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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
2 魔都バルディウム
27/68

25

26話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・

研究所編終了です。

スティグマとは、ゲームでは特別なスキル、スペルのことで1キャラにより5つまで装着することができる。スティグマスキル、スペルは色々あるが、その中から自分が使いたいものを選んでつけるのだ。

スティグマスロットというところに、スティグマ職人に持っていくと装着できるシステムだった。


「こっちの箱の中身もスティグマね。なんでこんなにあるのかしら。でもよく見るとこれ、大きさがバラバラね・・・スティグマの紋章もなんだかあいまいだし」

スティグマを手に取ってみると、本来8職の紋章が中に浮かび上がっているはずだが、なにやらもやもやとしていてはっきりしていない。

「こっちへ来てくれ」

レイが奥の机から1冊の本を手に取って皆を呼び寄せる。


皆で顔を寄せ合い本を開き中を確認すると、とんでもないことが書いてあった。

「『魔結晶逆流装置が完成。まずは実験のため身寄りのない覚醒人を選び魔結晶を変換する。スティグマストーンにはならず、石のままである。なお、魔結晶をすべて変換すると覚醒人の死体は通常の死亡時のように大気に溶けることはなく、残るようだ。後日魔結晶の濃い力ある覚醒人で実験する。』」

パラパラと本をめくり、研究日誌のようなものを確認する。

だんだんと力の強い覚醒人をさらい、実験を繰り返していったというようなことと研究成果が書かれていた。

「あ、ここ、ヴァムキン様の名前」

ミーシャが指さしたところを見ると、こう書いてあった。

「『とうとう正規のスティグマと擬似ないものができた。覚醒人を使ってスティグマストーンが作れる確証ができた。これをちらつかせより良い条件での取引ができるだろう。量産するための考察に入ることにする』これはここだけで済みそうにないわね。より大きい組織や集団が絡んでいそうだわ。まさか魔族への恩恵といわれているスティグマを人為的に作ろうとしているなんて」

「早く戻って報告かな」

「急ぎましょう」

ミーシャがレイから本を受け取り鞄にしまうと、縛り上げた兵たちは一旦奥の部屋にまとめて研究所から魔都へと向かうのだった。



バルディウムへと戻った一行は、すぐにギルドへと入っていった。ロクスバに総括へつないでもらうと同時に個室へ駆け込んだ。間をおかずにヴィダルがロクスバと鎧を着こんだ男性を伴って入ってくる。

「ヴァムキンの行方が分かったらしいな」

「この本を」

さっとミーシャがヴィダルに先ほど拾った本を差し出す。ヴィダルが後ろのふたりに見えるように本を開いた。ページをめくるごとに3人の顔が険しくなっていく。

「・・・なんてことだ。覚醒人を使ってスティグマストーンを作るだと?」

「まだ研究所すべてを確認してないけど、おそらくこの実験所の逆の部屋にも何かあるかもしれないわ。とにかく先にこの情報を渡しておきたかったからいったん戻ったの」

ミーシャの言葉にヴィダルがうなづく。

「フェンリルの牙の隊長を連れてきてよかったな。ソウ、レイ、こいつは魔都防衛の要となる騎士団、フェンリルの牙のクシバルだ。騎士団からも研究所に派遣してもらう」

「本来は騎士団で取り締まるべき案件、ギルドから手を借りることになり本当に助かる」

ガシャ、と鎧の音を響かせてこちらへ頭を下げる。

「研究所は完全封鎖する。そのためにまた行ってもらうことになるが・・・」

ヴィダルが申し訳なさそうにソウたちに伝えるが、ミーシャが不敵に笑んでこう言った。

「報酬、期待しちゃうからね」



また同じルートで研究所に舞い戻ったソウたちは、滑るように踊り場まで入ってゆく。

ソウの強化魔法を掛けられると、レイとシルバーが左手側の部屋に突入した。


部屋は普通の書斎のようになっており、警備兵たちは多くはいなかった。

レイとシルバーとでターゲットを集め、まとめたところでミーシャが煙幕を張り、吹き飛ばされてくる敵を昏倒させてゆく。

このパターンでほぼ倒していけるため、足止めは食らわずに奥まで到着した。

奥は小部屋になっており、中には一人の男がいた。

「ここの責任者ってとこかな」

ミーシャが男を見てつぶやく。

「服装を見て。かなりいいものを身につけてる。上流階級なのかも」

男は鎧ではなく仕立ての良い服を身に着けている。にやにやとしながら手に持った石を眺めていた。

「捕縛かな」

「オレが行く」

そういうとレイが入り口から素早く男に詰め寄ろうとする。男は驚いた風だったが、手に持っていた石を掲げるとまばゆい光に包まれた。

「レイ!」

「・・・大丈夫だ!」

光が収まってゆく。

ソウには、男から禍々しいむせかえるような魔結晶のエネルギーが噴き出しているのが見えた。



「そいつ、おかしい!!!」

ソウが叫んだ瞬間、小部屋が激しい炎に包まれた。


「しんだかな?このできそこないのストーンでも、じゅうぶんやくにたつ。いっときのおのれののうりょくきょうかならばもんだいなくしようできる」

多重音声のように不快な音で男がつぶやく。

炎が収まると、そこにはバリアに包まれたソウたちが姿を現した。

「っぶね!バリア間に合った」

「ソウ、すごい観察眼ね」

「ばう!」

「危機一髪だな」

バリアが消えた瞬間、レイとシルバーが飛び出して男に迫る。

怪しい行動をとらせまいと妨害する。その背にミーシャが音を立てずに短剣を抜き放ち、切り付けた。

「ライトニング!」

最後にソウが雷で麻痺させ、ミーシャがついでとばかりに麻痺毒を食らわせると男はかくり、と気絶した。

「あの変な魔結晶エネルギーも消えた」

「何か見えていたのか?」

「光が収まった後、この男からゆがんだ魔結晶エネルギーが噴出してたのが見えたんだ」

「還り人だからこその感性か。助かった」

ぽんっとソウの頭をなでる。

「捕縛完了っと。あとは騎士団に任せて戻りましょ」

ソウたちはくすぶっている小部屋を後にした。




人の頭ほどの大きな水晶玉が、その様子を映し出していた。

薄暗いがかなりの広さの部屋である。置いてある家具も、アンティーク調で洗練されたものであった。一目でかなりの地位の人物の部屋だとわかる。


「還り人か。先見にはなかった事案だな」

水晶玉の映像を見ている人物は、妖しいまでの美貌だった。透き通るような肌、純度の高い金を落とし込んだようなくすみ一つない金髪、面長の整った貌はすっと通った鼻筋、薄い唇はまるで血を刷いたように真っ赤だ。


何よりその切れ長の瞳は、瞳孔部分は猫の目のように鋭く真紅だった。



そばに控えている妖艶な体の黒髪の女が、男に聞いた。

「駆逐いたしますか?」

「いや・・・」

男が妖しく笑んだ。


「我のペットにほしいな」

水晶には、ソウの姿が映っていた。

お読みいただきありがとうございます。

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