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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
2 魔都バルディウム
29/68

27

28話目です。

ブックマークありがとうございます。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・

今回少しだけ腐な場面がありますのでご注意ください。

今回もほんのちょびっとですよ・・・

宿の部屋に戻ると、レイはソウを椅子に座らせた。自分もソウの向かいに座る。シルバーは、ソウの足元にそっと寄り添い体を伏せた。

「どうしたんだ。何か言われたのか」

「魔結晶エネルギーが不安定で、このまま放置すると変調をきたす可能性があるって言われたんだ。普通の還り人とはかなり違う体質みたいだし、俺、どうなるんだろ。あの研究所にいたゆがんだ魔結晶エネルギーを噴き出した男みたいになるんじゃ・・・」

かたかたとテーブルに置いた手を震わせて、瞬きもせずに目を見開いている。

「還り人はその絶対数が少ないことから謎も多い。他がすぐにこちらの世界になじんでいるから自分だけがと不安なのもわかる。だが、徐々になじんでいると占い婆も言っていたんだろう?適正だってちゃんと現れた。スキルやスペルだって使えている。まだなじみ切っていないということは、伸びしろがあるということだ」

「でもっ!もし自分がこのままどうにかなったらって思うと・・・!」

椅子から立ち、頭をかきむしるように真紅の髪を手でつかむ。


混乱と興奮で息が荒くなる。見開いた蒼い瞳。

異界から来たその身に宿す魔結晶エネルギーの恐ろしさ。

なかなかこちらになじみきらない自分の身体。

今までいた世界では味わったことのない、鋭くなった感覚でみる世界。


頭がパンクする、そう思った瞬間、暖かい何かに包まれた。

「もし、ソウに何かあってもオレが絶対に引き戻してやる。見捨てたり、諦めたりしない。ずっとそばにいる」


レイの体温に包まれて、少しずつ落ち着いてゆく。

心臓の鼓動が聞こえる。

ソウはそっとレイの胸に耳をつけた。

ふわふわと髪をやさしく撫でる感覚がある。

目を閉じて、ふぅっと息を吐くとシルバーが足元にすり寄ってきた。


「ありがと・・・ごめん」

「いや、落ち着いたか。ソウも堕ちてきて1か月ほどだ。そろそろ色々なことが見えてきて、不安になるのもあたりまえだ。ソウはソウだ、他と比べることはない。ソウが異端だというのなら、オレだって異端だ。未来から過去へ戻った魔族などオレだけだろうからな」

レイの心臓の音でだんだんと落ち着き冷静になってきたソウは、今の状態にふと我に返り、慌ててレイの腕から抜け出した。

「な、なんか・・・ほんっと・・・ごめ・・・」

顔を真っ赤にして下を向くソウに、レイが噴出した。

「んなっ、なに笑ってんだ!」

「・・・ック、あまりにすごい勢いで逃げて行ったから・・・クク、照れているのか」

「ち、ちがっ!にゃろう!!」

ソウはレイの胸をたたいたが、当然レイはびくともしなかった。

「くっそー・・・」

「落ち着いたところで、昼飯に行くか」

少し遅い昼食へ繰り出した。



大体昼食は露店で済ますことが多いソウだが、今日は昼のピークを過ぎてしまったからか、広場の露天商はかなり少なくなっており昼食というよりも甘味などが中心になっていた。

ソウやシルバーは甘いものが好きなので、昼が遅れるとおやつ系で済ませることもあったが、さすがに甘いものは苦手なレイにはきつい。

なのでテラスのあるカフェへと入ることにした。


広場で一番大きなカフェなので、サンドイッチやパスタなどの軽食も充実しているし、何よりテラスがあるのでシルバーと同席できるのがいい。

ソウたちは店員に断りを入れ、シルバーとともにテラス席の端へと座った。

「いらっしゃいませ」

「んと、このはちみつたっぷりフレンチトーストとカフェオレ、ミルクとふわふわパンのハンバーガーを」

「このビーフサンドを、それとコーヒーで」

「かしこまりました」

オーダーをすますとソウは果実水を半分ほど飲み干す。

「確かにヴェルには魔結晶エネルギーが外でくすぶっていて、時間とともに大きくなった器へとなじんでいくっていわれたんだよな。でももうこれだけ時間がたっているのにっていう思いもある」

「占い婆か?・・・一度、行ってみるか?あれだけ大きな案件の後だ、さすがにしばらくは落ち着くだろう。ギルドや騎士団も後始末で忙しいだろうし」

「んー、いいのか?」

「もちろん、皆で一度戻ろう」

どうせ移動師で一瞬の距離だ、とレイが言うとシルバーも頭を擦り付けてきた。

「おまたせしました」

ちょうど注文した食事も来た。

「食事の後で支度して向かおう」

「えっ、今日?!」

「憂いは早いうちに取っておくべきだ。こちらで起こったことも話しておきたいしな」

「ありがと、レイ」

ソウはフレンチトーストとハンバーガーを半分にして、シルバーの前に置く。

ハンバーガーはナイフを入れるとたっぷりの肉汁があふれ出し、ふわり、と香ばしくスパイシーなにおいが立ち上る。

しっとりとはちみつで濡れているフレンチトーストも、ナイフを当てるだけでほわりと切れる。

レイのビーフサンドイッチにはこれでもかというぐらいに薄切り肉が詰め込まれており、挟まれた断面から零れ落ちそうだ。


3人は食事をゆっくり味わい、一息入れた後で宿へ戻りイスハルへと飛ぶのだった。



お読みいただきありがとうございます。

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