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1 出会いは別れの始まり

 ここは暗い部屋。

外は朝だっていうのにカーテンを締め切っている俺の部屋だ。

今日は大学が休みだから寝ていても誰にも怒られない。

そう・・・誰にも。


 俺の両親は3ヶ月前に亡くなった。

19歳の俺にとって独りきりで生きていく事は案外難しい事では無かった。

両親が残した財産は目を疑うほどの金額だったからだ。

何か知らないことでもできればネットで検索すれば即解決出来る時代だから心配は無い。

ただ一つ心配な事がある。

それは、寂しいことだ。


 友達も恋人も出来たことがない。

ずっと必要無い物だって思っていた。

だが、今になって深く思う。

友達や恋人がいることが羨ましいなんて思っている。

でも今更友達を作る勇気なんて出なかった。

スマホの連絡先は父と母のみだ。

寂しさに負けそうになる度に両親に電話を掛けた。

もちろん返事は無かった。


「今日はちょっと出かけようかな。行く当てなんて無いけど」

 

 俺は軽く朝食を済ませて、部屋を出た。

冷たい風が俺を包み込む。

12月20日午前9時。

粉雪が降っていた。

 街には人で溢れていた。

仲間と笑い合っている人や恋人と手を繋いでいる人。

疲れた表情の会社に向かうサラリーマンもいる。

俺は寂しそうに独りで歩いている人に分類されるだろう。


 街角を曲がると、不意に一人の女子と目が合った。

「あ!君って北丘大学の学生だよね?私とゼミ一緒だよ。」

 な・・・なんだこのフレンドリーな人は。

やばい緊張してきた。

「え・・・えっと・・・そうでしたっけ?」

「そうだよ。私もつい最近まで君を気にも掛けなかったけどご両親が亡くなった話を聞いてからつい気になってね。」

 お人好しな人だな。

知らない人に話しかけるなんてこの人はどこからそんな勇気が湧き出てくるのだろう。


「気に掛けてくれてありがとう。大学の人と話したことなかったから嬉しいよ。」

「そういえばずっと孤立してるよね?友達とか出来てないでしょ。」

「・・・独りきりだよ。」

 俺は俯いた。

これまで友達を作ってこなかったばちが当たったんだ。

こんなに寂しい想いを抱くことになるなんて思ってもみなかった。


「私が友達になってあげるよ?」

 女神のように優しい表情をしている。

俺は彼女になんの疑いも持てなかった。

友達になりたい。

こんなチャンスに巡り会えるなんて今日はお出かけして良かった。

「こんな俺でよかったら友達になりたい。俺の名前は秋川 夜空だ。」

「夜空か。素敵な名前ね。私は矢島 咲。また明日学校でね。」

「本当にありがとう。またね。」


 彼女と俺は手を振り合い別れた。

この出会いが俺を更に深い絶望へと誘うことを俺はまだ想像もしていなかった。


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