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Astleyer fantasy ーMMOの世界が現実になった時ー  作者: 秋本速斗
2 魔都バルディウム
21/68

19

20話目です。

ブックマーク登録、ありがとうございます。

誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・

蒼士くんパーティ魔都を散策。

湖のフライブを一掃し、魔都に戻ったソウたちはまず一度宿に戻り、身軽になってからギルドへと報告に向かった。

ギルドは24時間開いてはいるが、依頼の報告は早いほうがいい。



ギルドに入ると、夕方にかかるかどうかの時間だからかそこまで混雑はしておらず、ぽつぽつと開いている受付も見られた。

人のいない受付で一番入口に近いところに行くと、ギルド員に声をかけた。

「すんません、この依頼なんですが」

ソウが代表してギルド員の向かいに座り、依頼画面を呼び出す。

「フライブ殲滅ですね、・・・この『フライブクイーン マギサ』というのは・・・?」

依頼画面はそのまま証明にもなるようで、何を倒した、や何をドロップした、など詳しい情報が自動で追加されていくようだ。

ソウたちがどう説明しようと悩んでいたが、依頼書自体にすべて書き込まれるのでギルド員はそれを見て確認するだけで、嘘もつけない仕組みになっている。

「・・・なるほど、このネームドがフライブの『異常繁殖』に関わっていたのですね。ありがとうございます。この依頼はなかなか受けてくださる方もおらず、受けてくださっても原因の特定まではできなかったのです。このまま何もせず放置されていれば、バルディウムによからぬ影響が出ていたかもしれません。これで安心して一般の方々の外出禁止区域の解除ができます」

ピン、という音とともに依頼画面が消え、ギルド員から報酬が手渡される。

「こちら討伐分の報酬です。原因の特定と排除につきましてはこれから上へ報告、その後報酬額など確定いたしますので、申し訳ありませんがまた明日ギルドへお越しください」

「わかりました。また明日きます。時間は今日くらいでいいですか?」

「はい、ではよろしくお願いいたします。依頼達成、お疲れさまでした」

ぺこり、と頭を下げられる。

じゃあまた、とソウたちは受付を後にした。


「依頼、受けると勝手に記入されてくんだな」

「説明せずともいいのは助かる。オレは話すのは苦手だし」

今はソウがいるから任せられるが、とレイ。

ソウも人に理解されるように説明するのは苦手なので、あのシステムは非常に助かった。

どのような仕組みかはわからないが。

(なんかありがちな新人に絡む冒険者的なイベントなかったな)

ちらっとレイを見る。

(・・・こっちはどう見ても新人に見えないしなー。まぁ面倒が減っていいけど)

「どうした?」

「あ、なんでも。夕飯どうしよっか。その辺入る?それとも宿で頼む?」

「まだ時間も少し早い。色々見て回ってみるか?魔都を見て回りたいと言ってただろう」

「ん。じゃあ生産ギルドの場所も確認しておきたいし、さらっとまわろっか」


ギルドの先の小道を入ったところに、各種生産ギルドはある。

すべての生産職は、ここで各々職人について学んだり、製作したりする。ソウたちは開かれている入り口から覗いて見てまわった。

調薬ギルドは一番奥で、人気がありそうな職なのになぜか全く調薬している人がいなかったのが不思議だった。

一番人が多かったのは、金属系の鍛冶だった。

「鍛冶が人多いな」

「武器のメンテナンスを自分でするか、人にしてもらうかによるな。大抵の前衛職は鍛冶をある程度まで上げている。自分の武器に能力をつけたりできるからな」

「あー強化値ランダムで能力つくやつか」

「基本的に自分の装備に関係あるものは自分で上げているのが普通だな」

「ポーション系作って売るっていうのは主流じゃないのか・・・」

「大抵がパーティで行動するようだ。一人は必ず回復職がいるだろうし、無理しなければポーションは使われることが少ないな」

「えー」

調薬をあたりだと思っていたソウには、かなり残念なお知らせだった。

「きゅーん」

「ありがと、シルバー・・・」



生産ギルドのほかに、少し奥まったところにある高級邸宅のある地区の服屋や装飾屋、美容院のような場所を見たり、そこから裏道を通って図書館に出て、酒場のある道へ戻ってきた。

