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とうとう10話目です。相棒出てくるとこまで行かなかった(´・ω・`)
ブックマークありがとうございます!
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
蒼士くん、ポーション作りに挑戦です。
昼食にはパスタのような麺類とサラダを食べ、汲み置きの水で食器を洗い、この後の予定を考えながらため息をつく。
頭では需要が多く一定の儲けがでる調薬を早い段階で覚えられるのはラッキーだと思ってはいても、やはりあのにおいを思い出すだけで気分が悪くなりそうだ。
「片付けが終わったならさっさとこっちにきな。今日はココで採れる薬草で作れる、最下級のポーションを作ってもらう」
観念して仕事部屋に入り、イスに座る。
テーブルには昨日自分で摘んだ薬草が、白と茶色のかごの2つに分けて置かれており、ほかに調薬で使うであろう用具が置いてあった。
「この地域でとれるこの薬草は、ナルソスという。昨日も言ったが株によって魔結晶の濃度が異なり、濃いものほど新鮮だ。新鮮なものは希少で、こちらからはマジックポーションができる。ソウにはどちらが新鮮かわかるかい?」
2つを見比べ、茶色のかごを指差した。
「こっちのほうがみずみずしい。白かごに比べて茎も太いし花も多い。あと・・・気配が強いというか、摘んだ後なのに外に生えてる草花と同じ強さを感じる」
昨日は全く感じなかった感覚だ。目に頼らなければ見分けられなかったものが、感覚的にぼんやりとだが分かるようになった。
「正解だよ。ポーションは体力を回復するときに、マジックポーションはスキルやスペルの使いすぎで虚脱した時に気付けとして使う」
「虚脱?」
「スキルやスペルは魔結晶エネルギーを使うと言ったな?大気に漂うエネルギーを自分に取り込み、そこからエネルギーを練り上げてスキルやスペルとして放出する。一度に取り込める量は決まっていて、取り込んだエネルギーを一気に使い切ってしまうと、虚脱といわれる魔結晶酔いとなる」
「普通のポーションは、ケガやダメージを負ったら使うと回復するような感じ?」
「その通り。じゃあまず数の多い普通のナルソスで、普通のポーションを作ってもらう。あたしは新鮮な方でマジックポーションを作る。作り方は材料が違うだけで全く一緒だ。平行してやっていくからよく見てついてくるように」
乳鉢にナルソスを1株、はさみで細かく切りながら入れてゆく。そして水の入ったビーカーからほんの少し水を湿る程度入れる。
「この水は結晶水というもので、清水に一晩魔結晶のかけらを沈めておくとできるんだ。大きな街では調薬施設なんかで売っているよ」
結晶水を入れたらすりこぎでひたすらつぶしてゆく。蒼士も同じようにまねしながらすりつぶし始めた。
すりつぶしているが、昨日ほどの青臭さはない。窓からくる風が、においを浚っていくのだ。
「思ってたほど臭くない」
「昨日は一気に大量に作ってたからね。慣れればたくさんのポーションを作れるようになるが、初心者のうちは1つずつ確実に。分量や手順になれたら少しずつ増やしていけばいい」
フラスコ型のものに、漏斗のようなものを上にセットしていったん手を止めた。
「このすりつぶす作業がおろそかだと、ポーションの品質が下がる。しっかり繊維まですりつぶし、液状にしておかないとポーションの元となる溶液に効用が溶け込みきらなくなる」
漏斗にどろどろになった乳鉢の中身を入れると、どんな仕掛けなのか漏斗の細い部分が淡く発光し、フラスコに溶液が溜まっていく。
すべて落ちきると発光は収まり、境目に滓のようなものがたまっていた。その滓をそばにある袋に入れる。溶液はフラスコの5分の1程度まで溜まっていた。
蒼士の乳鉢を見て、ヴェルはうなずく。
「この程度液化できればいいだろう。ためしに漉してみな」
自分の前にあるフラスコに、漏斗を差し込んでゆっくりと乳鉢の液体を流し込む。発光が収まってフラスコを見ると、ヴェルの作った溶液よりもすこし少ない量だった。
「少な・・・」
「初心者でそれなら十分合格点だ。滓を見てごらん。この2分の1程度に抑えられるはずだ。まずはそこまで絞れるようになるまでポーション作りだ」
「この溶液はこのまま?」
するとヴェルは残ったビーカーの結晶水を溶液が5倍程度に薄まるように入れ、そっと揺らしてなじませる。平均的に薄水色になったら、木箱の中の瓶に注いだ。
「これで完成だ。溶液は濃縮されているから5倍程度に薄めてから瓶に入れる。混ぜるときはゆっくり揺らすように混ぜるんだ」
瓶の大きさは大体よくあるちいさなボトルタイプのヨーグルト系飲料程度。120MLほどだろうか。
「そっちはポーションだから色は薄桃になる。基本ポーションは赤系、マジックポーションは青系になるよ。1時間ほどしたら休憩にして、そのあと他の生産技術について話してやるから、それまで頑張って見本と同じように作れるようにな。あたしは少し出てくるよ」
そういうとあっさり部屋を出て行ってしまった。残された蒼士はただひたすらポーションを作成する作業に集中した。
蒼士を置いて外に出たヴェルは、小屋の外を囲っている柵の外へ続く小径を進んでいく。やがて小屋が見えるぎりぎりのあたりに差し掛かると、持っていた杖をそっと振り上げた。
「開けよ」
空気の色が変わり、ヴェルが一歩踏み出すと10メートルほど先に二人の男が立っているのが見えた。
「占い婆!」
「最近この界隈が騒がしくはないか?」
皮鎧を来た短髪の男が現れたヴェルに驚き声を上げる。もう一人の男が困ったような顔をして告げた。
「最近子供が何人か、連続で行方不明なんだ。ここ5日くらいでもう3人目だ。初めにいなくなったのがかなりのやんちゃだから心配してなかったんだが、その日の夜になっても戻らなくてな・・・かなり本格的に探してはいるんだが、気配すらない。もしかしたらこの先のファングウルフの出るとこまで行ったのかもしれないから、今調査で人をやる算段中なんだ」
「いつにもまして人の気配がすると思ったら、そういうことか」
「あとで村の者が小屋に行くかもしれんから、話を聞いてやってもらえると助かる」
「・・・考えておくよ」
そのままヴェルは踵を返して、小屋への道を進んでいった。
途中で掻き消えるように姿を消したヴェルの後ろ姿に、残された男二人はため息をついた。
「きまぐれだからな、占い婆」
「その気まぐれで話を聞いてくれればいいんだけどな・・・」
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