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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
2 魔都バルディウム
28/68

26

27話目です。

ブックマークありがとうございます!

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・

後日談的な。スティグマ関連もあります。

また、刺青についての記述が少しありますのでご注意ください。

バルディウムでは失踪事件の真相が解明されて、さらに大きな案件として持ち上がっており騎士団やギルドの上部では大忙しのようだ。

研究所の封鎖や、捕縛したアディール団からの聴取などやることはたくさんある。

研究所襲撃の後2、3日はソウたちも呼び出され、調査時の状況などのすり合わせが綿密に行われていた。

毎日同じことを聞かれて辟易としてきたころ、聞き取りは終了となった。


あとは、各団体での今後の対応と失踪して行方が分からなくなっていた覚醒人の家族への説明、偽造スティグマの調査など専門機関の出番である。


聞き取りも終わり、落ち着いたところでソウが気になったのはスティグマだった。

「なぁ、レイってスティグマつけてる?」

「ああ、失踪事件の前、ちょうど3級に上がったころにいれてもらった。とりあえず3つ」

そう言ってばさり、と上着を脱ぎ上半身裸になると、前見たときはなかった刺青(タトゥー)のような文様が背中と左右の肩から二の腕にかけて彫られていた。

「え、なにスティグマって刺青なの?!」

「そうだ。ああ、ソウは還り人だから詳しくは知らないのか・・・実際に彫るわけではなくて、スキルやスペルを即時発動できるように魔法式を体に入れておくんだ。魔法式は入れ替えもできる。簡単に言うと魔法を使うときに出る魔方陣を体に書いているというところか」

(ボディペイント的な感じかな)

うーん、と腕を組んでいるソウを見ながらレイは服を着ながら、さらに詳しく説明した。

「スティグマは、研究所にあったような石にスキルやスペルが封印されているもののことを言う。石によって封印されているものは違っているが、入手時は完全に運だ。魔物素材に紛れて落ちたり、洞窟の奥に落ちていたり、宝箱に入っていたりするらしい。入手したものの自分が使えるスキルやスペルだとは限らないから、使えないものは大抵取引されたりしているな。取引数もそこまで希少なものではないから金額もさほどではない。ただ入手方法がどこで、いつと特定できないので、魔族への神の恩恵と言われるんだ」

「俺でもつけれんのかな?」

「行ってみるか?魔都にいる職人のところに」




スティグマ職人は噴水広場の向かい、ちょうど酒場や宿屋のある通りと真逆にある騎士団詰め所、中央堂にいる。

街で過ごすときの軽装で向かったソウたちは、中央堂を入って左手の奥へと進んだ。入口の受付に人が座っており、そこで申請するようだ。

「ようこそ、スティグマをお求めですか?」

受付に座っている女性が対応してくれるようだ。

「還り人のスティグマ装着はここでも可能なのだろうか」

「はい、今はマスターがおりますので可能です。どの種のスティグマをご利用ですか?」

「キュアを」

「こちらが今現在こちらで取り扱っているストーンの種類でございます。キュアだとこのページ、4ページ分ございますが、ストーンの在庫があるものが斜線の引いていないものだけになっております」

受付の女性が机に本を取り出して見せてくれる。ソウはのぞき込んで何があるのか見てみた。

4ページ中、約2ページ分ほどはすべて斜線が引いてある。

「・・・んー、失明魔法、継続ダメージ魔法、範囲回復、範囲状態回復かぁ・・・俺は何個つけれるんだろう」

「ギルドランクに比例しておりますよ。5級なら1、4級なら2とランクが上がるごとに増えていくようです」

「じゃあ3級だと3個か。よし、失明魔法のフラッシュ、範囲状態解除のピュリケーション、範囲回復のリカバリーにする」

「承りました。中に入って上半身の装備をすべて取ってお待ちください」

女性が裏の扉から中へ入る。

「オレたちはここで待つ」

「え、俺ひとり?」

「基本的にスティグマは施術自体が秘術だ。施術中はパーティメンバーだろうが家族だろうが本人以外は立ち入ることは禁止だ」

「えー・・・」

いってくる、とひとりで中へと入っていくのだった。


中はそこまで広くはなく、机やテーブルのようなものは一切ないところだった。

ほのかに香る香油の匂い、室内を照らしている美しい花のような形のランプ、荷物を置く小さな台。

ソウが上半身裸になり服を台に置いた時、奥からきわどいスリットの入った薄布をまとった女性が現れた。

「還り人さん、ようこそアストレイヤへ。歓迎いたしますわ。スティグマを必要とされているとのこと。施術させていただくマスターのフェイリンと申します」

「ソウです、お願いします」

「では、まず確認いたします。フラッシュ、ピュリケーション、リカバリーの3種類ですわね・・・あら・・・?」

フェイリンがソウに近づいて失礼、と言ってから肩口や背中に触る。

「・・・こんなことは初めてですわ。ソウ様、今現在3級とおっしゃられていたようですが、施術できるのは2つまで。ほかの還り人の方は多くつけられることはありましたが少なくなるとは・・・」

「・・・2こなら2こでいいですよ。困ってないし。フラッシュとピュリケーションで」

「そうですか・・・原因はちょっとわたくしもわからないですが、還り人の方々はまだ謎が多いですわね」

では、と表情を引き締めて香油皿にオイルを垂らした。

「始めます。目を閉じて、楽にしていてくださいまし」

ソウが目を閉じると、フェイリンの歌うような詠唱が聞こえた。

「汝求めし力を魔結晶により解放する。主なりしものを守護せよ」

ちりちりとソウの両腕が熱くなり、何かが表面を這いまわっているような感覚があった。

その感覚が収まると、フェイリンが声をかけてきた。

「無事に成功いたしました。両腕にスティグマが定着しましたわ。スペルの交換はいつでもできますのでまた変えたいようでしたらどうぞ。あと定期的にソウ様の身体を見させていただいてもよろしいでしょうか」

「・・・なにか不具合でも・・・?」

「魔結晶エネルギーが不安定、までは行かないのですが魔結晶が若干身体に定着しきっていない感じが見受けられました。変調をきたす可能性も考えられます。定期的に見ておけば、変化をすぐに確認でき次第どうとでもできますでしょ」

「わ、かりました」

「そんなに心配しなくても、そこまでのものではありません。不安にさせてしまいましたね。念のため、ということですわ」

にっこりと微笑まれ、扉をあけられた。

「1週後にお待ちしておりますわ」


お疲れさまでした、という受付の声に送られ、ソウがレイとシルバーの元へ戻ってきた。

どことなく暗い顔をしているソウに、レイが声をかける。

「・・・どうした」

「俺の身体、どうなってんだろ」

はぁ、とため息をつくソウに、レイはただならぬものを感じて宿で話を聞くことにした。



お読みいただきありがとうございます。

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