ある程度さらっと1週すますと、ちょうど当たりが薄暗くなって表通りを歩く人々も増えてきた。

「混む前に入るか」

「シルバーも一緒に入れるとこがいい」

それを聞いたシルバーははたはたと尻尾を振って嬉しそうだ。

「ならば酒場へ」

ちょうど『銀の猫』の2件隣りの酒場には、表看板に『ペット・召喚なんでもご一緒できます』と書いてあったのでそこへ入ることにした。


「いらっしゃいませー」

ポニーテールの元気な、16歳くらいの女の子が接客に来た。

「わ、かわいいウルフ!さ、空いてるとこどこでもどうぞ」

にこにことシルバーを見ながら店の中に誘ってくれる。

メニューどうぞ、とテーブルに座るとメニューを置いていった。愛想がいい看板娘、手入れされた綺麗な店、値段も手ごろな酒場だというのにソウたち以外に客がいない。

「よさげな店なのに早いにしても客いないな」

「ペットや召喚と一緒っていうの、あまり好かれないみたいで。うちは数少ないスピリツァーさんかよほどのペット愛好家じゃないと来店してくれないんですよ。はい、お冷どうぞ。ウルフちゃんはお水でいいかな?ミルクもあるけど」

ソウの問いに答えたのは、お冷を持ってきた先ほどの娘だった。

「あ、ごめん。純粋に気になっただけ。この仔はシルバー。シルバー、ミルク貰う?」

「わう」

「あは、尻尾振ってる。ミルクもってくるね」

引き返すとすぐに戻ってきて、飲みやすそうな深皿にたっぷりミルクをついで中に入っていった。

「スピリツァーって少ないのか」

「大抵魔法師系統はスペラーを選ぶな。なんといっても攻撃魔法の威力が高い。ソロでも戦闘はこなせるし、パーティでもいると戦闘に幅が出る」

「なるほどね。あ、俺これにしよっと。本日の魚定食」

レイがソウの決まったコールを聞くと、手を上げて先ほどの店員を呼んだ。

「はーい」

「俺ねー魚定食。あとシルバーにこのお肉たっぷり犬系栄養ご飯。レイは?」

「この本日のおすすめ肉セットで。あとエールを」

「お魚は白身なので煮魚です。お肉はボアーの腸詰めとステーキです。よろしいですか?」

お願いします、とふたり声をそろえて返事をすると、にっこり笑って店員が中に引っ込んでいった。オーダーを伝える声が聞こえてくる。


先に来たエールと、サービスでいただいた果実水で乾杯する。

果実水は、レダイムのほかに柑橘系の物が入っているようだ。甘酸っぱい中にもさわやかな香りがした。

シルバーをあやしながら雑談していると、たいして待たされもせず食事が運ばれてくる。

まず先にシルバー、その後テーブルにふたりの食事がおかれた。


白身魚はふわふわと肉厚で、淡いだし汁がたっぷりとかかっている。

素揚げされた野菜も色々と乗っている。そしてなんとご飯とみそ汁のようなものがついていた。口直しにか、浅漬けのようなものまで置いてある。


(白飯!おしんこ!みそ汁!!)

ファンタジー世界だからと半ばあきらめていたが、食事形態は変わらないようだ。

日本人だけに堕とされてから今までで一番うれしいことだった。


向かいの鉄板では、じゅうじゅうとソースが焼ける香ばしい香りが胃袋を直撃してくる。

腸詰めは一旦ゆでた後で鉄板に乗せられたのかぱんぱんな状態で、こんがりと焼き色がついていた。

ステーキも、それ何キロ?というぐらい肉厚のものがどかんと乗っている。申し訳程度にポテトとブロッコリーのようなものが端にあった。パンはバターロールのような大きさの物が2個、皿に乗っている。


「ちょっと、レイの方やばくね?量」

「値段にしては多いな」

ちなみにシルバーのご飯は普通だった。おいしそうにはふはふと食べている。

いただきます、と箸をつけるとふわっとしているが身くずれしない絶妙な煮つけ具合だ。

口に入れると優しいだしの味が広がる。

「んま!」

その口に白飯を放り込み、咀嚼する。確かに向こうで食べていた米と同じ味だった。

みそ汁をすすると、こちらもしっかりとだしの味がありなおかつ具には野菜がたっぷりと使われている。

「美味いな。なんでこんなに客がいないのか不思議だ」

レイもエールをあおりながら肉を食べている。ソースは野菜系のようで、すり下ろされたものだった。肉に絡めて食べると、ソースの甘さが肉のくどさを和らげる。

腸詰めも、かみちぎると中から肉汁があふれ出てくるほどジューシーだった。

ソウもレイもシルバーも、満足ゆく食事となった。


お読みいただきありがとうございます。

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