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武蔵野ギフテッズ・リパブリック  作者: 杉並よしひと
第一章
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4:力とは

「と言うか、室長、昨日は彼女を調停局本部に送るって言ってたじゃないですか。なんでまだここにいるんですか?」

「いやあさ、昨日は悠里さんと俺結局泊まり込みだったしさ、ここに置いたままの方が、個人の依頼として簡単に済ませられるかなって思ったからな」

 全然簡単に済みそうもねえ、と透が小さく毒を吐くと、室長は笑ってどうどう、と言った。透には全然納得がいかない。

 室長はどっかりと陽菜の隣に腰掛けると、まだにやにやとした笑みを口の端に残しながら手を組んだ。室長が仕事の話をするときは、いっつもこうやって両手を組むのだ。

「水流崎さん、さっきお聞きした話、僕から彼に話しても良いかな」

「はい」

 陽菜のか細い返事を待って、室長は抑揚も無く、淡々と話し始めた。

「ここは武蔵野共和国だから、いろいろな霊族ギフテッドが調和して暮らしている。それはさすがに解ってるよな?」

「はい」

「ただ、それを望まない奴らもいる。それもまた真実だ。それは覚えておいてほしい」

 噛んで含める様に室長はそう話す。透にはまだ話が見えて来なかった。目の前の少女の護衛と、どうも話がつながりそうでつながらない感じがする。

 問い返そうとしたちょうどそのとき、透を遮る様に室長の声が飛んだ。

「彼女は吸血鬼だ。それも、ある意味、この世の吸血鬼の中で一番の、だ。で、それこそが今の吸血鬼同盟のトップの狙いでもある。だから、透には彼らから水流崎さんを守ってもらいたい」

「ちょっと待ってください」

 まだ何か続きそうだった室長の言葉を遮る。色々解らない事が多すぎるが、どうしても見過ごせない言葉があったのだ。室長は驚いたのか、言葉を止めると、珍しい物でも見る様に透をまじまじと見つめた。

「水流崎さんは世界で一番強い霊力を持ってるんですよね? だったらなんで僕の護衛なんかが要るんですか? 自分の力で勝てるじゃないですか」

「無理なんです」

 凛とした声が響く。陽菜の声だった。穏やかなままなのに、中に鋭い刃物が隠れているみたいで、透は一瞬身を固くした。場が静かになったのを確かめて、陽菜は話し始めた。

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