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3話目です。
誤字脱字などお目汚しがあるかもしれません。
蒼士が初めて異世界人と交流します。
バイクに轢かれたと思ったら、ゲームの世界にいた。
そんな安いノベルみたいな・・・もしかして今昏睡状態で、夢を見ているのかもしれない。
夢にしてはリアルすぎるけど・・・
移動前にいったんは落ち着いたはずなのに、また混乱してきた頭を抱えてうずくまる。
目覚めないと、
ホントに夢なのか?
俺の頭がおかしくなった?
この肌に感じる風や音、においも全部本当に夢?
眠っているなら早く、早く目が覚めてくれ!
ぐるぐるぐるぐる思考の渦に巻き込まれ、オーバーヒートしそうになったその時。
先ほどまで鈍い痛みだったはずが、突然の激しい頭痛に襲われる。
「うぁ・・・っ!」
ガツンと頭を殴られたような痛みの後、蒼士は気を失いその場に倒れこんだ。
ちょん、ちょんと遠慮がちに引っ張られる蒼士の前髪。
それに呼応してか、ふるり、と閉じた瞼が震える。そして右手が寝台から持ち上げられ、今まで引っ張られていた前髪をかき上げた。
バサバサッという羽音を立てて大型の色鮮やかなオウムが飛び立っていく。その音ではっきりと意識が覚醒し始めた。
なぜかあの激しい頭痛は収まっていた。
「ようやくお目覚めだね」
しわがれた声が響く。蒼士は寝台から上半身を起こして、声のほうに体を向けた。新緑のうすびれたローブの老婆がそこに立っていた。
「薬がよく効いたようだ。体に違和感などないかね」
「・・・あなたが俺をここへ?」
「見つけたのはその子さ。なにやらアストレイヤのものでない物の気配がすると、教えてくれたのさ。湖畔で倒れていたのだよ、お前は」
(アストレイヤ・・・)
その言葉に考え込んでしまった蒼士を見て、その老婆はふ、と息を吐いた。
「たまにおるのだよ。異界からのお客人が。」
その語り掛けに顔を上げると、老婆が続けて語り掛けた。
「渡り人というのだよ。このアストレイヤではない世界から堕とされたもののことさ。人だけではない。時に獣、時に魔物。色々なものが堕とされてここへくる。お前は幸運だったよ。その感じだと、堕とされてからさほどたってはおらぬであろう。渡り人はそのほとんどが、この世界になじめずに儚くなってゆく。それは戦うべき力がない、術がない、生活してゆく力がないとかね。まぁあたりまえだね。もともとの世界と全く違う場所に突然堕とされるんだ。その場所だって、魔物の巣やアフィズといわれる覚醒人のみが生きてゆける場所なんかだったら堕ちてきた瞬間にお陀仏だからね」
本当に幸運だったよ、という老婆。
アストレイヤ、アフィズ、覚醒人・・・
明らかに知った言葉がどんどん飛び出してくる。
(もう、これって決定的?それとも・・・)
昏睡で夢、の希望を捨てきれない蒼士。しかし次の言葉で考えは変わってゆく。
「信じないならそれでもいいが、そんなに甘い世界じゃない。生きてゆく術を学ばなければ、あっというまに死ぬよ。疑いは持ったままでもいいが、今ある現実は認識しておいたほうがいい」
そう、たとえ夢だとしてもいつ目覚めるかもわからない。
ならば覚悟を決めてこの世界になじむ生き方を知って、生きていくしかない。
いつか目が覚めて、ここが夢だったとしてもなんのデメリットもない。
「ばあさん、助けてくれてありがとう。俺は蒼士・・・ソウ、だ。助けついでにここのこと知りたい。教えてもらえないか」
「・・・今回の渡り人はずいぶんと聞き分けがいいことだ。いいだろう、拾ったのも何かの縁だ。アストレイヤのこと、ここでの生き方、アタシが教えてやろう。ただ飯食いは勘弁だ。できることはやってもらうよ、ソウ」
こうして蒼士のアストレイヤでの生活が始まる。
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