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23話目です。
遅くなりましたが何とか更新できました。
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
ちょっと時間を進めました。
バルディウムを拠点にしてから2週間ほど。
その間、特に目立った『異常案件』というのはなく、魔都まわりの討伐依頼を中心にこなしていき、現在ふたりの等級は3まで上がっていた。
登録後1か月たたず3級まで、というのはかなり早いランクアップのようで、またウルフも連れていて目立つ見た目というのもあってバルディウムではそれなりに知られるパーティとなっていた。
ウルフのシルバーもこの2週間でかなり大きくなり、今では大型犬ほどの大きさになった。
しかしもともとが人懐こいので、街の一般人には大人気で歩いていると必ずといっていいほど声をかけられ、子供たちには抱き着かれる。
ソウの調薬や料理も、上級クラスの物が作れるようになっており、定期的にギルドに支給用ポーションを納品したりしてそれなりに安定した生活を送っていた。
広場のカフェのテラスで昼食を済ませ、ギルドに午前中の分の依頼の報告に向かうとちょうどロクスバが出てくるところだった。
「ロクスバ!」
レイが声を掛けると、一直線にこちらへ向かってきた。
「レイさん、ソウさん、シルバーくん。指名依頼となります。奥の部屋でお話しますので、来ていただけますか」
緊張した面持ちのロクスバに、ソウたちは気を引き締めてギルドへと入っていった。
女神像から個室へと移動すると、そこにいたのは総括のヴィダルだった。
依頼書らしき紙の束を読みながら難しい顔をしている。紙から顔を上げて訪れたソウたちに座るように言う。
「面倒な案件が上がってきた」
バサッと紙をテーブルに投げ置く。その中の一枚を拾い、ソウが読み上げた。
「『民間信仰教団 アディール団についての調書』?最近よく聞く名前だな」
「そのアディール団だが、ここのところきな臭い。それなりに昔からある教団なんだが、前はおとなしかったんだがな。最近になってベルスに研究所のようなものを作り、何やら研究しているらしい。魔都の騎士団が何をしているのか呼び出して聞いても、まったく口を割らないどころかかなり反抗的な態度だったようだ。先日何人か調査でその研究所を探るように言ったんだが・・・」
「帰ってこないとか?」
ふぅ、とソウの疑問にため息で答え、新たにテーブルに散らばった紙の一枚を渡す。
「『覚醒人失踪』これ、1週間前くらいから噂流れてるよな」
「そのなかの一人、ヴァムギンという男がいなくなる直前アディール団と接触しているのが目撃された。それもあって再三アディール団に情報を聞き出そうとしても、まったく反応がなくてな。それもあって騎士を派遣して調べさせようとしたんだ」
「失踪した覚醒人はどの方も著名な方でした。ヴァムギン様もそれなりに高い地位にいるにもかかわらず、一般の方にも優しく気さくで人望がおありでした」
ロクスバが残念そうに失踪した人物のことを語る。
「このどう考えても怪しいアディール団の研究所を調べてほしい。かなり危険な任務になるが」
「その教団、前はごく普通だったのだろうか」
「ああ。ここ1か月前までは普通の集団だった。どちらかといえば教団というよりクランのような集団だったな。それが1か月ほど前から、リーダーのアディールを神のように言うようになり、執拗に教団員を増やそうと勧誘したり・・・研究所ができたのもそのころだ」
レイの問いに答えるヴィダルに、ソウがつぶやいた。
「急に変わった・・・か」
「本来ならかなりの危険を伴う、これは2級以上の案件だ。さすがに3級のお前らだけで行かせられない。この調査書を作成した、2級の腕利きと組んでもらう。この後紹介しよう」
一時間後にソウたちの泊まっている宿で集合となった。
(覚醒クエストも、魔都のネームドもゲームの知識とは違う箇所がでてる。今後このクエストの知識は役に立たなくなりそうだよな)
部屋に帰りシルバーに寄りかかり、そのふわふわした手触りを楽しむ。最近は体が大きくなりしっかりしてきたので、ソウが抱き着いてもふらついたりしなくなった。
「どうした?ソウ」
「んー?」
「ここに、しわが寄っているぞ」
レイがソウの眉間に指をあてる。
「なんか急に大事の案件だから、色々ね」
「オレは行動を共にする腕利きが気になる。今までソウとシルバーとしか行動しなかったからな。どんな人物なのか・・・」
「あー。やなやつだったらどうしよう。総括の紹介だから途中でやっぱり俺らだけでいいですーなんて言えないし」
シルバーの毛並みを整えながら憂鬱そうにふたりで溜息を吐いた。
立ち上がったソウを見て、シルバーも起き上がる。ソウたちは時間10分前に階下の食堂へ降りて行った。
時間ぴったりにロクスバが宿へ入ってきた。
「ああ、もう降りていらしたんですね。すみません、統括が騎士団に呼ばれてしまって、顔合わせは僕だけになってしまいますが・・・」
「依頼のこと自体は先に聞いてるから問題ないよ」
「その2級の助っ人は?」
レイが問いかけると、受付奥からミーシャが出てくる。紅茶を持ってきたようだ。
「おまたせ」
全員の前に紅茶を、シルバーの前にはミルクを置いてから3人の座っているテーブルの空いている一つの椅子に座った。
「あたしよ。その2級って。よろしくね」
頬杖をついて片目をつぶってほほ笑んだ。
お読みいただきありがとうございます。




