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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
2 魔都バルディウム
23/68

21

22話目です。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・

宿主とのちょっとした交流など。

昼を広場の露店で適当に取り、一度宿に戻る。

ちょうどミーシャの姿が見えたので、話しかけてみた。

「昨日、もう一人の宿主と会ったよ」

「ドーリィ?あのこ、変わってるでしょ」

「あー。すっごいマイペースっぽいよね」

「昨日夜はもう一つの仕事に行っててね。普段はあのこには裏にいてもらうんだけど」

「もう一つの仕事」

「こんな部屋数が少ない宿で、そこまでの宿代でもないのにつぶれないのはおかしいと思わない?」

物価をいまいちまだ把握してはいないが、確かに部屋数がたった3で、しかも自分たち以外の泊り客がいないので大丈夫かとは思っていたが。

「宿屋は副業なの。メインの仕事が酒場か宿屋をやってると便利なのよ。でも酒場だと面倒な客が入ってきたりするとね。あのこ中身はあれだけど見た目は美少女で、なんか変なのを引き寄せるのよね」

「確かに人形みたいだよな」

「いつもは一般のお客さんは入れないんだけどね。仕事の方が暫く入らないかと思って。でもなんか緊急事態らしくてねー」

「そっか。まぁ俺らは適当に外で飯食ったりするし、気にしないでくれよ」

「そ。悪いね」

「でさ、その代わりと言っちゃなんだけど、服を買いたいんだけど」

いいとこない?とミーシャに質問をなげかけた。



「結局服屋はあの高級邸宅のそばの1軒か・・・」

普段使いできる服となると、大抵ローブのデザインを変えた物か、露店の服飾職人の作った物を着るかになるようだ。

高級邸宅そばの服屋は、いってはみたもののブランド品ということで今の稼ぎでは買えそうもない。

「いっそ裁縫でも上げるか・・・」

裁縫技術が上がると、魔法の威力が上がるようなローブを作製できる。キュアの攻撃は基本的には魔法だ。あげておいても損はない。

「メンドくさい。露店みるか」

基本めんどくさがりなソウは、即諦めた。

広場に戻って普段使いできる服やローブを売っているところをまわってゆく。

あまり奇抜ではない、装備の下に着れるようなものやあっさりしたデザインのローブなど、2、3購入していったん荷物を置きに宿へ戻った。



部屋にはいると自分の荷物をベッドにおろし、手を洗った後に紅茶を入れた。

カバンから露店で購入した菓子を出す。

レダイムのジャムを入れ、シルバーにはミルクを置いた。菓子も食べやすい大きさにしてからちゃんと皿に盛ってやった。

「ふー。ジャムも減ってきたな」

ヴェルお手製のジャムは、まだまだ自分では同じような味は出せない。料理技術も上がってはいるのだが、長年やっているものとは違うようだ。

ヴェルから渡された瓶は、残り一瓶になっていた。

もくもくと菓子を食べていると、シルバーが顔を上げて扉を見た。少しの間の後扉が開いてレイが入ってきた。

「おかえり」

「ただいま。戻っていたのか」

「中級も作れたし、あとはちょっとした散策。露店でうまそうなお菓子売ってたから買ってきた」

「調薬ギルドはどうだった?」

レイは鞄や装備を置きながら、ソウに尋ねた。一瞬難しい顔をしてから答えた。

「・・・すごい前のめりでしゃべる人がいた」

「・・・そうか」

レイもどう反応すればいいのか、微妙だった。外から戻ったレイには冷たい紅茶をストレートで出し、追加で菓子をまた皿に盛った。

「・・・ソウはまた菓子か」

「えっレイはいらない?」

「ひとつふたつでいい」

「そういやジャムも入れないし、もしかして甘いの嫌い?」

いや、と言って冷たい紅茶をソウに礼をしつつ飲む。

「肉が好きだな」

「直球だな!肉かよ!」



ちょっとしたティータイムを終わらすと、ちょうどいい時間になりギルドへ出かけることにした。

昨日の依頼達成時に立ち会った職員がいたので、そちらへ向かうとむこうも気づいたようでわざわざこちらに向かってきた。

「わざわざありがとうございます。今日はこちらではなく奥の個室へどうぞ」

「こんちは、わざわざ個室?」

「ええ、上の者が直接話を伺いたいと。おそらくネームドの行動や攻撃を詳しく知りたいのだと思います。お時間取らせますが・・・」

ギルド員が申し訳なさそうに謝るが、ソウたちはこの後の予定はないので気にしないでと伝えると、ほっとしたような表情を浮かべた。

「こちらへ、どうぞ」

ギルド内の個室は、入口からずっと奥にある女神像から移動する。

女神像にふれると個室のある場所に飛ばされるのだが、内密な談議や依頼、会議などで使われるため完全に密室のようになっている。

女神像で移動した先はかなり広めの部屋になっており、大きめのテーブルとソファがあった。ソファには壮年の男性が座っており、ギルド員が一礼した後その男の後ろに移動した。

