけ、全員でギルドへと向かうことにした。
ここのところ何かあると通される個室に集合する。
さすがに5人も押し掛けると手狭になる。ソファにはソウとミーシャとドーリィが座り、レイとシルバーは立っている。
総括であるヴィダルの椅子の後ろにはロクスバが控えており、書類を渡してから奥へと入っていく。
奥からはコーヒーの香りが漂ってきた。どうやらロクスバが用意していたようだ。
ヴィダルが渡された書類を読み上げて説明していく。
「ローブの男から吸いだした情報だ。あまり外に漏らすもんでもないんだが、ソウ、お前のことを言っていたんでな。伝えておいたほうがいいだろうと思って呼び出した」
ロクスバが人数分のカップをもって戻ってくる。各自に配膳し終えると、ヴィダルの後ろへと戻った。
「まあ、まだ研究段階の薬を使ったせいなのか、時系列やつながりがまったくばらばらでな・・・」
ぺらぺらと書類をめくる音が響く。
「まず、ソウが攫われた理由から。どうやら天族の男のほうはただの雇われで、今回ソウを攫ってアディール団に引き渡すためだけに魔界へ渡らせたそうだ。そこでなんで魔族ではなく天族にって話になるんだが・・・どうやら、天界では魔界にあった研究所での案件、あったろ」
「偽造スティグマの?」
「そうだ。アレがな、向こうにも流れていたらしい。魔界ではつぶされた研究所、しかし情報は既に天界に流れていて、ついに実用に至ったスキルがあの『上位ハイド』だったようだ。その効果を確かめるためにも天族であるシャドウに『新しいスキル』をエサにしてお前を攫わせるようにしたようだ」
あくまで表面上はスキルの性能確認で、かどわかしはついでという風に伝えていたそうだ。
「魔結晶が濃い者ほどより本物に近いスティグマができる、という結果から、ソウを攫おうとしたようだな・・・しかしそれをどうやって知ったのかがなぁ・・・」
「俺を拾ってくれた占い師と、その師匠、スティグママスターはオレの魔結晶濃度が濃いっていうの、見てわかるようだったけど」
「オーラ、というかそういう感じに見えるみたいだな、感応力が強い覚醒人には。もしかしたら前回の研究所の案件の時に目をつけられたのかもしれないな・・・とにかく、アディール団はお前を手元に欲しいようだ。天族の男には適当な理由をつけて攫わせて、天界に連れて行くつもりだったらしい」
コーヒーを一口飲んで、カップを置くと盛大な溜息をついた。
「アディール団は天界にもあり、そちらは協定を結んでいて大々的に存在しているらしい。魔界の状況を伝えることを条件にしているってよ。天界からしてみたら場所さえ与えて、ある程度目をつぶっていれば勝手に魔界の状況がわかるんだ。つぶすわきゃねえよな。魔界としては、どうあってもなんとか情報が漏えいするのは避けたい。そうすると、魔界のアディール団だけでもつぶしとかにゃあならん」
「天界にアディール団がある限り、つぶしてもまたできると思うけど」
「嘘か真実か、団長のアディールは天族とも魔族とも会話できるんだろう?意思の疎通ができる人物がいたら、どちらかをせん滅しても頭がいる限りどうしようもないよな」
ドーリィとソウの言葉に、ヴィダルが頭をガシガシと掻いて書類をロクスバに渡した。
「その通りだ。アディール本人をどうにかしない限り、どうしようもない。だがアディールに関しては謎ばかりでお手上げだ」
アディールは覚醒人である。
それはかなり昔からアディール団があることに由来する。アディール団はできた当初から団長が変わったことはなく、ずっと団を立ち上げた本人が代表として支えているのだ。
できた当初から2か月ほど前までは、善意団体であり、そこまで首都を騒がすような事件などおこさずひっそりとしていた。
しかし急激に団員を増やす勧誘を始めだし、その勧誘もかなり強引な手を使っていたりと以前とは比べ物にならないほど目立つようになったのが2か月前。
同時に失踪事件がおこり、今に至っている。
代表が変わって方向性が変わったのならともかく、変わっていないのに団の方針が変わる。
それも、周りを巻き込んで。
しかも団員は皆、アディールを『神』だという。
まるで新興宗教のように、盲目的に信仰している。
わかっているのはこれだけだが、こうしてみるとかなりあやしい。
「ギルドも騎士団も、アディールを危険視して調査を進めることにした。アディール団の情報も、買い取るように依頼掲示板に常に出している。お前らも、何かわかったらなんでもいい、情報をよこしてくれ」
ただし、とコーヒーを飲み干してソウを見た。
「ソウ、お前はおそらくアディール団にマークされている。絶対にひとりにはなるな。無理はするな。こちらも何かめぼしい情報があればそちらに流すようにする。とにかくアディール団員は多いうえ、どこに潜伏しているかわからないからな」
ヴィダルはソウの周りのメンバーに目を走らせて言った。
「ミーシャ、ドーリィ。しばらく情報屋としての仕事はいい。かわりにソウたちとパーティを組んで行動しろ。人数は多いほうがいい。レイ、シルバー、何があっても絶対にソウを一人にはするなよ」
「わかったわ」
ソウとしても、まるで守られっぱなしで気に食わない思いはあるがあれだけ恐ろしい思いをした後だ。さすがに進んで一人になろうとは思わない。ここはおとなしく話を聞いておくべきだとうなずいておいた。
「ギルドと騎士団で男から出たアディール団の潜伏先を調べる。何かあったらすぐに知らせるから連絡はとれるようにしておいてくれよ」
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