11
12話目です。
コメントいただきました。ありがとうございます。
誤字脱字、お目汚しあるとは思いますが・・・
蒼士くんと青年、旅立ちです。
急展開で突然外へ出ることになってしまった蒼士。
ヴェルとともに簡単な支度を済ませる。
「この腰ベルトつきの鞄は、マジックボックスといわれる過去の遺物。ある程度の量まで入るようになっている。見た目よりはるかに入るようになっているから、持っていきな。中にはポーション類と、すぐに食べられる携帯食、あとは飲み物とお前が読み込んでいた8職業の本が入っている。それと」
「これ・・・」
ヴェルが渡したのは、特製のレダイムのジャムだった。かなりの大瓶にたっぷりと入れられている。それが2本。
「好きなんだろう?持っていきな。これからソウの道は色々な困難が待ち受けているかもしれない。だけど決して諦めずに、一人で考え込みすぎずにな。できれば信頼できるものを作るといい」
ちらり、と外で待っているだろう青年のほうへ目を向ける。
「決して無理せず、適性が現れなくとも焦ることはない。必ず、いつかはわかるはずだ」
今まで見たこともないやさしい顔で、頭一つ高い蒼士の頭をポンとたたく。
「たまには顔を見せに来てもいいんだよ。気をつけてな、ソウ」
「・・・っ。わかった、心に刻み付けておく」
貰った瓶を自分で鞄に入れる。ふたを開け中に入れると2本とも吸い込まれていった。
ヴェルに促されて扉へ向かう。
こうして、蒼士は冒険への扉を開けた。
「悪い、待たせた。俺は還り人の蒼士。ソウと呼んでくれ。まだ適性がなくて迷惑かけると思うけど・・・」
「レイだ。気にせずともいい。それより還り人なのにまだ適性がないとは珍しいな。オレは剣を扱う」
腰に下げられている剣をポン、とたたく。ちなみに皮系の防具、盾は持っていない。
「とりあえずどういうことになっているか聞いても?」
「子供たちが全く見つからず、占い婆の力を借りた。占いによれば、この先の三叉路の駐屯地より先、獅子族の村に手がかりがあるという。三叉路までなら歩いて1時間ほどで着く。このまま進んでも構わないか?」
「大丈夫、だと思う・・・」
向こうの世界では1時間も歩いたことは当然ない。自分のステータスが魔結晶を取り込んだことにより増加していることを祈るしかない。
「キツければすぐに言ってくれ」
二人は草原を歩き始めた。
この辺りはまだゲームで言う、いわゆるアクティブモンスターは出ない。この先の丘を越えたところあたりからファングウルフといわれる茶色の毛皮の狼が現れ、ソレはこちらに気づくと襲ってくるのだ。
結界を出て初めて見る生のモンスターに、少し感動しつつ周りの風景を見渡す。
ゆっくりと草を食む、後ろ足の発達した魔物。
アルマジロのような魔物は、3匹で揃って移動している。
風に揺れるナルソスの花と、その風が運んでくるレダイムの甘い香り。
空には白い月が浮かび、太陽とは違った優しい光であたりを照らし。
背の高い木々から木漏れ日があふれていた。
今、アストレイヤを自分の足で歩いてる。
意識を飛ばしていたら、レイが手で蒼士を制す。
利き手は剣の柄にあった。
「何・・・」
「シッ!」
レイが見ているほうに目を向けると、低い茂みがかさかさと動いていた。
いつでも抜刀できるように低い姿勢で警戒しているレイ。
ガサッ!
ひときわ大きな音を立てて、薄汚れた灰色の丸い毛玉が飛び出してきた。
「待った、レイ!」
今にも剣を抜きそうなレイを制し、慌てて飛び出し毛玉へ向かう。
その毛皮は、きゅーん、と弱弱しい鳴き声を発したのだ。
ところどころ赤茶色の物がこびりついた、暗灰色の子犬。ぶるぶると震えていた。
「かわいそうに、こいつ震えてる。怪我してんのか?」
そうっと手を差し出すと、一瞬ビクリ、と体を固くしたのを見て蒼士が悲しそうな顔をした。
「いじめられてたのか?大丈夫、なにもしないよ」
ふわり、と笑いかける。
それを見た子犬は、ゆっくりと蒼士の手にすり寄った。蒼士は怖がらないようにゆっくりと抱き上げて、震えが収まるまで撫でる。
「・・・大丈夫か?まだ子供とはいえ、ソレは恐らくこの先に出るファングウルフだ」
「毛色が違うから仲間からいじめられていたのかもしれない。このままじゃ死んじゃうかも」
「連れていきたい、と言うことか」
「ちゃんと責任持つ。野生に返したほうがいいようなら返す!」
上目遣いの2組の瞳に見つめられて、レイは悩み、そして・・・
「わかった」
「ありがと!!!」
笑顔全開の蒼士を見て、レイが目を丸くした。
「ソウは、笑ったほうがいいな」
その言葉と、ちょっと緩んだレイの顔を見た蒼士は少し顔を赤くした。
「レイもな。男前がマシマシだぞ」
こうしてパーティは2人+1匹となったのだった。
お読みいただきありがとうございます。