表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
3 亀裂出現
37/68

34

35話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・

今回もちょっとだけ腐な表現があります。

シルバーは降り始めた雨の中、革袋をくわえてミーシャたちのもとへ走っていた。

いつもパーティで行動するときは、移動は馬に合わせて行っていたため余裕があった。


今は一人。

自分が出せる最高の速度で、走る。

馬ならば40分ほどかかるのではないか。その距離をシルバーは15分ほどで駆け抜けた。

雨が本降りになる前に、ミーシャのいる亀裂の詰め所にたどり着いた。


詰所では、すでに撤収準備が行われていた。シルバーに気付いたドーリィが、近づいて咥えている革袋を受け取る。シルバーを伴ってすぐにミーシャのそばへ向かった。

「ミーシャ」

「あれ、シルバー。ん、これは・・・?」

差し出された革袋からメモを取り出す。メモはレイが書いたものだ。

「『ソウの状態が落ち着くまで村途中の小屋にて雨を避ける』・・・ああ、本降りになりそうだものね」

遠かった雷はかなり近くなってきている。撤収作業もかなり急いで進めているようだ。

「シルバー、ありがとう。先ほど亀裂が消えたのを確認したから、あたしたちが捕縛した3人を捕虜としてバルディウムに戻ることになったの。シルバーも一緒に戻りましょう」

「くぅん」

心配そうに来た道を振り返るシルバーに、ドーリィがいさめながら言った。

「ベルスで待ってよ」

「ああ、そうね・・・ヴィダルに伝えてくるわ。現物(ほりょ)がいるし状況報告も済んでるから、詳しい聞き取りは後日でもいいでしょ」

ミーシャはそう言って亀裂の消えたあたりにいるヴィダルに、自分たちは村に行くことを伝えに行った。



雨が本降りになる前に、亀裂周辺の臨時詰め所は解体し、警護をしていた者たちも一斉に戻っていく。

フェンリルの牙の団員が捕虜3人を連れていくようだ。

捕虜を運ぶ荷台を引く馬と、警護する何人か以外はスクロールといわれる移動魔法が書かれたものを使って、魔都へ飛んだ。

「じゃあオレたちも魔都に戻る。捕虜の件もあるから、そうだな、2,3日後くらいにギルドに来てもらえれば助かる」

ヴィダルはミーシャたちに伝えると、そのままスクロールで戻っていった。

あとにはミーシャ、ドーリィそしてシルバーのみが残っていた。

「急いで村に戻りましょう」

ミーシャとドーリィは馬に乗り、シルバーとベルスへ向かう。

雨が、強くなりそうだった。



ざあざあという雨の音よりも、雷の音が腹から響くように鳴っている。

雨もまるで滝のように激しく叩きつけており、時折吹く突風で小屋がきしんでいた。

「酷くなってきたな」

「壊れないよな・・・」

ふるり、とマントに包まれた身体を震わせながらソウが不安そうに上を見上げた。震えているソウに気付いて、レイが肩を引き寄せて自分の体で包み込む。

「ちょっ、い、いいって・・・」

「寒いんだろう。こうしていれば少しは暖かい」

もぞもぞと居心地悪そうに抜け出そうとするソウを、引き留めるように腰に腕を回して抱き込む。

どうあってもはなさなそうなので、抜け出すことはあきらめてレイに体を預けた。

「レイは、イスハルに来る前の記憶って戻ったのか?」

「・・・断片的に、というか・・・おそらく崩壊に関する記憶、というのはまったく思い出せない。それに関係ないようなものなら、戻ったというんだろうな」

「それにしても、俺を天界に連れてこうとしたのもなにか関係があるのかな。あの天族の女は、俺が天族に害なす存在になるとか言ってたけど」

「ソウは、天族の言葉がわかるのか?」

驚いたようにソウを見つめるレイ。

普通の魔族には天族の言葉はわからない。還り人の中には、翻訳を試みる研究をして、文書ならばというものもいるようだが話しているのを聞き取れるものはまずいない。

「龍族語も読めたし、言語に関して何かしら恩恵があったのかも。天界にもアディール団がいて、魔界と密に連絡取ってるような感じだった。これって報告するべきだよな」

「その辺はもしかしたら捕虜から出るかもしれないな」

「変な薬飲まされそうになったとこから記憶がないんだよな・・・気づいたらここにいて・・・」

「それはもう思い出さなくていい」

ぽん、とソウの頭に手のひらを乗せた。


静かになった小屋に、遠くなった雷の音と鳥や虫の声が聞こえる。

雨はもう、上がったようだった。


「立てるか?」

「ん、平気だと思う」

ふたりは装備を付けて、外に出る。

ふわりと匂う、雨上がりの鮮やかな緑のかおり。

空にはすでに雨雲はなく、薄青に白く輝く月が見えていた。


レイはソウを前に乗せて、村へと急いだ。

ここからベルスまではおおよそ30分ほど。つく頃には夕方になりそうだ。



お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