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15話目です。
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誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
蒼士くん、頑張ります。
石造りの短い洞窟を抜けると、少し開けた場所に出た。茂みの多く茂っている場所に、よく見ると一人の男が震えながら隠れていた。それに気づいた蒼士がレイの背をつつくと、レイも気づいたようでそちらにそっと向かっていった。
「大丈夫か」
「ヒィッ・・・!」
男はかすれた声で小さく悲鳴を上げ、しかし相手が同じ魔族だとわかると安心したようで一気にしゃべりだした。
「た、助けてくれ。獅子族がおかしな儀式を始めて、龍族をここに引き入れようとしている!」
「龍族だと?」
「この先の獅子族の戦士たちが集っている洞窟で、見たんだ。張り出してある羊皮紙に、亀裂から龍族が出てくる図が書いてあった。その奥の中が広くとられている洞窟でも、よくわからない装置があった。俺は恐ろしくて逃げだしたよ・・・」
どうやら男は獅子族の奴隷として連れてこられたらしく、スキを見て逃げ出してきたようだ。この先逃げるとなると、先ほど蒼士たちが通った道を通ることになる。
とても覚醒前の魔族が一人で戦いながら抜けるのは無理だろう。
隠れることだけで精いっぱいだったようだ。
「ここに運び込まれた荷車について詳しく知っているか?」
「俺は荷を運ぶ担当ではなかったが、乗せられる檻には村の子供たちが・・・」
もうすでに奥に運ばれてしまったようだ。
「羊皮紙になにか、儀式を止められるようなことが書いてあったりしなかった?」
蒼士の言葉に男は少し考え込み、そして告げる。
「羊皮紙には儀式の方法が書いてあった。青、赤、黄の順番に怪しげな柱を起動させるようで、矢印が書いてあったが始まった儀式を止めるような方法らしきものはなかった」
「てことは、その柱が発動しなければ儀式はできないってことだよな」
「まだ間に合うかもしれない。急ごう」
立ち上がり進もうとするレイに、男は慌ててすがる。
「ま、待ってくれ!きっともう間に合わない。だったら俺をここから村へ送ってくれ!ここに置き去りにしないでくれ!!」
「龍族達が現れたら村に帰ったところで、イスハルは崩壊する!今は儀式を止めて子供を助けるのが先だ!」
「今までここで無事だったんだから、俺らがまた戻るまで、頑張って隠れてるといい。絶対にまた助けにくるよ」
そう言い置いて、奥へと走っていった。
道は1本道。
警護の獅子族が常駐していたり、見回りでうろうろしていたりする中レイは剣を抜き放って走った。蒼士とシルバーは遅れないように続く。
蒼士も最近鋭くなった感覚で、岩陰に隠れていたり遠くから弓で狙ったりしている獅子族を的確に見抜いてレイに伝える。
シルバーは襲ってくる獅子族に威嚇するように吠え掛かり、ヒットアンドアウェイでうまく攻撃を受けないように次々来る獅子族に囲まれないように足止めする。
とにかく仲間を呼ばれないように、それだけを注意してオーバーキル気味に獅子族を斃してゆくレイ。
程なく男の言っていた戦士たちのいる会議室のような小さな洞窟部屋の前についた。
「中は5人か・・・」
「ごめん、俺がもうちょっと役に立てれば・・・」
「いや、大丈夫だ。一気にせん滅する。蒼士は入ってすぐの所にいてくれ。シルバー、ソウを頼んだぞ」
そう言ってすぐに駆けだす。
中にいた獅子族すべてがレイに襲い掛かった。
(むりだろ・・・!)
一人に5人。
覚醒後の範囲スキルがあるならまだしも、覚醒前の単体スキルしかない状態でのこの特攻は無謀ではないか?
