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16話目です。
またまたブックマークが増えていてとてもうれしいです!
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
今回ほんのちょびっと腐な感じがあるので、お気を付けください。
ほんのちょっとですよ・・・
あの儀式をしようとしていた獅子族が倒されたからなのか、帰り道は全く敵は現れずスムーズだった。石の洞窟前の茂みに隠れていた男も拾って、駐屯地を目指す。レイが荷車を引き、蒼士と男が後ろから押して進む。子供たちは何かの薬剤の効果なのか、目を覚ますことなく駐屯地に着いた。
レイの姿が見えたとたんの大騒ぎである。何せ1週間以上も見つからなかった、半分あきらめていた村の子供たちが無事で戻ってきたのだ。
まだ子供たちの意識が戻らないこともあり、伝令をとばし村から親を呼ぶ。その間にレイも今回の事件が思いの外大事であったことを伝えに、いったん村に報告へ行くことになった。
「悪いが、ココで待っていてくれ。戻り次第占い婆の小屋へ送る」
「わかった」
シルバーを抱いたままの蒼士にそう告げると、レイは移動師を使って村へ戻っていった。
レイと離れている間、蒼士は駐屯地のすぐそばで採集していた。シルバーが周辺を見ているというのもあるが、自分でも周辺の魔物の位置情報や、危なくない位置の採集物など把握できるようになっていた。
ぷちぷちとレダイムを摘んでは鞄に入れる。
たまにシルバーにも渡して、食べさせたりもした。
採れる範囲のレダイムを摘み尽くしたころだろうか、時間にしてみれば30分ほど。
空に跳ぶ移動師の翼にレイを見て、駐屯地へ戻った。
「ソウ、シルバー、待たせた。龍族の侵攻のことも伝えてきた。小屋に戻ろう」
「レイ、立て続けで疲れないか?休憩入れないで平気か」
「ソウたちが行けるならば送ってゆく。休憩は小屋でとれればいい。婆にも話しておかないとならないしな」
「じゃあ、早く戻って休憩しようか。シルバーもいいか?」
「あう」
しっぽふりふり答えるシルバーと頷く蒼士を見て、レイは駐屯地の者たちに手をあげ、二人と1匹はその場を後にした。
ざわついた雰囲気を感じ取ってか、ファングウルフも駐屯地から遠ざかり身を潜めていたので、森までの道で戦闘は起こらず小屋まではスムーズに到着した。
柵に入り、扉に近づくとそれが開きヴェルが姿を現した。
「お入り」
顎をしゃくって中にはいるように促す。シルバー抱き上げた蒼士とレイは小屋へと入り、テーブルについた。
ヴェルが紅茶を入れている。
シルバーは周りの様子をうかがい、きょろきょろとあたりを見回す。
レイを伺うと、鞄から手紙を出していた。
「とりあえずまずはゆっくりしな。その新入りはミルクを」
3人分のティーセットとジャム、スコーンをテーブルに置き、シルバーの前にはミルク皿を置いた。
いいの?というようにこちらを見ているシルバーに、お疲れ様、ゆっくり飲みなと言い自分もいそいそとスコーンを手に取った。
「いただきます」
「今回は手を貸して貰ったおかげで、犠牲者なく収束した。まさか龍族の侵攻の危機だったとは思わなかったが、事前に止めることができた」
それと、と手紙をヴェルの方に滑らせる。
「村長から、渡せと言われた」
ヴェルは飲んでいた紅茶のカップを静かにソーサーに戻し、手紙を受け取り封を開けた。
しばらく目で文章を追っている。
その間にも蒼士はスコーンに落ちるほどジャムをのせてぱくついていた。シルバーにも当然分けている。
「レイ、お前はこの手紙を読んだのか?」
「渡せと言われたので読んでいない」
「・・・おまえの過去について、力になれぬかという話だった。どうやら村長はおまえのその尋常ならざる力は、過去に何かあるのか、と思っていたようだ。こんな小さな村で終わる器ではない、もしかしたら過去が戻れば覚醒するのではないかとな」
「・・・それで?」
「このイスハルに幽閉されている覚醒人がいるのは知っているか?その覚醒人はあたしの師匠だ。彼ならばおまえの過去をひもとけるかもしれない」
どうする?と目で問う。レイはヴェルの目をまっすぐに見て頷いた。
それを見たヴェルは、蒼士とシルバーにも同行を言い渡す。
「そこの、口にジャムべったりの二人も一緒に行って貰うよ!」
夢中でむさぼっていた蒼士とシルバーは、急に声をかけられたことにびっくりして顔を上げる。
「ソウ、おまえの先行きにも関係あることになるだろう。あと、そのウルフの仔、大切にするんだよ」
「シルバー?言われなくても大事だけど・・・何か関係あるのか?」
「その仔はお前たちの助けになるよ。ただのウルフではないよ」
「ひとの言葉を理解しているし、賢いなとは思ったけど」
「それよりソウ、ここに戻ってきたと気を抜いているんじゃないよ。お前もレイについていくんだ」
そうしてレイを見つめる。
「今だ適性も現れないソウだが、おそらくもうすぐにわかるだろう。ソウも、何があっても絶望せず諦めぬように」
ヴェルが立ち上がり仕事部屋へ行ってしまった。残された二人は顔を見合わせる。
「また、一緒に行くことになりそうだな」
「そうだな。ソウたちにはオレの都合であっちこっちと連れまわしてしまうが・・・」
「俺だって何にもできないのについていくし・・・色々安全に見て回れるからこっちとしては助かるけどな」
多少おどけていうと、レイがぽかんとした表情をした後ふ、と笑んだ。
「ソウ」
「ん?」
ついてる、と言って頬に手を当てて親指で何かをぬぐう。
指についていたのはレダイムのジャムだった。レイはそのままそれをぺろり、と舐めてしまった。
「甘い」
「・・・っ?!!?」
ガタンッと椅子から立ち上がる蒼士。
顔が真っ赤だった。
「そ、そういうのうかつにやるなよ?!しかもおとこに!!!」
「・・・っ!」
自分が今何をしたか思い立ったレイの頬がだんだんと赤くなる。
手のひらで顔を隠し、下を向いて小さくすまん、と謝った。
なんとなく気まずい雰囲気になりながらも、蒼士がテーブルの皿に手を伸ばすと、もうスコーンがなくなっていた。
「あ・・・もうない」
そんなにたくさん食べた覚えないんだけど、と思いながらしょんぼりと紅茶を飲み干す。
皿を見たシルバーも何となく寂しい顔をしていた。
「二人とも、師匠に連絡がついたよ。今日はもう遅い、ここへ泊って明日朝飯を食べたら向かうといいよ」
仕事部屋から戻ったヴェルが、そう告げる。そしてテーブルを見てため息をついた。
「相変わらずだねソウは・・・全部食っちまったのかい」
「おっ、俺だけじゃなくてシルバーだって食べてたよ?!」
心外な、と怒りはするもののレイはほとんど口をつけていないし、シルバーがいくら食べたといってもまだ子供なので実際は自分がかなり食べたのだろう。
ちなみに大量に盛ってあったジャムはきれいに使い切られてある。
「とにかく夕飯を作るときには手伝ってもらうよ。レイはお客なんだからゆっくりしておいで」
お読みいただきありがとうございます。