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25話目です。
ブックマーク増えていました。ありがとうございます!
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
敵の研究所に潜入です。
途中休憩を入れながらも岩場を進み、2時間ほど。あんなに遠かった建物が、急に目の前に現れた。
周りを赤茶けた土の切り立った崖で囲まれた、外見は大きな洋館。しかし周りを巡回しているものがかなりいる上に、屋敷の入り口は物々しく警備されている。
屋敷の奥からも巡回らしき者が、二人一組でまわっているようだ。
そして外でもまだ何かを建築しているのか、材木や作業員などが多数いた。
パッと見指揮官のようなものはおらず、皆各々の作業を黙々とこなしているようだった。
ソウたちがいるのは、研究所となっている屋敷の左手にある何かの建物の建設現場の奥だった。
材木や工事道具の物置になっており、その上の丘から覗いているのだがたまに木材をまとめて取りに来る作業員が来るほかは、巡回などは来ないようだ。
「研究所の中がどうなっているのかは?」
レイの問いにミーシャが苦い顔をした。
「残念ながら奥までは入れなかった。手前のあの、入口を入ってまっすぐ。その突き当りの広場から左右に道が分かれていて部屋につながっているところまでは行けたんだけど、部屋に入る前に斥候系がハイドしてたみたいで」
「それ以上は進めなかったのか」
「見破りスキル使うとこっちのハイドが切れちゃうしね。気配でいるのはわかったんだけど、部屋の入り口も狭いしすり抜けは無理そうだったから」
奥の部屋割りなどはわからないが、そこまでの兵の数は大体わかっているようだ。
ちょうど建設員が木材を荷車に積み出した。
「あの建設員が行ったら降りて、まずは入り口の兵と中から外へ巡回してるのを入口入ってすぐの踊り場で倒すわ。あたしが入口左右の兵の注意を引いてそのまま中に入るから、入って巡回がいればそいつと一緒に倒す、いなければ連れてきた兵を倒して踊り場で巡回を待って倒す」
「ミーシャが入口に入ったらすぐにオレが範囲を打つ。巻き込めそうなら巡回も引っ張って打つ」
「ん、そろそろ戻りそう。ライフ、プロテクション」
ソウはミーシャに体力と防御の強化魔法と体力持続回復のスペルを、自分を含め残りには体力と防御の強化のみを掛けた。
スペルの掛け終わりと同時に作業員が背を向けて荷車を引き始めた。ミーシャが丘から足音を立てずに滑り降り、飛ぶように入り口の警備兵に一撃ずつ切り付け、そのまま中へ入り込んだ。
後を追うようにシルバーが走りこみ、ちょうど奥から来ようとしている巡回の注意を引いてミーシャの方へ引っ張ってくる。ソウとレイはその後ろから入口を抜け、巡回を引き連れたシルバーを目視する。
「きたな」
レイがミーシャの横に走りこみ、槍を振り上げた。ミーシャがそれを見て煙幕を張り、混乱して動けない兵たちの横をするりとぬけて範囲外へ出る。
レイの槍が振り回される瞬間、シルバーが横を駆け抜け、そこに追いかけてきた巡回が走りこんできた。
「ふっ!」
激しい勢いで振り回された槍に、3人の兵はひとたまりもなく吹っ飛ばされる。
その兵たちに麻痺毒をぬったミーシャの短剣が音もなく襲い掛かった。
ぐったりと倒れる3人のアディール団員兵をロープで縛り、猿轡をして踊り場の端にまとめた。
「それにしてもレイとシルバーの連携すごいね。シルバーもよく槍が振り下ろされるとこに走りこめるもんだわ」
ミーシャがぽふぽふとシルバーの頭を撫でてほめると、うれしいのか尻尾を振って喜んでいた。
「力は強くないがしてほしいことをすぐに感じ取ってくれて、助かっている」
「さくっとターゲットを移したいシャドウにしたら、ああやってすぐにまとめてもらってタンクが受け取ってもらえると助かるわ。さて、今回はあくまで調査。とりあえず団員はこのまま捕縛で、奥に進みましょう」
入口から突き当りに出て、左右の分かれ道の警備兵を倒すとミーシャは見破りスキルを使いまずは右手の部屋の中を見た。
「・・・ハイドは部屋の隅に一人ね。奥が見えないけどなにかガラスケースのような器具と機械が見える。部屋の中に何個か箱がある。ハイド以外の兵は手前側に4人ね。魔法系が2、回復系が1、前衛が1、そして隅のハイドが1。奥は・・・気配から人数だけなら4ってとこかな」
ミーシャの報告に自分も部屋を見つからないように覗く。
「結構密集してるな」
「確実にひとりに切りかかれば、5人来るわね。部屋で闘ってたら奥にいるのがきそうね。一番手前をこっちから狙撃して、全部がリンクするようならそのままこの部屋で倒しましょ」
ソウがスペルをかけなおし、レイが弓で一番手前の剣を持った兵に矢を放つ。矢を切り落とした兵がほかの兵を連れてこちらへ走ってきた。
「全部来たな」
「回復に沈黙いれるわ」
「剣士足止めする。リストレイン」
ソウが入り口を抜ける前に剣士に足止めのスペルを掛けると、地面から生えた蔦が剣士に絡みつく。回復師が剣士に解除スペルを掛けようとした瞬間、ミーシャが背後から襲い掛かり、沈黙を掛けた。
「いただきっ」
そのまま後ろからスペルを打とうとする魔法師を剣の柄で思い切り昏倒させ、もう一人に意識を向けるとそちらはシルバーが体当たりをして弾き飛ばしていた。
足止めスペルが切れ、ソウに切りかかろうとする剣士をソウの前に立ちふさがり槍で突き飛ばす。
「レイ、ありがと」
「ささっと縛っちゃって、転がしときましょ」
先ほどと同じように、ロープで縛り猿轡をして部屋に入っていった。
「さっきのハイドと合わせて5ね。・・・あのガラスケースと機械は何なのかしら」
「とにかく先に兵を何とかしてからゆっくり調べよう」
「ここはオレが突っ込んで全部のターゲットを引き受ける」
そういうとあっという間に槍を構えて部屋の奥に走っていった。シルバーも後を追う。
「んじゃ、まとまったら煙幕して、あたしたちは個別撃破で」
すっと消えるように敵に向かっていくミーシャ。
ソウも先に魔法系の敵にライトニングをうち、昏倒させるとレイたちの動向を見ながらリストレインをかけたりした。
「ソウ!」
剣士の攻撃を受けているレイが珍しく戦闘中にソウに声を掛けた。
「ケースの裏だ!」
その声にガラスケースの裏手に回ると、壮年の男性が倒れていた。
抱き起すと、すでに息はなく、体は冷たくなっていた。
「リヴァイブ!」
光は男性を飲み込むが、そのまま消えてしまった。男性が目を開けることはない。
「無理だ、もうなくなってかなりたってる」
「間に合わなかったってことか」
レイとミーシャが敵をさばき切り、縄を掛けるとそばに寄ってきた。シルバーが慰めるようにすり寄る。
「・・・ヴァムギン様だわ」
ミーシャが手を胸に当てる。死者への弔いの姿勢だ。
「間に合わなかったのは残念だけど、今は調査を。その箱を開けましょう」
かたり、と箱を開けると、そこには。
宝石のような、薄青色の美しいものが収まっていた。
「刻印・・・」
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