レイは同時に見えてある程度の時間差で襲ってくる獅子族を、的確にどの攻撃が先に自分に届くかを見極めてその一瞬前に剣をふるい、敵を見ずに返した刃ですぐに次を屠ってゆく。
その場に立ち尽くし剣をふるうだけでなく、まるで舞うように最小限の動きで後続の攻撃をかわし、躱したそのカウンターで剣技をたたきこんでゆく。
今までは本気ではなかったとも言いたげに圧倒的だった。
獅子族のいなくなった部屋で、さっと羊皮紙に目を通す。
「獅子族の言語とは違うな。龍族語・・・か?」
「・・・の、ばあ、い・・・は、順に起動させ」
「ソウ、読めるのか?!」
じっと羊皮紙を見つめていた蒼士は、そこに書いてある文字が自分に理解できることに気が付きわかるように読み上げる。
やはりヴェルの家の本が読めたのは、いわゆる言語チートだったようだ。
「その起動順を正しくしなければ、亀裂発生装置は作動せず以後も使用は不可能となる」
「ということは、最後まで柱を起動させなければ装置は動かず使えなくなるということか」
「みたいだ。とにかくぶっ壊してしまえばもう動かせなくなる」
二人は顔を見合わせ、一つうなづき急いで部屋を出て少し先にある、装置があるであろう大きな洞窟部屋へ急いだ。
洞窟部屋の中には、先ほどよりも多くの戦士だけではなく、斥候のようなものや弓師もいた。
そして小高くなっている祭壇のような広場には、ひときわ体の大きい獅子族と、檻に入れられた子供たちがぐったりとしているのが見えた。
入口の左右、そして祭壇の計3つの装置はまだ作動していない。
「あの祭壇にいるのはイスハルにはいない種類の獅子族だ。明らかにここにいる奴らよりも格上だ」
いったいどこから入ってきたのか、とレイが渋い顔で内部を見ている。
「さっきの部屋よりは広いから、ある程度分散してるけど。レイ、大丈夫か?」
「弓で引けばいけると思う。仲間を呼ばれないように寄せたら確実に仕留めるしかないな」
鞄から弓を取り出し、さっそくつがえる
「シルバー、ソウを頼む」
そう言って入口そばの獅子族二人に弓を射た。
5人相手でも危なげなく殲滅したレイは、うまく一組ずつ弓で寄せて斃してゆく。
あとは大きい獅子族と、周りにいる護衛の戦士が2人。
「中で決着をつける。ソウは柱を頼む」
「わかった」
洞窟内部に走りこむレイを追って蒼士とシルバーも中へ入る。まっすぐ突き進むレイと別れ、入口すぐの装置に触る。
壁面にあるスイッチのようなものを見つける。
「これが起動装置か」
青赤黄の順に入れると起動してしまう。
今蒼士がいるのは青の柱の前だった。入口の逆の柱へ走る。そこは赤の柱だ。
蒼士は迷うことなく壁面の起動スイッチを押した。
ヒイイィィィンという甲高い音とともに、柱にはめられた赤い石が輝きだす。
すぐに最初に調べていた青の柱の起動スイッチを押し、起動させた。
「これでもう大丈夫かな」
そう言って上を振り仰ぐと、レイが大きな獅子族と戦っているのが見えた。
さすがに一刀というわけにはいかなかったのか、相手の攻撃をいなしながら闘っていた。
シルバーが弾丸のように駆けだし、吠えた。
洞窟内に響き渡るその威圧感ある声に、一瞬獅子族の意識がそれた。
一瞬。
それだけで手練れであるレイには十分な隙だった。
振り上げられたロングソードが、獅子族の肩から腹までを切り抜ける。
倒れながら、光になって消えていった。
後には獅子族が持っていたであろう、アクセサリーが残されていた。
「シルバー、助かった」
レイが剣をしまい寄ってきたシルバーを撫でて礼を言う。シルバーはよかった、とでもいうようにレイの足元にまとわりついた。
そんなシルバーを抱き上げる。
「レイ、子供たちはみんな生きているよ」
最後の黄色の柱を起動した瞬間、柱すべての起動が一瞬で止まり沈黙したのを見届けて蒼士が子供たちの捕えられていた檻に近づき、確認する。アクセサリーを回収したレイが、剣で檻を叩き壊した。
「そこの台車に乗せて運ぼう」
かくして、龍族侵攻の危機にあったイスハルと、子供たちは救われた。
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