「まぁ座ってくれ」

ソウたちは男の向かいのソファへと座った。シルバーはレイが抱き上げている。

「魔都バルディウムのギルド統括のヴィダルだ。早速だが先日のフライブ異常繁殖の件で聞きたい。魔都のそばの湖にネームドが沸いていたそうだが、詳しく話してもらえるか?」

「わかりました。初めは普通に殲滅できるかと、フライブを狩っていて。でも数がなかなか減っていかないんで湖を散策することにしたんです」

「おう」

「魔都から若干離れた入り組んだ場所の奥に、異常な数のフライブとネームドがいました。『フライブクイーン マギサ』、背に昆虫の翅が生えた女性です。目が昆虫のような複眼で、色みが全体的に白と青、ようはフライブと同じ色だった。名前からしてもあきらかに原因だろうと、狩りました」

とりあえずソウがそこまでを説明した。ギルド員が奥にキッチンがあるのか、コーヒーを持ってきた。

「長くなりそうなのでよかったら」

シルバーにはちゃんとミルクを置いてくれた。ヴィダルがコーヒーをすすった後、ソウを見る。

「で、だ。そのネームド、行動や攻撃はどんなものだった」

「魔法師系、体力半分までは取り巻きのフライブで一斉攻撃のみ。ネームドは攻撃なし。半分超えたら、風範囲魔法で攻撃してきました。取り巻きの追加召喚はなく、その後はスペル中心である程度するとまた範囲を放ってくる感じで、範囲前行動は翅を羽ばたかせてました」

「詳しくて助かる。もう沸かないとは言い切れないな。この情報はギルドで共有させてもらう。この依頼でかなりの功績になるな。等級を上げておこう」

ギルド員が差し出した紙にヴィダルがサインする。

しゃべり続けていたソウは、コーヒーに砂糖とミルクを入れて半分まで飲み干した。

ギルド等級は5級からスタート、その数字が若くなるほど高いということになる。登録したばかりのふたりは、5級。ただ3級までは普通に依頼を受けていれば簡単に上がるが、2級からはギルドとの面接や試験などがあるようだ。現在2級以上のものは魔族全体で10名しかいない。

紙を渡されて見ると、そこには『条件達成にて4級へ昇級』と書いてあった。

「この後下の受付で手続しといてくれ。頼んだぞ、ロクスバ」

「はい」

「あとは報酬か。ネームド情報も正確だったし、あのままほっとけば魔都に入ってくるのも時間の問題だったろうな。その辺加味して10万コニーってとこか」

「そんなに?!」

ソウが驚きの声を上げる。

「10万なんてなぁ、装備なんかしら買ったらすぐふっとぶぞ?等級が上がると受けられる依頼なんてな50万100万ざらだぜ?まぁ昨日登録してきた新人だと報酬としてはかなり多い額になるな。ただこっちとしても有望株は早く上にあげちまいたいんでな。これ元手に装備揃えて依頼を受けてもらえればそれで」

にやりと笑ったヴィダルはソファから腰を上げた。

「ゆっくりしたいがまだ仕事が残っているんでな、先に戻らせてもらう。早く上がって来いよ、有望株ども」

そういって部屋から消えていった。


「はー。まさかの一番上と話すことになるとは」

「すいません、統括がどうしてもと言うので。最近は異常事態のような案件が多く、上でも情報がほしいんです」

「こういう『普段は起こらない』ようなことが多いのか」

レイがコーヒーカップをソーサーに戻しながらロクスバに聞くと、困った顔をしてうなづいた。

「・・・そういう案件、あったら優先的に回してもらうとかできる?もちろん等級の問題があるから受けられるものだけでいいんだけど」

シルバーを撫でて考えていたソウが聞いた。

「可能ですよ。最近の依頼の数の多さは、ほかの魔族覚醒人たちでもまわりきらないくらいです。とくにそういった案件は嫌厭されるので、ギルドとしては助かります」

「じゃあ、そうしてもらおう」

そう言って立ち上がるソウを追って、レイとロクスバも立ち上がった。

女神像に触れて1階へ戻る。

「では、僕、ロクスバがレイさんとソウさんの担当をするようにしますね。よろしくお願いします」

「よろしく」

その後通常受付へ戻って報酬を渡されギルドの等級を上げてもらい、その日のメインイベントは終了した。




お読みいただきありがとうございます。

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